住宅CAD、制震壁にも対応!京大が地震時の住宅倒壊解析ソフトを無料公開
2018年7月18日

管理人のイエイリです。

以前、国土技術政策総合研究所(以下、国総研)のウェブサイトでは、木造住宅が地震動でどのように倒壊するのかを解析するソフトウェア「wallstat(ウォールスタット)」が公開されていました。

木造住宅の壁や金物が、地震動によって損傷を受けていく過程や、建物が傾いたり倒れたりする状況を、まるで実写フィルムのようにリアルに再現するソフトです。

当サイトでも、このソフトがFacebookなどで注目され始めたころ(2012年12月11日付の記事)や、複数の住宅を同時に解析できる機能が搭載された「ver3」の公開時(2015年6月16日付の記事)に、紹介させていただきました。

wallstatの機能。右端は開発者の中川貴文氏(以下の資料:中川貴文氏)

wallstatの機能。右端は開発者の中川貴文氏(以下の資料:中川貴文氏)

壁などの損傷や倒壊過程がリアルにシミレーションできる

壁などの損傷や倒壊過程がリアルにシミレーションできる

そして、このソフトの最新版である「wallstat ver.4」が2018年7月4日に無料公開されました。そのアドレスは

ナ、ナ、ナ、ナント、

京都大学のウェブサイト

だったのです。

というのも、開発者の中川貴文氏が、2018年5月から京都大学生存圏研究所の准教授に就任したからです。それから2カ月ほどで京大にサイトを立ち上げ、最新版ソフトを公開しました。

そして中川氏は、2018年6月18日に発生した大阪府北部地震の地震動による解析例も公開しています。京大に移籍後のスピーディーな情報公開はさすがです。

今回の最新版では、3つの新機能が追加されました。1つめの機能は、市販の制震装置を付けたときの効果を検証できるように、3種類の制震装置をモデル化できるようにしたことです。

wallstatで再現できるようになった3種類の制震装置

wallstatで再現できるようになった3種類の制震装置

2つめは住宅用CADとのデータ連携機能の強化です。前バージョンではプレカットCADとのデータ交換に使う「CEDXM(シーデクセマ)」というフォーマットを使って、部材や耐力壁の情報をインポートできるようになりました。

今回はさらに屋根の形や接合部の金物の情報も取り込めるようになったので、

CADデータを一発変換

して、wallstatで解析できるようになりました。

3つめは、鉄筋コンクリート造や鋼構造のビルなどに使われている「プッシュオーバー解析」を、住宅の設計でも簡単に行えるようにしたことです。

この手法は、構造物モデルに静的な地震力をじわじわと加えていき、建物が壊れるまでの「終局性能」を評価する方法です。

wallstatには、実物大振動台で行われた実験結果や数値解析結果など、地震時の木造住宅の挙動についての多くの知見が盛り込まれています。

実物大振動台の実験結果とwallstatによる解析結果の比較。非常によく一致しているのには驚く

実物大振動台の実験結果とwallstatによる解析結果の比較。非常によく一致しているのには驚く

設計者にも使いやすいインターフェース

設計者にも使いやすいインターフェース

これだけの機能にもかかわらず、ユーザーフレンドリーなモデリング機能や住宅CADとのデータ連携機能で設計者にも使いやすく、しかも無料で公開されているのはありがたいことですね。

工務店や建築設計者も、「これから建てる住宅の耐震性能検証」や「耐震補強によるビフォー・アフター」などのプレゼンに使ってみてはいかがでしょうか。

(Visited 8 times, 1 visits today)

Translate »