管理人のイエイリです。
オフィスなどの天井に、無数に設けられた「空調吹き出し口」から、どれだけの風量が室内に吹き出しているのかを測定する作業は大変です。
計測機器を現場に運搬して設置し、一つの吹き出し口の風量を測定すると撤収、移動して次の吹き出し口風量を測定する、という作業を繰り返す必要があるからです。1カ所当たり5分の時間がかかります。
そこで、新菱冷熱工業は、この作業を効率化するため、産業技術総合研究所と共同で、画期的なシステムを開発しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
室内を飛行するドローン
に、風量計を搭載し、吹き出し口にドッキングして、飛んだまま風量を測定できる「風量測定用ドローン」なのです。
高さ3.5mの吹き出し口の場合、1カ所当たりの測定時間はわずか1~2分となり、大幅なスピードアップが実現します。
集風型風量計とは、吹き出し口をフードで覆って空気を集め、ダクト内に搭載した風速計で風量を測定するもので、冒頭のオフィスビル用風量測定装置「WINSPEC-2」などのために、新菱冷熱工業が独自開発したものです。
この風量計をドローンの中心部分に搭載しました。ドローンのプロペラから発生する気流の影響を受けずに測定できます。
問題は、風量計のフードをいかに吹き出し口とピッタリ合わせるかです。当然、室内は人工衛星からの電波を利用したGNSS(全地球測位システム)は使えません。
この問題を解決したのが、産業技術総合研究所が開発した
画像処理による飛行技術
です。
オペレーターがカメラ画像上で吹き出し口を指定すると、カメラがドローンに搭載した複数のマーカーを自動認識し、ドローンの位置を割り出します。
これらの位置情報をもとに、ドローンは吹き出し口に自動的に近づき、測定が行えます。
このドローンを開発する上で問題となったのは、重心バランスでした。通常ならドローンの中央部分に搭載されているバッテリーや飛行制御装置などを、風量計の周囲に移動されなければならないからです。
そこでドローンを井桁構造として、バッテリーなどを重量バランスがとれるように周囲に設置しました。この技術を含め、産業技術総合研究所との共同開発技術は特許出願済みです。
新菱冷熱工業は今後も室内飛行用ドローンの実証実験を重ね、設備の遠隔監視などの作業を行うドローンなどを開発していく方針です。