管理人のイエイリです。
建物の建設が進むなか、施主の要望などを取り入れていくと、見積額が当初の金額からだんだん上がってくることがあります。
「なぜ、こんなに金額が違うの?」と聞かれたとき、誰の指示で何を変更し、その結果、金額がどう変わったかを具体的に説明できるでしょうか。
特に、海外プロジェクトでは、コストや工期、部材の仕様などについて、事実に基づいてはっきり説明できる「アカウンタビリティー」能力がないと、お金を払ってもらえないことも多々あります。しかし、非常に多くの専門工事会社や資材の動きを管理し、記録していくのは大変ですね。
こんな悩みを解決してくれそうなBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)対応の施工管理用ソフト「VICO Office」を、VICOソフトウエア社(VICO SOFTWARE、本社:米国マサチューセッツ州セーラム)が開発しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、設計の
変更履歴を完全に記録
し、施主に対してはっきりと説明できるの機能が付いているのです。
11月10日、東京・赤坂で同社の執行副社長、ドナルド・ヘンリックさんを招いて、BIM関係者向けの説明会が行われました。説明会を企画したのは、3Dイノベーションズの代表取締役社長 井上淳さんです。
説明会の会場(左)とVICOソフトウエア社の執行副社長、ドナルド・ヘンリックさん(写真:家入龍太。以下同じ) |
このソフトは、建物の設計後、BIMによって施工計画や施工管理を行うものです。これまで、BIMモデルを統合・閲覧する「Navisworks」のようなソフトや、「MS Project」「Primavera」などのプロジェクト管理ソフト、そして各種報告書を作るための表計算ソフト「Excel」などの機能を一つのソフトにまとめました。
設計変更履歴の管理機能のほか部材の干渉チェックや数量計算、見積もり、工程管理など、様々な機能が含まれています。
同じBIMモデルに基づいて、コストと施工スケジュールの両方を算出するので、コストと工期の整合性がバッチリ取れるのも強みです。
これらの結果は、数十ページの報告書として自動的に作成されます。
1つのBIMモデルをコストや工期の見積もりの両方に使う |
部材の干渉チェック機能 |
1本の柱部材を鉄筋、型枠、コンクリート、仕上げに分け、それぞれのコストや工期を積み上げる | 1つのBIMモデルから、コストや施工管理などに必要な報告書が自動的に作られる |
工程管理では、おなじみの
ガントチャートやSカーブ
を使います。
BIMモデルによって、以前からの工程管理で使われている図表が自動的に作成できると、施工関係者にもBIMが身近に感じられそうですね。
自動作成されたおなじみのガントチャート |
工種ごとの進ちょくを表す「Sカーブ」。作業員手待ち時間が生じていた工程計画(上)を見直し、工期を短縮した(下) |
BIMモデルの情報は、竣工に近づくほど詳細になっていきます。そこでこのソフトでは、情報の詳細度(LOD=Level of Detail)を100~500で表現し、詳細度の異なるデータを混在して扱える柔軟性も特徴です。
海外プロジェクトでこのソフトを使うと、施主への報告内容を数値化して表現し、自動的に報告書が作れますので、これまでのプロジェクトにありがちだったアカウンタビリティー不足による損失をかなり抑えられるのではないでしょうか。
ちなみに、ソフトの値段は3本で1万2000ドル(約94万円)とのこと。結構、リーズナブルですね。