管理人のイエイリです。
東京電力では、東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所1号機の原子炉建屋に、放射性物質の飛散抑制や、建屋への雨水浸入防止のため、建屋カバーの設置を進めています。このほど、その計画の詳細が明らかになりました。
福島第一原発1号機原子炉建屋カバーのイメージ(資料:東京電力) |
1号機原子炉建屋カバーの概要図(資料:東京電力) |
建屋カバーの構造は、建屋の外周に立てた4本の柱と、これらをつなぐ梁からなる鉄骨の架構を造り、これに塩化ビニール樹脂コーティングを施したポリエステル繊維織物の膜材を張った壁・屋根パネルを取り付けたものです。
その寸法は南北約47m、東西約42mの長方形で、高さは地上から約54mとのこと。作業員ができるだけ建屋に近づかずに施工できるように、梁や壁・屋根パネルは小名浜港で大きなユニットにあらかじめ組み立てておき、
国内最大級の750tクレーン
国内最大級の750t吊りクレーンで現場に設置します。
また、鉄骨とパネルの接合部は、木造建築で使われている「嵌合(かんごう)接合」をヒントに開発しました。
さらに、遠隔操作で施工するために吊り材の回転を制御して、吊り材のワイヤをむせんで取り外せるシステムや組み立て中の部材の位置をリアルタイムに測定し、制御する技術も導入しました。
これらの技術による施工を確実にするため、現在、小名浜港での仮組み試験や施工模型や3次元CGなどを使った施工シミュレーションを行っています。
模型による施工シミュレーション(左)と小名浜港での仮組み試験(写真:東京電力) |
新たに開発した柱と梁の嵌合接合(資料:東京電力) |
建屋カバーの図面を見ると、建屋とカバーが接するようになっていることが分かります。設計に際しては、
3Dレーザースキャナー
によって建屋の形状や寸法を精密に測定したとのことです。
3Dレーザースキャナーで原子炉建屋を計測した点群データ。4000万点(上)と、点群データから変換されたポリゴンデータに建屋の3次元CADデータを合成したもの(下)(資料:東京電力) |
予定では6月13日~7月21まで小名浜港でユニット部材の仮組みを行うとともに、6月12日から7月6日まで発電所構内の物揚場でクローラクレーンの組み立てを行うそうです。
さらに6月下旬からは3号機、4号機の原子炉建屋カバー設置の準備として、建屋周辺の構造物やがれきの撤去、作業場所の整備などを始める予定です。
これらの作業がうまく行くことを祈ります。