管理人のイエイリです。
山岳トンネル工事で重要なのは、掘削の最前線となる切り羽周辺の地盤の強度を正確に把握することです。
これまでは、ドリルジャンボという重機で切り羽前方に向けて30~50mの孔を数本掘り、そのデータをもとに地山の強度を推定していました。しかし、この方法だと、切り羽周辺の地山強度の全貌を明らかにするには、あまりにもデータ量が少なかったと言えます。
そこで西松建設は、地山の強度をより精密に知るため、ドリルジャンボで掘るすべての削孔データをフル活用する3次元地山評価システム「DRISS-3D」を開発しました。
発破用やトンネル上部を支えるフォアパイリング用の孔だけでなく、
ナ、ナ、ナ、ナント、
ロックボルト用の孔
まで使って、トンネル周囲の地山強度も収集するのです。
このシステムはドリルジャンボでの削孔データを計測する「計測システム」と、計測データを専用ソフトが処理する「解析・評価システム」からなります。
ドリルジャンボで計測した「削孔エネルギー」のデータを、専用ソフトで処理することで、地山強度の3次元分布を求めます。孔の間は、逆距離加重平均法やクリグギング法により、補完します。
ロックボルト用の削孔データまでフルに使って作られた地山強度の3Dモデルは非常に精密です。そのため、縦断面、横断面、水平面と自由自在に切断して、地質縦断図やトンネル平面図、切り羽写真と比較することができます。
西松建設は施工中の新幹線トンネルでこのシステムを導入し、検証したところ原位置試験で得られた地山強度と結果がほぼ一致したほか、地山強度の3次元分布も実際と同じような傾向を示すことが確認できたそうです。
面白いことに、削孔データを収集中の情報を利用して、現場事務所や本社、支店でもドリルジャンボの稼働状況を
リアルタイムで監視
することもできるのです。
トンネル工事の主役であるドリルジャンボがストップすると、工事の進ちょくにたちまち影響が出ます。多くの関係者がマシンの状態を見守れることは、故障の予防や早期発見につながりそうですね。
また、地山強度だけでなく、地盤の弾性係数も求めることができるので、同社開発のトンネル変形予測システム「PAS-Def」で掘削時の変形挙動の予測なども可能です。
地山性状の3次元データは山岳トンネルのCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)モデル上で一元管理できます。これにドリルジャンボのリアルタイムな稼働状況まで加わると、山岳トンネルのIoT(モノのインターネット)と言っても、過言ではありません。