管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用は、先駆的に取り組んだ企業と、これから始めようとする企業との間に、既に大きなギャップができていると言われます。
先駆的な企業は、BIMモデルから図面などの設計図書を作る「テンプレート」や、設計に必要十分な3D部品をまとめた「ライブラリ」を試行錯誤しながら自社作成しています。
これらの作業には、時間と労力がかかり、企業秘密的な情報も入っていたりするので、先駆的な企業ほど“門外不出のデータ”としています。一方、これからBIMを始めようとする企業は、一からこれらの地道な作業に取り組まなければいけません。
こうした状況の中、2007年からBIMを全社導入している安井建築設計事務所が、驚くべき新製品を開発しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、自社でBIMによる設計実務に使っている
テンプレートとライブラリ
をパッケージ製品化したのです。
BIMモデルから様々な図面や仕上げ表などの設計図書が作成できるBIMテンプレート(資料:安井建築設計事務所。以下、同じ) |
ユーザーがカスタマイズできる国土交通省の標準仕様に準拠したライブラリ集 |
「意匠設計用BIMテンプレート Revit Architecture版」というもので、オートデスクの意匠設計用BIMソフト、「Revit Architecture」で使えるデータ集です。今年12月にDVDとして発売される予定です。
このテンプレートを使うと、BIMモデルから平面図、立面図、断面図のほか仕上げ表、建具表、姿図などが効率よく作れます。
各部材の仕様など、建物のプロジェクト情報を入力したBIMモデル |
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BIMモデルから作成した平面図(左)と立面図(右) | |
断面図 | |
BIMモデルから作成した建具表・姿図(左)と仕上表(右) |
BIMモデルから図面を作成するためには、図面中に表示するデータをあらかじめBIMモデルに入力しておく必要があります。そのため、「BIMテンプレート利用の仕様書」が付属しており、どんなデータを入れておけばいいのかが分かるようになっています。「フロントローディング」で設計ワークフローを改善するのにも役立ちそうですね。
安井建築設計事務所が何年もの間、設計実務で使い、改良に改良を重ねてきた
BIM活用ノウハウがぎっしり
詰まったテンプレートとライブラリなので、これからBIMを導入しようという企業は大幅に労力を軽減でき、“2段抜き”のスピードでBIMを実務に使えるようになります。
こうしたノウハウの塊とも言えるデータを製品化した例はほとんどありません。安井建築設計事務所は「テンプレートやライブラリのノウハウを自社で囲い込むことは、社会的貢献にはつながらない。業界でのBIM普及に少しでも寄与したいと考え、蓄積したノウハウを提供することにした」と説明しています。
安井建築設計事務所の東京事務所での記者会見(写真:家入龍太) |
気になるお値段ですが「数十万円程度」になるとのこと。製品はDVDで提供され、GSAが発売元になり、大塚商会が販売を担当します。
なお、10月7日に東京・有明で開催される建築イベント「ArchiFuture 2011」のテクニカルフォーラム「使えるBIM総合ソリューション」でも、このテンプレート集についての解説が行われます。