建物や橋は生物化する?コンピューターが形を決める「ジェネレーティブ・デザイン」
2014年12月5日

管理人のイエイリです。

米国・ラスベガスで開催中された「Autodesk University 2014」(以下、AU)では、米オートデスク社が3Dプリンターの技術革新に乗り出したことが大きなテーマになりました。

これまでの建物や機械は、規格で断面の形や材質が決まっている材料や、直線や円などのシンプルな幾何学的形状を元に設計・製造されてきましたが、3Dプリンターによって自由な形が作れるようになると、設計の仕方も変わってくる可能性があります。

12月2日(現地時間。以下同じ)に基調講演を行った米オートデスク社のCTO(最高技術責任者)のジェフ・コワスルキー(Jeff Kowalski)氏は、近未来の設計について

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

形はコンピューターが決める

 

時代になる、と大胆に予測したのです。

 

AU 2014で基調講演を行う米オートデスク社CTOのジェフ・コワルスキー氏(写真:特記は家入龍太)
AU 2014で基調講演を行う米オートデスク社CTOのジェフ・コワルスキー氏(写真:特記は家入龍太)

現在の設計は、人間がCADやBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトなどで建物などの形を決めていますが、基本となる形状は平面や円、長方形などシンプルな形をペースにしています。

コワルスキー氏は「これからは、その部材は何か、何と関係があるのか、機能は何かという設計のゴールをコンピューターに教えると、コンピューターが最適な形を生み出してくれるようになる」と大胆に予言しました。

例えば、建物の場合は「エネルギー性能の最適化」をゴールとし、建築可能な空間の範囲、必要な部屋数などをコンピューターに入力することにより、コンピューターが少しずつ形を変えながらシミュレーションを行い、最適な形を選び出す、という過程となります。

建物のシミュレーション過程の例(資料:Autodesk)

建物のシミュレーション過程の例(資料:Autodesk)

また、オートバイの後輪を支える「スイングアーム」という部品は、その材質を鋼、アルミ、チタンなどの材質を変えることにより最適な形も変わってきます。

12月3日、日本人記者団に会見を行ったコワルスキー氏は、材質ごとに最適化されたスイングアームの形を3Dプリンターで造形した模型や、形を最適化した熱交換器を3Dプリンターで造形したチタン製の部品を見せてくれました。

材質ごとに最適化されたスイングアームの形を3Dプリンターで出力した模型

材質ごとに最適化されたスイングアームの形を3Dプリンターで出力した模型

金属用3Dプリンターで作ったチタン製熱交換器のカットモデル

金属用3Dプリンターで作ったチタン製熱交換器のカットモデル

日本人記者団と会見するコワルスキー氏

日本人記者団と会見するコワルスキー氏

こうした設計手法を、コワルスキー氏は

 

ジェネレーティブ・デザイン

 

と呼んでいます。英語で書くと「Generative Design」、つまり“生成する設計”ということになります。

これまでもBIMの世界では、様々な曲面や配置をコンピューターに自動発生させて設計者が選んだり、BIMモデルを元に建物のエネルギーシミュレーションを行ってその結果を設計にフィードバックしたりして、設計の最適化を行う例もありました。

ジェネレーティブ・デザインは、形の自動生成とシミュレーションによる改良のフィードバックをコンピューターで膨大な回数を繰り返すことにより、「最高の形」を追求する手法と言えるでしょう。

つまり、「アルゴリズミックデザイン」や「コンピューテーショナルデザイン」、「シミュレーション」、「フィードバック」、「最適化」などを包含するコンセプトの言葉と言えそうです。

その結果、建物やモノの形はどんな風になっていくのでしょうか。コワルスキー氏は「生物の形に似てくるだろう。なぜなら生物は進化しかしないからだ」とコワルスキー氏は説明します。

機械などの形はだんだん生物に似てくる

機械などの形はだんだん生物に似てくる

3Dプリンターによる鋼橋架設工事のイメージ

3Dプリンターによる鋼橋架設工事のイメージ

現在の3Dプリンターは決まった材料で全体を作るものが一般的ですが、将来は部品の中の粒子ごとに最適な合金を作りながら造形するものも登場するでしょう。

すると形だけでなく、材質の最適な分布も設計要素に入ってきますので、ますます高度なシミュレーションと最適化による設計が進化してきそうです。

そのとき、設計者の役割は、「コンピューターにニーズを的確に伝えること」になりそうです。設計者の手腕が問われる時代になりそうですね。

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