CIMで状況認識!鹿島が海底シールドを1キロ沖合の立て坑に見事到達
2017年2月24日

管理人のイエイリです。

シールドトンネル工事は、雲の中を数多くの計器のデータだけで飛ぶ飛行機と似ています。

前方はシールド機の隔壁で覆われ、切り羽が見えないなか、数多くの計測データだけで、目的地である立て坑にたどり着く必要があるからです。

飛行機と同じく、シールド機による工事で重要になるのが、周囲の状況認識(Situation Awareness)です。地盤や障害物といった外部の状況や、シールド機自身の位置や姿勢といった内部の状況に目を配りながら、シールド機を操縦していく必要があるからです。

こうした作業はこれまで、施工管理者が頭のなかで施工中のデータや図面などの情報を描きながら行ってきましたが、他の人には見えにくかったのも事実です。

そこで鹿島は、北海道・小樽市で施工中の海底シールド工事で、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

CIMを状況認識に活用

 

し、見事、1キロほど沖合にある放水口にシールド機を到達させることができました。

海底シールドのCIMモデル(以下の資料:鹿島)

海底シールドのCIMモデル(以下の資料:鹿島)

この海底トンネルは、LNG(液化天然ガス)を燃料に発電する北海道電力の火力発電所、石狩湾新港発電所1号機の冷却水を、防波堤の外に放出するための放水路トンネルです。

このトンネルは長さ1045m、内径4.7mでセグメント幅は1.2m、セグメント厚は300mmです。

シールド機は2016年7月に陸上部の立て坑を発進し、約6カ月間掘削した後、17年1月12日に沖合に建設済みだった放水口に到達しました。

石狩湾新港の北防波堤の下をくぐって放水口を結ぶ放水路トンネル

石狩湾新港の北防波堤の下をくぐって放水口を結ぶ放水路トンネル

現場は海底で、土被りが11~32mとばらついており、最大水圧は0.34Mpaです。そして放水口部分には防波堤があり、その荷重がトンネルにも作用するという、きわめて難しい現場状況です。

そこで鹿島は、この複雑な現場をCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)によって3次元でモデル化しました。

シールド機の周囲にある地盤については、土質のほか深浅測量で得た海底面の高さを取り込みました。また、シールド機の掘進中は、位置や姿勢をシールド掘進管理システムから、セグメント外面とシールド機内面の「テールクリアランス」というすき間のデータも取り込みました。

こうして施工にかかわるシールド機内外の状況を「見える化」したことにより、誰もが同じ状況認識を行いながら、高精度で安全な施工を行うことができたのです。

CIMモデルによって見える化された現場。周囲の状況が一目瞭然だ

CIMモデルによって見える化された現場。周囲の状況が一目瞭然だ

シールド機内面とセグメント外面の「テールクリアランス」も見える化し、セグメントを傷つけないように細心の姿勢制御を行った

シールド機内面とセグメント外面の「テールクリアランス」も見える化し、セグメントを傷つけないように細心の姿勢制御を行った

そして、驚くべきことに、このCIMモデルには、シールド機の推力や切り羽厚、テールクリアランスのすき間を埋める裏込め材の注入量など、

 

施工中の属性情報

 

も自動的に付与されていくのです。

CIMモデルにはセグメントごとに施工中の推力データなどが自動的に付与され、色分け表示もできる

CIMモデルにはセグメントごとに施工中の推力データなどが自動的に付与され、色分け表示もできる

このほか、自動付与される属性情報には、シールド機やセグメントの測量結果や、セグメントの製造番号・種類、地盤の土質やN値も含まれます。

鹿島は今後、都市部のシールド工事にもCIMを導入していくほか、掘削時の属性情報をCIMと連動させて蓄積し、様々なシールド工事での施工管理に活用していくそうです。

これだけの情報がCIMモデルにまとめられていると、完成後の維持管理にも大いに役立ちそうですね。そして、残されたデータは、施工技術の伝承にも役立ちそうです。

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