管理人のイエイリです。
山岳トンネルなどの現場では、不安定な地盤に遭遇すると切り羽が崩壊することがあります。そこで、自動追尾型トータルステーションなどを使って、切り羽の各点の変位を計測するなどの対策が採られています。
切り羽の崩壊の例(写真:飛島建設) |
しかし、トータルステーションは1測点当たりを5~10秒くらいずつかけて計測するので、複数の点を計測するときは急に変位が増すと、見逃してしまうリスクがありました。
そこで飛島建設は、多点同時にリアルタイム連続計測できる「切羽安全監視システム」を開発し、現場での有効性や実用性を確認しました。
このシステムで計測に使っている機器は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
安価なレーザー距離計
なのです。
レーザー距離計による計測の例。左は東北中央自動車道の大笹生トンネル工事、右は圏央道 笠森トンネルその4工事の例(写真:飛島建設) |
トータルステーションが3次元変位を計測できるのに対し、レーザー距離計は前後方向の変位量しか量れませんが、その精度は±1mm以内と高く、計測時間も1測点当たり最少で1秒です。
また、1台の計測用パソコンに対して、最大8台のレーザー距離計を同時に使って計測できるので、複数の点の変位を常に見逃すことなく、キャッチできます。
切羽安全監視システムの概要(資料:飛島建設) |
計測用PCでの監視画面および環境設定画面(資料:飛島建設) |
パソコンとレーザー距離計はワイヤレスで接続されており、設置時間はトータルステーションを使う場合に比べて25~30%に短縮でき、
導入コストも従来の30%
程度と安価です(6カ月間計測する場合)。
このシステムは、北中央自動車道の大笹生トンネル工事と、圏央道の笠森トンネルその4工事で実際に使用されました。
笠森トンネルその4工事では、ウレタン系注入材で地山改良する際に、切り羽の緩みに伴う鏡面の崩壊を常時監視しました。その結果が下のグラフです。
切り羽の微妙な変位が手に取るように分かりますね。情報化施工は高価なものと思われがちですが、身近な機器を使うことでかなりのコストダウンができることを示したよい例だと思いました。
切り羽補強工施工時の切り羽押し出し量の計測例(写真:飛島建設) |