管理人のイエイリです。
多数のビルや道路からなる都市で、地盤沈下やビルの傾きなどを見つけるのに、一つひとつの構造物を定期的に測量して回るのは大変な手間ひまがかかります。
そこでNECは2つの人工衛星を使い、地上のビルや道路の変位を高精度に解析する「2次元微小変位計測技術」を開発しました。
水平、垂直2方向の変位を
ナ、ナ、ナ、ナント、
数ミリ単位で計測
することができるのです。(NECのプレスリリースはこちら)
これは、レーダーを積んだ人工衛星の周回移動の動きを利用して、高解像度のレーダー画像を得る「合成開口レーダー(SAR)」という技術を用いたものです。
NECの小型レーダー衛星「ASNARO2」の場合、地上数百キロメートルの高度から解像度1m程度の画像が得られ、高精度で距離計測ができます。
2機の衛星で計測したレーダー画像には、地上の物体にレーダー波が反射した「反射点」が写っており、これらの反射点を地上の物体(剛体)ごとに自動分類できるようにしたのが、この技術のポイントです。
これまでは同じビルや道路からの反射点を、ひとまとめにする「クラスタリング」という作業に苦労していました。この作業を間違うと、同じビル上の点があるところは上昇し、別のところは沈下し、といった具合につじつまがあわなくなってしまいます。
そこでNECは、同じ物体(剛体)からの反射点は、(1)近い位置にあることが期待できる、(2)反射点の変位も似ている、という2つの条件を満たすようにクラスタリングすることにより、反射点を物体ごとに対応させることに成功しました。
あとは、物体ごとにクラスタリングした反射点の集合体と地図情報とを対応させることで、ビルや道路などの変位がわかるというわけです。
この結果、都市部の水準点の地盤沈下や隆起について、従来の山間部向けのクラスタリング技術に比べた結果、
誤差が約40%も低減
されたとのことです。
合成開口レーダーによる地上の変位計測手法は、最近、活発に開発されており、地上型レーダーを使った法面変位の計測(安藤ハザマ)、衛星レーダーを使ったシールドトンネル現場の沈下計測(奥村組)、衛星レーダーを使った地下工事などの変動モニタリングサービス(パスコ)などが発表されています。