管理人のイエイリです。
雷が建物に落ちると、鉄筋や鉄骨を通って、地表に強い電流が流れます。この電流によって建物内に発生する「雷電磁界」が発生し、サーバールームや中央制御室などの電子機器類が異常電圧を受けて破損することがあります。
雷による情報機器や電子機器類の年間被害額は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
1000億から2000億円
と言われているほどなのです。かなりの被害と言えるでしょう。
また、サーバールームや建物機能を維持する設備が被害を受けた場合、事業の継続にもかかわるだけに、雷対策は重要ですね。
そこで、大成建設は雷電磁界から電子機器類を守る「雷電磁界バリア」技術を開発しました。
雷電バリア技術のイメージ図(資料:大成建設。以下同じ) |
仕組みは意外にシンプルです。サーバールームなどの壁や天井、床に内装の下地に使われる軽量鉄骨を通常よりも緊密、等間隔の格子状に配置し、電気的に等電位になるように接続するだけです。
部屋が均一な導体でぐるりと囲まれた状態になるため、部屋の周囲を流れる雷の電流が分散し、発生した電磁波同士が打ち消し合うように作用するため、一般の内装に比べて部屋の内部に侵入する雷電磁界の強度は通常の5分の1程度に抑えられます。
電子機器に悪影響を及ぼす直流磁界の強度は400A/m(アンペア/メートル)です。一方、落雷を受けた建物には、1000A/m程度の強さの電磁波が発生すると言われています。これが5分の1程度に下げられれば、電子機器は安全というわけですね。
軽量鉄骨を等間隔で密に配置した部屋の内部(左)と外から見た状態(右)。写真は試験体の施工状況 |
大成建設は2007年にサンコーシャと共同で、3次元CADを使って落雷時に建物や接地系統に流れる雷電流をビジュアルにシミュレーションできる「建物内雷電磁環境シミュレーションシステム」を開発しました。今回の雷電磁界バリアは、この技術を生かしたものです。
「建物内雷電磁環境シミュレーションシステム」によって解析した雷電磁界(上)と雷電流(下) |
コスト増は
軽量鉄骨の増量分だけ
なので、非常に安上がりです。
大成建設では、雷電磁界バリアの特許出願を済ませており、開発済みの雷電磁環境シミュレーションとともに雷害防止のトータルソリューションを先端生産・研究施設や事務所、病院、データセンターなどに積極的に展開を図っていく方針です。
軽量鉄骨を増やすだけで、高価なサーバールームを雷から守ったり、事業継続管理(Business Continuity Management)に生かしたりできるのは、建設会社ならではの方法ですね。