管理人のイエイリです。
橋桁などの構造物が、設計通りの形や寸法でできているのかを確認する出来形管理は、今でも昔ながらの作業が多く残っています。
例えば、施工管理者が2人1組となり、メジャーを使って各部の寸法を測って記録したり、その様子を写真に記録したりと、大変な負担です。
そこで三井住友建設は、橋梁の出来形検測を大幅に効率化する「出来形検測システム」を開発しました。
橋の断面を
ナ、ナ、ナ、ナント、
3Dレーザースキャナー
で計測し、その点群データから橋梁の断面形状を3次元CADデータとして出力してくれるのです。寸法測定精度もメジャーで採寸したものと同レベルです。(三井住友建設のリリースはこちら)
このデータをクラウド上で管理すると、発注者を含む工事関係者間で情報共有が図れるとともに、施工管理の記録となる出来形検測調書にも出力できます。
無数の3次元座標からなる点群データを使って、構造物の計測を行うのは、3Dデータを扱える熟練技術者が必要でした。
そこで同社は、エリジオンの大規模点群データ処理ソフト「InfiPoints」を使って、断面を自動抽出する機能を独自開発しました。
三井住友建設では、施工中の橋梁現場で従来の作業方法と、出来形検測システムを使った作業とで比較したところ、構造物1断面当たりの出来形検測にかかる施工管理者ののべ拘束時間は、
45分が20分に短縮
され、この作業の生産性が2倍以上に向上したことが確認できました。
今後は新設の構造物だけでなく、図面が残っていない既存構造物の図面作成やコンクリート工場で作られる製品の検測などにも展開していくとのことです。
三井住友建設では、橋梁建設を一元的に管理する「SMC-Bridge」というプラットフォームを開発しており、今回の出来形検測システムもその一部となります。
そして国土交通省が推進する「i-Construction」の橋梁版である「i-Bridge」実現のため、同社では「SMC-Bridge」をさらに拡充していく方針です。
建設業のIT化は、巨大で重い構造物の取り扱い技術がないと実際に使えるものにはなりません。こうした地道な開発があってこそ、現場で使えるITが誕生するのだと思います。
そして、その技術は簡単にまねすることが難しく、差別化戦略でも大きな力を発揮しそうです。