管理人のイエイリです。
“日本のBIM元年”と呼ばれた2009年から3年目となる2011年も、あと3日を残すだけとなりました。BIMの活用分野も意匠設計から構造・設備設計、さらには施工管理や維持管理分野まで広がりつつあります。
発注者側でも国土交通省が2010年度にBIMの試行プロジェクトを発注するなどの取り組みが行われていますが、民間でもついに発注者主導の本格的BIM活用が始まりました。
日本と中国で大規模な物流施設を展開するGLプロパティーズ(本社:東京都港区)は、2012年4月に埼玉県三郷市で着工するマルチテナント型物流施設の「GLP三郷III」の設計に、
ナ、ナ、ナ、ナント、
Revit Architectureなど
のBIMソフトの使用を義務づけたのです。
GLプロパティーズ建設技術部長の石嶋健司さんはBIM導入の目的について「耐久性があり高品質の建物を低コストで建設し、運営するため」と説明しています。
GLプロパティーズが入居する汐留シティセンタービル(左)と、GLP三郷IIIの模型を前に説明する建設技術部長の石嶋健司さん(右)(写真:家入龍太) |
2011年7月15日付けの見積要綱書に含まれている「BIMによるプロジェクト推進仕様書」には、意匠設計用にはオートデスクの「Revit Architecture 2012」、構造設計用には「Revit Structure 2012または同等品」、設備設計用には「Revit MEP 2012または同等品」、そしてBIMモデルの統合用として「Navisworks Manager 20112」が指定されています。
発注者やゼネコン、サブコンなどのプロジェクト関係者は、オートデスクの情報共有システム「Buzzsaw」を使ったBIMサーバー上で最新のBIMモデルデータを共有しながら設計、施工を進めていきます。
そのBIMデータの品質をチェックし、スムーズな協業促進支援を行う「BIMマネージャー」の役割を果たすのが建物調査・診断会社のプロパティ・リスク・ソリューションです。
GLプロパティーズがBIMの導入を決断した裏には、プロパティ・リスク・ソリューション代表取締役社長の土手英俊さんの熱心なプレゼンテーションがあったそうです。
BIMで設計したGLP三郷IIIのCGパース(資料:GLプロパティーズ) |
|
BIMで作成した面積表(資料:GLプロパティーズ) | |
BIMマネージャーを務めるプロパティ・リスク・ソリューションでのデータチェック作業。左が代表取締役の土手英俊さん(写真:家入龍太) |
建物の両側にはトラックが各階まで自走してアクセスできるように、らせん状のランプが付いています。また、ランプを含めて建物全体はGLプロパティーズが独自開発した免震構造によって支えられています。
一般の建物と変わっているのは、
発注者の責任で構造設計
を行った後、ゼネコン側が意匠や設備の設計を行うことです。
物流倉庫内では数十トンもあるトラックやフォークリフトが走り回るため、床スラブなどには強い衝撃荷重がかかります。これまで多数の物流倉庫の建設に発注者としてかかわってきたGLプロパティーズは、社内にゼネコンや建築設計事務所出身者など、8人の建築技術者がおり、物流倉庫の構造設計ノウハウには自信を持っています。
今回のプロジェクトでは、免震装置や構造部材などの「ファミリ」(Revit用のBIMパーツ)を多数、作りました。これらのパーツは、今後、建設する物流倉庫の設計にも生かすことで、さらなる設計のコストダウンを狙っているそうです。
いよいよ、施主側の建築設計者が、主導的に設計・施工にかかわる時代になってきましたね。デベロッパーや保険会社、学校などの“インハウス建築家”も、ビルの用途に合わせてライフサイクルコストや環境性能などの面で最高の建物を建てるため、これから大きな活躍の場が広がってくるかもしれません。
今年の「建設ITブログ」は今回が最後です。4月1日の発足以来、皆様のご愛顧に感謝しています。来年は1月4日からスタートしますので、よろしくお願いします。それでは、よいお年をお迎えください。