管理人のイエイリです。
今年はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)を設計意図を説明するための机上のイメージではなく、実際の現場や構造物をリアルに表現したデータとして使う手法が一段と進化しました。
昨日(12月15日)、東京・品川でアルファコックス、ニコン・トリンブル、テクラが共催した「BIM/CIMカンファレンス2015」のテーマも「As-Built to ∞」(究極の出来形モデル)というもので、この流れに沿ったものでした。
その目的も至ってシンプルです。トップバッターとして特別講演を行った米国トリンブル・ナビゲーション社(Trimble Navigation)の副社長、ブリン・フォスバーグ(Bryn Fosburgh)氏が会場を埋めたBIM/CIMユーザーに向けて放った一言は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
「もうかりまっか?」
という衝撃的なものだったのです。
確かに、いくらBIMやCIMを使っても、利益が上がらないことにはビジネスとしての意味がありません。
フォスバーグ氏によるとBIMやCIMは、設計段階より施工段階で使った方が金銭的価値が高いのに、実際は設計段階の方が施工段階よりも多く使われていると指摘しました。
さらに、土木の場合、CIMとともに3Dマシンコントロールなどの情報化施工を導入することにより、測量時間が30%減り、重機の燃費が40%減り、重機の生産性が50%も増えることを説明しました。
ビルの建築プロジェクトや、完成後の運用、維持管理でも相当なコスト削減効果があると語りました。
やはり、BIMやCIMは設計段階だけでなく、施工や維持管理を含めた建設ライフサイクル全体で使い、実際の建物や構造物を属性情報を含めて忠実にモデル化した「コンストラクタブル・モデル」まで発展させて活用しないと、「もうかりまっか?」「ぼちぼちでんな」という会話にはならないということですね。
トリンブルは、1990年代から建設プロジェクトの最上流である測量やフィージビリティースタディーから、設計、施工、そして維持管理までをシームレスにつないでいく重要性を認識していたそうです。
数年前に上流工程を担う3Dデザインソフト「SketchUp」を買収したり、施工最下流の鉄骨生産に直結する詳細設計BIMソフト「TeklaStructures」を買収したりしたのは、「AからZまでをつなぐ」(フォスバーグ氏)戦略の一環だったのです。
トリンブル・ナビゲーション社のゼネラルマネーャー、ロブ・ペインター(Rob Painter)氏は「特に、TeklaStructuresの開発元であるテクラ社を買収したときは、細心の注意を払った」と、生々しく証言しています。
今回のイベントは、これまでのBIM/CIM関連の展示会イベントに比べて、ぐっと施工現場寄りのテーマでした。
そのためか、あまり大々的に宣伝しなかったにもかかわらず、
ナ、ナ、ナ、ナント、
600人以上が来場
し、主催者も驚いていました。
施工管理や維持管理段階では、やはりこの日のテーマとなった「As-Built to ∞」のように、実物に極めて近いBIM/CIMのモデルを使うことが、生産性向上の原動力になるということをあらためて認識した次第です。
筆者はこの考え方を情報と実物を一致させるという意味で「情物一致」と言ったり、実物とそっくり同じ世界をコンピューター上に構築して管理するという意味で「セカンド・ワールド」や「パラレル・ワールド」と言ったりしています。
今年は、他のBIMベンダーもオートデスクが「リアリティー・コンピューティング(Reality Computing)」、ベントレー・システムズが「リアリティー・モデリング(Reality Modeling)」という言葉をそれぞれ使いました。
この流れは、ハードやソフトの進化でますます加速していきそうですね。