管理人のイエイリです。
空調設備業界では、室内の空気の流れに関する課題を明らかにし、改善策を顧客に提案するのに苦労しています。
というもの、空気の流れは目に見えないため、空調設備の改修工事で、「ビフォー・アフター」がどのように変わるのかを、説明するのが大変だからです。
これまでは、部屋の内部空間や空調の吹き出し口・吸い込み口を3Dモデル化し、熱流体解析(CFD)ソフトで解析した結果をコンピューターグラフィックス(CG)にして説明してきましたが、イマイチ、実感がわかなかったという問題もありました。
そこで、設備大手の新菱冷熱工業は、CFDの結果を超リアルに現場で体験できる可視化手法を、ソフトウェアクレイドル(以下、クレイドル)と共同開発しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
Microsoft Hololens
を着けて現実の室内を見渡すことで、空気の流れを実寸大で見られるのです。
HoloLensとは、AR(拡張現実感)用に開発されたWindows10搭載のホログラフィックコンピューターです。両目にそれぞれCFD結果を表示する超小型モニターが付いており、VRゴーグルのように頭に着けて使います。
CFD結果で得られた空気の流れを、実際の室内と位置合わせすると、現実の室内風景とCFDによる空気の流れを重ねて見ることができます。
例えば、机で仕事をしているとき、冷気はどのくらいの高さで流れるのか、部屋の中で空気がよどんでいる場所はないか、といった細かいことを、室内のあちこちを歩き回りながらチェックできるのです。
これをビフォー・アフターの説明で使うと、見えない空気の流れがどのように改善されるのかが一目でわかりますね。
また、HoloLensさえ現場に持ち運べば、誰でも使えるので面倒なセッティング作業などはいりません。
新菱冷熱工業はHoloLensを使ったCFD可視化開発の第一弾として、つくば市にある同社の中央研究所内の部屋で、吹き出し口から流れる気流を可視化しました。
同社によると、HoloLensをCFDに適用したのは、
日本で初めて
とのことです。
同社は今後もクレイドルとともに視覚化の機能強化を進めていくとともに、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の施工図やCFD解析をHoloLensによって提案する体制も整えていく計画です。
仮想データである工事の完成予想図や気流の流れが、現場に直接フィードバックして見えるとは、CFD界の新しいIoT(モノのインターネット)とも言えそうですね。