管理人のイエイリです。
AutoCADの図面ファイルである「DWG形式」を読み書きできる「JDraf」や「DraftSight」などDWG互換CADのエンジン部分を開発するドイツ・グラバート社(Gräbert)の最高経営責任者(CEO)、ウィルフリード・グラバート(Wilfried Gräbert)さんがこのほど来日しました。
JDrafなどのプロモーションのため、ユーザー企業を訪問する途中、突撃インタビューをさせていただいたところ、思わぬ新製品を見せてくれたのです。
それは「SiteMaster」というシステムで、既存建物のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルを
ナ、ナ、ナ、ナント、
レーザー距離計
とタブレット端末を使ってサクサク作ってしまうものなのです。
タブレット端末上では作図用のCADソフトが動いており、レーザー距離計で測った寸法をBluetoothで直接、入力できるようになっています。
例えば、平面の壁や床、天井が直角に交わる部屋の場合、携帯式のレーザー距離計で縦、横、高さの3つの寸法を測るだけで部屋の形が作成できるのです。
これに開口部の窓やドアなどを描き加えるのですが、よく使うものはBIMパーツのような部材が既に用意されているので、それを配置すればスピーディーに作業が進みます。
直角でない壁の場合は、三角形の各辺を計測して作図する要領で図面化できます。
また、レーザー距離計で自動入力した寸法と、人間が手入力した寸法は別々のレイヤーで管理されるため、図面でおかしなところが合った場合のチェックも簡単です。
そしてできあがったBIMモデルは、BIMモデルのデータ交換標準である「IFC形式」を使ってRevitやArchiCADなどのBIMソフトに読み込み、設計に活用することが可能です。
既存建物のBIMモデルを作るときによく使われるのが3Dレーザースキャナーで計測した点群データですが、点群データには家具などの余計なものが写っている半面、肝心の部屋の角が写っていないこともよくあります。
また、3Dレーザースキャナーや点群データを処理するワークステーションが高価で、作業にも熟練が必要です。
その点、SiteMasterなら1~2日のトレーニングで使えるようになり、
数十人の人海戦術
で、多くの建物を短時間にBIMモデル化することができるそうです。
既に米国ではバンクオブアメリカが8カ月間で約3000の支店を図面化し、ドイツ・ベルリン市では約1000万m2公共建物を図面化するなど、欧米では数々の実績を積み重ねています。
グラバート社は、低コストのDWG互換CADだけでなく、出来形BIMモデル作成の分野でも旋風を巻き起こしつつあります。
古い建物の維持管理やFM(ファシリティー・マネジメント)に使うBIMモデルを作るときにも、便利に活用できそうですね。