全詳細図をBIM化!CADデータ付き国交省標準図集が発売に
2011年11月11日

管理人のイエイリです。

国土交通省などの営繕業務にかかわる設計者の“バイブル”とも言える資料に、「建築工事標準詳細図」(公共建築協会発行、税込み6800円)というものがあります。

これまでは紙の資料として使われてきましたが、エクスナレッジがこのほど発行した「CADデータ付き国土交通省建築工事標準詳細図」(B5判、160ページ)という本には、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

全詳細図をBIMモデル化

 

したDVDが付いているのです。

詳細図のBIMモデルは、ArchiCADのオリジナルファイルである「PLN形式」のほか、BIMモデルデータの交換標準フォーマット「IFC形式」で作られています。さらにはAdobe Readerで閲覧できる「3DPDF形式」も用意されています。

さらに、2次元CAD用の詳細図データを収めたCD-ROMが付属しており、Jw_cadの「JWW形式」、AutoCADの「DWG形式」、そして幅広くデータ交換に使われている「DXF形式」が入っています。

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エクスナレッジが発売した「CADデータ付き国土交通省標準詳細図」(左)には、全詳細図をBIMモデル化したデータを収めたDVDと、2次元CAD用のデータを収めたCD-ROMが付属している(写真:家入龍太。以下同じ)

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3DPDFを開いたところ

元図の横にBIMモデルで作成したアイソメ図を配置し、2次元図面と3D形状が対比しやすいようにレイアウトされています。

詳細図のBIMモデルやCADデータの作成を担当したのは、BIMによる設計やコンサルティングを行っているシェルパ(本社:名古屋市)です。

モデル化作業は今年2月に着手し、同社の社員6人が担当しました。「はじめは詳細図の2次元CAD図面を作成し、それからBIMモデルを作っていきました。1つのBIMモデルを作る時間は、簡単なモノだと30分くらいですが、ちょっと手の込んだものになると3~4時間かかることもありました」と、同社プロジェクトリーダーの丸山順一さんは説明します。

また、平川史明さんは「難しかったのは、手すりやマンホールなど、曲面があるものです。ArchiCADのVIP版ではパイプツールなどがありますが、これを使うと一般版で開いたときに表示されないこともあります。どんなユーザーでもBIMモデルとして使えるように工夫しました」と苦労を語ります。

本の編集には、BIMやCADとは異なるデータ形式が使われますが、出版社のエクスナレッジもBIMモデルデータを生かした本作りのワークフローを編み出しました。同社建築編集部の川添大輔さんは「詳しくは言えませんが、BIMモデルやCAD図面をそれぞれあるフォーマットで書き出し、処理することでそのまま図版として使えるノウハウを確立しました」と語ります。

このワークフローのおかげで、すべてのBIMモデルやCAD図面ができあがったのが9月末であったにもかかわらず、わずか1カ月でこれらの図版を作ってレイアウトし、印刷までこぎ着けるというスピーディーな作業ができました。

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アイソメ図と図面を並べたレイアウト(左)と元図(右)

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本の制作にかかわったメンバー。左からシェルパの平川史明さん、同・丸山順一さん、エクスナレッジの川添大輔さん

BIMモデルは元図で断面図だけがあるものは長さ1m、天井板などは吊り部材などの要素を一通り含んだ範囲で切り出したように作ってあります。属性情報はあえて入力せず、ユーザーが独自に入力して使えるようにしました。

これらのBIMモデルを設計業務で活用するコツを、シェルパ代表取締役の高松稔一さんに聞いたところ、思わぬ答えが返ってきました。お勧めの方法とは、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

BIMモデルをバラバラに

 

分解して使うというものです。

「ちょっとした天井の吊り部材や、駐車場の車止めなど、オリジナルで作ると1万円くらいかかってしまうような部品が100個以上入っています。BIMモデルをバラバラに分解し、定尺に伸ばしてまとめておくと“部材の工場”として使えます」(高松さん)とのことです。

このほか、詳細図のモデルを組み合わせて1つの部屋を作って標準として活用したり、新入社員向けに図面から立体形状を読み取れるように教育したりといった用途が考えられます。

ちなみに、気になるお値段ですが、これだけのデータが付いて税込み8400円と、非常にリーズナブルです。BIMユーザーはもちろん、一般の設計者も1冊持っておくと重宝しそうですね。

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