管理人のイエイリです。
アメリカ建築家協会(AIA)では、建築設計の省CO2設計によって地球環境保護を実現するため、「2030チャレンジ(2030 Challenge)」という目標を設定しています。
建物が消費する化石燃料や排出する温室効果ガス、エネルギー消費を2010年から5年ごとに改善し、2030年にはすべての新築建物を「カーボンニュートラル」にする計画です。
AIAでは、この計画の達成のため「2030コミットメント(2030 COMMITMENT)」という活動を行い、建築設計の省エネ度を報告するウェブサイトを立ち上げています。
ナ、ナ、ナ、ナント、
AIA会員の省エネ設計
の“成績”を様々な形でリアルタイムに集計できるのです。
このウェブサイトに参加する設計事務所は、建物を設計すると建物名や位置のほか、建物の種類や床面積当たりのエネルギー使用量を表す「エネルギー使用率(EUI)」の計画値、床面積などを入力します。
すると、AIAのクラウドシステムがこれらのデータを収集・蓄積して、様々なレポートを参加者に提供してくれるというわけです。
2030チャレンジでは、2014年までは基準の建物に対してEUIを60%削減する省エネ目標を掲げていますが、上に示したシカゴ地域の設計事務所の成績をみると医療施設(Healthcare-Outp)や、幼稚園から高校までの学校(Education
K-12)が目標に近づいていることがわかります。
また、年ごとのサイト参加者全体のEUI削減率は2009年は22%だったのが、2013年には
39%まで改善
しました。
EUIの設計値などは、様々な有償ソフトやフリーソフトを使うことができます。例えばキプニス氏は、3Dモデリングソフト「SketchUp」の無料プラグインソフト「IES VE-ware」や、フリーソフトの「HEED」を使った省エネ設計方法を紹介しました。
2030コミットメントのサイトに参加するためには、次の4つの段階を踏まなければなりません。
(1)設計事務所自身が建築設計を通じて地球環境保護を実践することを手紙にまとめサインする。
(2)6カ月以内に設計事務所自身が地球環境保護に貢献する4種類の省エネ・リサイクル活動を計画・実践する。
(3)事務所が設計で使用する環境評価指標やCO2削減率の目標値などを設定した環境アクションプランを設定する。
そして(4)省エネ報告サイトの活用、となるわけです。
ここには、サイトの参加者全員によって環境建築設計のP(計画)→D(実行)→C(評価)→A(改善)のサイクルを回す仕組みがあります。全体に比べての自社の省エネ設計の実力がわかるほか、競争意識も生まれます。また、この成果は自社のマーケティング活動にも使えます。
2012年にこのサイトに設計実績をアップした企業は110社。その中にはSOMやPerkins+Will、HOK、GENSLERなどそうそうたるメンバーが顔をそろえているほか、10人未満の小規模事務所も参加しています。
なかなかよくできた省エネ設計促進システムですね。