現地調査の手間を半減!岐阜市の設計事務所が3Dスキャナーを開発
2015年11月20日

管理人のイエイリです。

リフォーム工事は事前の現地調査がとても重要です。もし、図面がないと建物各部の寸法を測って図面を作るのに、大変なコストと時間がかかります。

この現地調査を効率化しようと、岐阜市の建築設計事務所、アーキ・キューブは、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

3Dレーザースキャナー

 

を自社開発してしまったのです。

正式名称は「現況建物測定システム」と言い、2013年度補正予算の「ものづくり補助金」を受け、開発には、岐阜県情報技術研究所の協力を得ました。

自社開発した3Dレーザースキャナーとアーキ・キューブの皆さん。左から大石佳知代表取締役、深尾早希さん、岩佐健司さん、堤好仙さん(特記以外の写真:家入龍太)

自社開発した3Dレーザースキャナーとアーキ・キューブの皆さん。左から大石佳知代表取締役、深尾早希さん、岩佐健司さん、堤好仙さん(特記以外の写真:家入龍太)

開発した3Dスキャナー

開発した3Dスキャナー

この3Dスキャナーは、水平・垂直2方向に回転する高精度パンチルト・ユニット雲台に、計測距離30mのレーザーセンサーを取り付けたものです。

また、この3Dレーザースキャナーを制御し、点群データを作成するソフトも開発しました。これらの開発には、約350万円のコストがかかったそうです。

3Dレーザースキャナーを制御するソフト

3Dレーザースキャナーを制御するソフト

いったい、どれくらいの実力があるのか、アーキ・キューブの事務所で試験的に計測してもらいました。

打ち合わせスペースの真ん中に3Dレーザースキャナーを据え付け、水平方向のスキャンピットを0.25°にセットして計測をスタートしました。

3Dレーザースキャナーは最初、首や肩を回す“ストレッチ体操”をするかのように、位置合わせのためのウオーミングアップを行います。

そしていよいよ計測がスタート。約5分で計測が終了しました。いったい、どんなデータが取れたのでしょうか。

点群データの行数は、ナント、75万7782行もありました。データ容量は約40MBです。

点群データのX、Y、Z座標

点群データのX、Y、Z座標

このデータをオートデスクの点群処理ソフト「ReCap」やBIMソフト「Revit」に読み込んでみました。

すると、1回の計測にもかかわらず、建物の内部が詳細に記録されていることがわかってきました。

3Dスキャナー(左)と事務所の天井にあるシーリングファン

3Dスキャナー(左)と事務所の天井にあるシーリングファン

点群データでもファンの形状がしっかり写っていた

点群データでもファンの形状がしっかり写っていた

計測中の様子を再現して全天球カメラ「THETA」で撮った写真。右端は筆者です(写真:アーキ・キューブ)

計測中の様子を再現して全天球カメラ「THETA」で撮った写真。右端は筆者です(写真:アーキ・キューブ)

点群データはこんな感じで取れていました

点群データはこんな感じで取れていました

さらに点群を建物の断面方向から見て断面図的に表示すると、

 

建物の断面形状がくっきり

 

と表れてきました。

梁の部分を拡大して幅を測ってみると、約180mmということがわかりました。レーザーセンサーの精度は10mで±3mmということですが、実際の誤差はその半分程度とのことです。

点群データで建物の断面を表示させたところ

点群データで建物の断面を表示させたところ

梁の幅を測ってみると「180.7mm」だった

梁の幅を測ってみると「180.7mm」だった

アーキ・キューブは、事務所内を数カ所から計測して、各点群を合成。そのデータを元にBIMモデルを作りました。

建物内部を計測した複数の点群データを合成したもの(以下の資料:アーキ・キューブ)

建物内部を計測した複数の点群データを合成したもの(以下の資料:アーキ・キューブ)

点群データをトレースして作ったBIMモデル

点群データをトレースして作ったBIMモデル

図面のない住宅の場合、これまでは現地での計測と図面化に約30人工(にんく)かかっていました。

それが、この3Dレーザースキャナーを使うと工数が2分の1~3分の1になり、測りもれもなくなるそうです。

アーキ・キューブの所員はわずか6人です。そんな小さな設計事務所が、3Dレーザースキャナーを自前で開発してしまったとは、「下町ロケット」もビックリですね。

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