管理人のイエイリです。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)による設計が普及してきましたが、その設計プロセスは建物の各部を構成するBIMパーツを設計者が一つ一つ、パソコン上で組み立てていくという手作業が多いのではないでしょうか。
一方、将棋の世界ではAI(人工知能)が何十手も先を読みながら、最も有効な手を自動的にシミュレーションし、次の一手を決めるという自動化が進んでいます。
こうした状況の中、竹中工務店は建設業におけるAI活用を促進するため、将棋電王戦での優勝ソフトを開発した実績のあるHEROZと協業することになりました。
その第一手として着手したのは
ナ、ナ、ナ、ナント、
構造設計を自動化
するAIシステムの開発なのです。
竹中工務店では、構造設計の全段階で、2001年に自社開発した「BRAIN(ブレイン)」という構造設計システムを使っています。
これまで蓄積されてきた数百件にものぼるBRAINのデータには、同社の構造設計ノウハウが凝縮されています。一方、HEROZにはAI技術ノウハウを凝縮した「HEROZ
Kishinプラットフォーム」があります。
そこで、両者のノウハウを組み合わせることで、2018年までに構造設計用AIシステムのプロトタイプを構築し、それを育てていこうというわけです。
さらに2020年までに、AIのディープラーニングなどによって、より速く、より優れた結果を出すシステムに改善し、構造設計やシミュレーションの自動化を開始します。
その結果、ルーティン的な作業の70%を削減することを目指しています。
もっとも、これは手始めにすぎず、その後も建物のライフサイクル全体にわたってAI活用を進めていきます。
例えば施工計画の変更や短縮の必要が出てきたとき、BIMモデルとAIを連携して作業員調達や人員配置など計画を効率的に行ったり、ビル管理にAIを導入してFM(維持管理)やエネルギーの需給調整を行う「デマンドレスポンス」を行ったりすることを目指しています。
いよいよ、BIMモデルとAIを連携させることにより、これまで人間のアタマで考えたり、手作業で行ったりしていた設計や解析、シミュレーションを自動化する時代になってきたと言えそうです。
これまで手作業が多かったBIM側での設計や施工計画などをAIで自動化し、その結果を大手ゼネコンが開発を進める建設ロボットによって自動化施工を行うことにより、建設業は
IoT化への道
を着実に歩み出したと言えそうです。
つまり実物の現場とBIMモデルがリアルタイムを連動させることにより、AIが人間の同僚や部下として設計や施工計画を自律的に行い、ロボットが作業員の一人として現場で働く時代に近づきつつあるのです。
理屈から言うと、AIやロボットがいくら働いてもその“労働時間”はゼロです。彼らが生み出した価値の分だけ、労働生産性は急速に上がっていきそうです。その結果が楽しみになってきました。