管理人のイエイリです。
国内の建設投資が年々減少するなか、建設業の成長戦略として海外プロジェクトへの進出が注目を集めています。
こうした背景から、ベントレー・システムズは6月30日、東京で「海外建設プロジェクトマネジメントセミナー」を開催しました。
海外プロジェクトのセミナーだから、こぢんまりとしているのかな、と思いつつ会場に入ってビックリ。
ナ、ナ、ナ、ナント、
100人用の会場が超満員
だったなのです。
申し込みは150人くらいあり、“満員御礼”のため、やむなくお断りした人も多かったとのこと。それだけ、海外プロジェクトへの注目が高まっている証しでしょうね。
基調講演として、高知工科大学社会システム工学科教授の草柳俊二先生が、「日本の建設業にとってグルーバルプロジェクトで成功するために本当に必要なこと、心得ておくべきことは何か」というテーマで講演しました。
建設産業の持続的発展のためには国際市場への進出は不可欠なこと、国際展開には「リスク管理」を中心に契約管理や設計・施工技術、マネジメント技術の再構築が必要なこと、日本が得意な「現場合わせ技術」とともに「事前合わせ技術」も融合させること、といった日本の建設産業の課題について1時間、熱弁を振るいました。
高知工科大学社会システム工学科教授の草柳俊二先生による基調講演と(写真:家入龍太。以下同じ) |
続いて、英国ベントレー・システムズ社土木部門マーケティングディレクター、スティーブ・コッカレルさんが「海外プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントの実態を語る」と題して、インドやマレーシア、英国などでの事例を紹介しました。
特に現在、「北半球最大のプロジェクト」と言われる英国ロンドンの「クロスレール(Crossrail)」プロジェクトにおける英国工業規格(BS1192)に基づき、徹底したIT化を図った設計図書の管理や、維持管理は、プロジェクト情報の先進的、組織的な活用事例として興味深いものでした。
英国ベントレー・システムズ社土木部門マーケティングディレクター、スティーブ・コッカレルさんの講演。会場は超満員 |
小休憩の後、前田建設工業土木事業本部技術顧問の浅野雅行さんが「ストーンカッターズ橋を取り巻く香港建設市場」と題して、海外工事の現場の実際を紹介しました。
受注するまでの入札戦略や現地スタッフの活用のほか、海外プロジェクトを担える日本人社員の育成方法、失敗経験の蓄積と活用など、現地で長年、実務を担当してきた経験を元に語る浅野さんの話は迫力満点でした。その中には、現地スタッフの人事考課の方法など、生々しいものもあり、会場の注目を集めていました。
前田建設工業土木事業本部技術顧問の浅野雅行さんの講演。これらのキーワードに対応できないと海外の仕事は務まりません |
最後に、ベントレー・システムズ代表取締役社長の荒井孝行さんが「海外プロジェクトを支援するベントレー社のプロジェクト・ドキュメント・マネジメント技術」を語りました。
「以前、日本でCADを売ろうとするときは『発注者の仕様に合っていないと使えない』とよく言われた。しかし、今は逆だ。グローバルスタンダードに合っていないCADを使わないと、建設業の国際化についていけなくなる」と荒井さんは語りました。
ベントレー・システムズ代表取締役社長の荒井孝行さんの講演 |
セミナー全体を振り返ってみると、草柳先生が指摘した「事前合わせ技術」は、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用で言われる「フロントローディング」に通じるものがあり、浅野さんが指摘した設計変更のクレーム処理は「3D(3次元)、4D(3D+時間軸)、5D(4D+コスト軸)」といった設計と工程管理、原価管理の連動による「見える化」に通じるものがあるように思いました。
つまり、日本の建設業が海外プロジェクトで不得意とされている要因は、BIMや3D設計によってかなりカバーできるのではないかと思った次第です。
帰り際にアンケートと引き換えに「THE YEAR IN INFRASTRUCURE 2010」という、ベントレー・システムズユーザーの事例集をもらいました。これは前年の「Be Inspired Awards」という同社米国本社主催のコンテスト入賞作などをまとめたものです。
表紙が全部、英語なので読むのが大変だな、と思いながらページをめくると、
ナ、ナ、ナ、ナント、
全ページが日本語化
されているではありませんか。
アンケートと引き換えにもらった「THE YEAR IN INFRASTRUCURE 2010」をめくると、すべて日本語化されていました |
建築、土木からプラント、地質、通信、軍事施設まで幅広い事例が、約140ページにわたって紹介されています。海外では3D設計がこんなに進んでいるのかと、きっと驚きますよ。