管理人のイエイリです。
連休で里帰りしている方も多いでしょう。そして、以前に比べて活気がなくなった地元の建設業界の姿に寂しさを感じている人も多いのではないでしょうか。
国土交通省の調べによると、平成4年度に84兆円あった建設投資は20年度には47兆円に減りました。うち、政府投資を見ると7年度に35.2兆円あったのが20年度には17.4兆円と半分以下に激減しています。
福井県美浜町の北山建設は、公共土木事業を中心に展開してきましたが、最近では売り上げが以前に比べて半減すしています。
北山建設専務取締役の北山大志郎さん。笑顔がステキです。(写真:家入龍太) |
公共土木がダメなら、民間土木はどうかと新たな顧客開拓を試みましたが、せいぜい駐車場のアスファルト舗装くらいでこれといったニーズが見つかりません。
地域密着型の事業を続けてきた同社では、地元にかかわりのあるビジネスを何とか開拓できないかと考え抜いた結果、「ふるさと見張り番」という新サービスを開発しました。
ふるさと見張り番のホームページ(資料:どけんやナビ) |
故郷を離れて大都市圏で働く人たちにとって、郷里に残してきた家や土地はいつも気になるものです。「ふるさと見張り番」は地元の建設会社が年間数回、所有者の代わりに田畑や家屋、お墓、空き地などを見回り、
レポートを提出する
というサービスです。
利用料金は年2回プランは2万1000円(税込み)、年4回プランは3万3600円(同)です。
ふるさと見張り番の主な見回り対象。左上:擁壁の損傷、右上:古い民家や蔵、左下:放置している休耕農地、右下:屋根瓦の破損(資料:どけんやナビ) |
ふるさと見張り番のレポート例(資料:どけんやナビ) |
このビジネスの狙いは、見回りサービスで収入を得るだけではありません。雑草だらけになった土地やお墓、壊れた屋根やフェンス、老朽化した家屋などの改善提案を行うことで、修理や清掃などの作業を受注することにつながっています。
例えば、草刈りが大変な裏庭に自然の土を使った「土舗装」を施す、古い池を埋め立てて庭に変える、破損した家屋を修理・解体するなどの提案が、工事の受注に結び付いているのことです。
「ふるさと見張り番」のサービスを提供するのは地元の建設会社で、「どけんやナビ」に登録(入会金10万5000円、月会費3万1500円。税込み)することが必要です。一つの地域に1社となっており、競合しない仕組みです。
建設業の成長戦略と言うと、つい海外のビッグプロジェクトに参加するとか、ビルの省エネ管理を手がけるなど、大げさなことを考えてしまいがちですが、地元のニーズをじっくりと考えてみると意外なところに新ビジネスのネタはころがっているものですね。
しかも、素晴らしいのは、
顧客と製品
をゼロベースで見直し、地元から大都市に移った人々を顧客として、清掃や見回りという新しい“製品”を提供していることです。従来の顧客と製品の枠にとらわれない発想こそ、建設業の経営戦略に求められます。
顧客と製品を根本から考え直した経営戦略がある(資料:家入龍太) |
郷里にある建物や田畑を軸として、大都市圏の顧客と接点を持ち、信頼関係を築くビジネスモデルは、今後、地元物産の通信販売や就農希望者に対する住宅や田畑のあっせん、貸し別荘など、幅広いサービスに展開する可能性を秘めているのではないでしょうか。