管理人のイエイリです。
建物の耐震性能はこれまで、構造体の安全性を中心に考えられてきました。
しかし、地震時のBCP(事業継続計画)や、一般の生活者の視点からは、地震動によって室内がどのように揺れるのかが関心事です。
そこで、竹中工務店は地震時の室内の揺れを推定・評価し、CG動画で表示するツール「TAFT(TAkenaka Furniture Teller)」を開発しました。
建物の階数や階高、構造種別、地震波などを入力するだけで、
ナ、ナ、ナ、ナント、
棚がどう倒れるか
といったリアルな室内の状況を動画で再現するのです。
同社のウェブサイトには、実験時の実写映像とTAFTによるCG動画の比較が掲載されていますが、棚が倒れるタイミングやテーブル、イスなどの動きがそっくりなのに驚かされます。
建物の構造形式では耐震、制震、免震を選べます。そのため、免震装置や制震装置を加えた場合に、揺れがどのように違うのかを感覚的に理解することができます。
また、居室のタイプはオフィス、病室、ダイニングルームが選べるようになっています。
では、なぜ、これだけリアルで、実験結果ともよく一致したCGが作れるのかというと、バックで動いているシミュレーションがとても高精度だからです。
例えば、家具の動きは振動台での実験結果をもとに、家具と建物の間の
摩擦係数や反発係数
などを細かく設定し、動的解析を行っているのです。
いよいよ、解析結果の見える化は、地震時における室内の被害といったミクロなところまで進んできましたね。
私がもう一つ感心したのは、「TAFT」というこのツールの名前です。「FT」は「Future Furniture Teller」で、“未来の予言者家具の挙動を占う”を意味します。また、「TAFT」は地震工学の世界で昔から使われている地震加速度波形の名前でもあります。
両方をうまく引っかけたネーミングには、地震工学者のこだわりが感じられますね。
(訂正)初出時に「FT」は「Future Teller」の略と解説していましたが、正しくは「Furniture Teller」の略でした。訂正いたします。(2014年6月24日、18時02分)