管理人のイエイリです。
コンピューターで橋梁の構造解析をする場合、これまでは複雑な形状を持つ橋桁や橋脚をシンプルな梁部材に置き換え、簡略化したモデルで計算するのが常識でした。
その理由は、コンピューターの容量に制約があること。橋に作用する荷重と橋の変形を連立方程式によって解く際、変数を計算可能な範囲まで減らす必要があったのです。
ところが、この常識はコンピューターの進化により覆されようとしています。
阪神高速道路と東芝はこのほど、阪神高速道路5号湾岸線東神戸大橋を、リアルな形のまま3Dモデル化し、走行する車両によって生じる橋の変形を解くことに成功しました。
この超大規模解析で解いた変数の数は、
ナ、ナ、ナ、ナント、
約5億自由度
にもなるのです。(東芝のプレスリリースはこちら)
3Dモデルは8000万個の点で構成され、各点が3方向の変位と回転による6自由度を持っているため、8000万点×6自由度=4億8000万自由度となるわけです。
従来のシンプルな解析モデルに比べると、構造のどこに応力集中などの危険箇所があるかを特定しやすいというメリットがあります。
この解析技術は、現実の橋梁をコンピューター上で3Dモデルで忠実に再現した
橋梁デジタルツイン
による維持管理を実現するために開発されたものです。
阪神高速と東芝は2017年12月から橋梁デジタルツインの実現に向けて超大規模解析技術に関する共同研究を開始しました。
東芝が電子機器などの研究・設計解析でつちかった構造解析技術と、阪神高速の橋梁維持管理ノウハウを組み合わせて、東神戸大橋の2次元図面から3次元モデルをスピーディーに構築する技術も開発しました。
経年劣化状況の診断や維持管理業務の効率化、災害時の橋の状態把握などを、橋梁デジタルツインとコンピューターの力によって実現することが可能になります。
今後は解析結果を、実橋で行っている加速度計や変位計、風速計などによる実測結果と比較して解析モデルの有効性を検証します。さらに風や車両の走行による振動や、日照による温度変化で生じる伸びなどの解析機能も拡充していくとのことです。
しかし、5億自由度もの解析というのには驚きました。静的解析だけでなく、どうやら動的解析も行われているようですね。
この研究の詳細は、本日(2018年8月30日)、北海道大学で開催されている土木学会で発表されるそうです。学会に参加中の皆さん、ぜひ聞いてみてくださいね。