管理人のイエイリです。
これまで熱を蓄える方法には、大きく2種類がありました。1つはレンガや鉄の塊などを熱して「顕熱」として蓄える方法、もう1つは、水などを凍らせて「潜熱」として蓄える方法です。
東京大学授と筑波大学の研究グループはこのほど、顕熱や潜熱とは異なる方法で熱を蓄える手法を発見し、その成果を昨日(5月12日)、「Nature
Communications」のオンライン版に発表しました。
※英文のタイトルは“External stimulation-controllable heat-storage ceramics”
「ラムダ-五酸化三チタン」という物質に圧力をかけることにより、
ナ、ナ、ナ、ナント、
熱を“絞り出す”
ように取り出せるす画期的な方法なのです。
「ラムダ-五酸化三チタン」という物質には以前から知られている茶色い結晶の「ベータ-五酸化三チタン」(以下、ベータ)のほか、2010 年に大越慎一教授らにより発見されたストライプ状結晶の「ラムダ-五酸化三チタン」(以下、ラムダ)の2種類があります。
ベータの方を80~220℃程度に熱すると、熱エネルギーを吸収しながらだんだんラムダに変わっていきます。
そしてラムダの方に60MPa(約590気圧)程度圧力を加えると、だんだんベータに変わりながら、熱を発生します。
仮にラムダが常温だったとしても、圧力をかけると熱を取り出せるというわけです。
取り出せる熱量は、
材料1リットル当たり230kJ
もあります。水が凍ったり溶けたりするときの潜熱は同320kJ、建物の蓄j熱材料として使われるパラフィンは同140kJですから、かなりの熱量を蓄えられることがわかります。
また、ベータに電流を流したり、光を当てたりしてもラムダが増え、圧力をかけることにより取り出すことができます。
この蓄熱手法は東京大学大学院理学系研究科の大越慎一教授と、筑波大学数理物質系の所裕子准教授らの研究グループが発見し、「蓄熱セラミックス」という新概念の物質としています。
材料を常温のまま、長期間にわたって熱を保存し、いつでも引き出せるようになると廃熱や余剰電力などの有効利用につながりそうですね。
このほかの用途としては、感圧シートや繰り返し使えるポケットカイロといった身近なものから、感圧伝導度センサー、電流駆動型の抵抗変化型メモリー、光記録メモリーといった先端電子デバイスまで幅広く想定しています。
この材料は単なる酸化チタンで、環境にやさしく、埋蔵量も豊富とのことです。建設分野でも今後、活用が期待できそうです。