管理人のイエイリです。
空調や照明などを自動制御するビルオートメーション(BA)システムは、メーカー独自の「プロトコル」と呼ばれる通信方式に基づいて構築されているのが一般的でした。
そのため、一度、あるメーカーのシステムを導入したユーザーは、他社の製品やシステムに乗り換えにくく、「プロトコルロックイン」というメーカーの囲い込み戦略にはまってしまうことが多くありました。
そこで、新菱冷熱工業は設備用のオープンな通信プロトコルを導入し、異なるプロトコルが混在する東京・四谷の本社ビルと第7新菱ビル、そして茨城県つくば市の中央研究所のBAシステムを結合し、
ナ、ナ、ナ、ナント、
広域エネルギー管理システム
を構築することに成功したのです。
このシステムは、インターネットを通じてパソコンやスマートフォン、タブレット端末などからも制御できます。第7新菱ビルで開催された記者発表会では、その場からつくば市の研究所内にある照明をリアルタイムでオンオフするデモンストレーションも行われました。
東京・四谷の第7新菱ビルから、つくば市の中央研究所にある照明を消すデモンストレーション(写真:家入龍太。以下、同じ) |
異なるプロトコルが混在したBAシステムをIEEE1888認定のFIAPプロトコルで結合し、広域エネルギー管理システムを構築したのは民間企業で世界初という(資料:新菱冷熱工業) |
新菱冷熱工業はこのシステムを構築するに当たって、東京大学大学院情報理工学系研究科の江崎浩教授が主催する「東大グリーンICTプロジェクト(GUTP)」で開発された設備用のオープン通信プロトコル「FIAP(Facility Information Access Protocol)」を採用しました。
GUTPは(1)「メーカー主導からオーナー主導へ」を目指したBAシステムの設計・運用の改革、(2)メーカー・系統別「システムロックイン」からの解放、(3)設備データベースの利用可能性の拡大、を目標にFIAPを開発してきました。GUTPには現在、45の企業と20の団体が参加しており、新菱冷熱工業もその一員です。
東大グリーンICTプロジェクトを主催する東京大学大学院の江崎浩教授 |
そして2011年2月に、FIAPは日本発の規格として
ナ、ナ、ナ、ナント、
国際標準規格IEEE1888
に認定されたのです。
これまで、国際規格では欧米の後塵を拝することが多かった日本ですが、ここでは「省エネ大国ニッポン」の実力を世界に見せつけた感もあり、うれしいですね。
東京大学でも新菱冷熱工業とほぼ同じ時期に本郷キャンパス工学部2号館で、FIAPを使って既存のサブシステムを統合し、各種設備データを収集・蓄積してエネルギーの見える化などを行うエネルギーマネジメントシステムを構築しました。
江崎教授によると、東大の副学長や設備部もこのエネルギーマネジメントシステムに強い関心を持っており、よくエネルギーの消費状況をチェックしているそうです。
「今まで見えていなかったエネルギーの状態が見える化されることで、設備管理の意思決定は総務部から事業部へと変わる。リスクマネジメントとしてのニーズも高まるだろう」と江崎教授は話しています。
東大グリーンICTプロジェクトのウェブサイト。工学部2号館の消費電力がリアルタイムに表示されている。電力が昼夜でかなり平準化されていることが分かる(資料:GUTP) |