管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)で建設業の生産性を向上させるための原理原則とも言えるのが、後工程で発生する問題を前倒しで解決する「フロントローディング」です。
従来は図面を大量に作成する段階にあったマンパワーの投入ピークを、建設コストを削減しやすい前段階にシフトさせる考え方を説明した「マクレアミー(MacLeamy)曲線」という図を見た方も多いでしょう。
BIM界ではもはや欠かせない“教典”ともなったこの図を発明したパトリック・マクレアミー(Patrick MacLeamy)氏が来日し、6月4日に都内で開催されたグラフィソフトジャパン主催のイベントで講演しました。
マクレアミー氏は長年、BIMモデルデータのデータ交換標準「IFC」を開発する国際的団体、buildingSMARTでボランティアとして活動してきましたが、驚いたのは現在の肩書です。
ナ、ナ、ナ、ナント、
あのHOKのCEOに昇進
していたのです。
HOKというと、米国最大の建築設計事務所です。調べてみたところ、2012年からCEO(最高経営責任者)に就任していたようです。
BIM界のキーパーソンが、有力建築設計事務所のトップを務めていると、会社のBIM活用もますますパワーアップしそうですね。
マクレアミー氏の講演は、BIMの“I(Information)”、つまり情報の重要性を訴えるものでした。
BIMというと3Dモデルをつい思い浮かべてしまいますが、マクレアミー氏によると最も重要なのは“I”であり、3Dモデルはその一部にすぎないということです。
“I”をどう有効に活用するかという問題に頭を悩ませている設計事務所や建設会社は多くあります。まさに、そこを鋭く突いた講演でした。
設計段階から普及しはじめたBIMですが、最近は施工や維持管理など、建設ライフサイクル全体にわたって活用が広がっています。
そしてBIMが関連する建設コストの規模も大きくなっています。例えば設計段階が1ドルとした場合、施工段階は20ドル、そして運用・維持管理段階では60ドルものお金が動きます。
これらのコストを有効に活用するためには、ソフトベンダーを問わない「openBIM」こそ価値があるとマクレアミー氏は語りました。
未来の建設産業をキーワードで表すと、
BIM、BAM、BOOM!
だと、マクレアミー氏はテンポよく語りました。
つまり、設計段階はBIM、施工段階は「BAM(ビルディング・アセンブリー・モデル)」、そして運用・維持管理段階は「BOOM(ビルディング・オペレーション・オプティマイゼーション・モデル)」をそれぞれ活用して、生産性を上げていこうということです。
各段階のBIM、BAM、BOOM!の目的をはっきりさせると、その根幹となる“I”はおのずと決まってくる、とパトリック氏は示唆しているように感じました。
HOKのCEOというと、VIP中のVIPという感じですが、パトリック氏はとてもフレンドリーで、次々と求められる握手や記念撮影ににこやかに応じていました。私もお願いして記念の1枚を撮ってもらいました。