管理人のイエイリです。
大規模な法面掘削を行うとき、豪雨や地震などで法面崩壊の予兆がないかを調べるため、施工中に法面の変位を計測することが欠かせません。
これまでは、最も変状が出そうな部分などに光波測距儀やGPSなどを設置して、地表面の動きを観測するのが一般的でしたが、設置できる機器の数には限りがあるため、変位が発生している範囲を特定することは困難でした。
そこで安藤ハザマは、法面全体にわたって、変位を計測できる画期的なシステムを導入しました。
そのシステムとは、
ナ、ナ、ナ、ナント、
合成開口レーダー
を地上に設置したものなのです。
略して「GB-SAR(ジービー・サー):Ground Based – Synthetic Aperture Radar」と呼びます。
合成開口レーダーというと、当ブログ2017年9月15日付けの記事や、9月27日付けの記事で紹介した「合成開口レーダー衛星」のことを思い出された方もおられるでしょう。
今回、安藤ハザマが導入したシステムは、これと同じ仕組みを使っていますが、合成開口レーダーを人工衛星ではなく、法面に近い地上に設置したものです。
長さ約2mのレール上に設置したレーダーアンテナが移動しながら電波の送受信を行い、仮想的に大きなアンテナを作り出すことで、レーダーの分解能を高める仕組みです。
その特長は、(1)法面の変位を面的に観測できる、(2)数kmの距離でも観測できる、(3)非接触で観測できる、(4)雨や雲、方位などの影響を受けにくいと、土木工事にはもってこいの強みを持っています。
導入に当たっては、東北大学東北アジア研究センターの佐藤源之教授の指導を受けました。
安藤ハザマは、実際に切り土法面を施工中の現場で、試験運用を行いました。法面から直線距離約700mのところにレーダーを設置し、掘削期間中に2~5分に1回の頻度で24時間の連続計測を行いました。
そして、ドローンによる空撮写真から作成した現場の3Dモデル上に、変位の計測結果をヒートマップで表示しました。
その結果を従来の光波測距儀やGPS測量機による結果と比較したところ、
1mm以下の精度
であることが確認できたそうです。
また、観測中に雨が降りましたが、変位計測の結果には影響はほとんど見られませんでした。
同社ではこのシステムを山岳トンネル工事での切り羽の安定確認や、切り盛り土量の算出などにも適用できるように開発を進めて行く方針です。
合成開口レーダーという“新兵器”は、今後、様々な土木工事やインフラの維持管理に使われていきそうな予感がしてきました。