管理人のイエイリです。
コンクリートダムの施工では、数十万m3という膨大な量のコンクリートを打設しながら堤体を立ち上げていきます。
現場にはバッチャープラントがあり、そこで製造された生コンは運搬台車でバケットに積み込み、ケーブルクレーンのオペレーターが所定の位置までバケットを移動させて投下する、という作業が延々と繰り返されることになります。
清水建設はこのコンクリートの製造から運搬、打設に至るまでの一連の作業を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
完全自動化
する「ダムコンクリート自動打設システム」を開発したのです。(清水建設のプレスリリースはこちら)
施工管理者の操作は、ケープルクレーンの目的地となる打設位置の3次元座標や、コンクリートの配合種別などのデータを入力し、作業開始を指示するだけ。
するとシステムが稼働して、骨材の貯蔵設備やバッチャープラント、トランスファー(運搬台車)、コンクリートバケット、軌索式ケーブルクレーンなどの設備が連動して、一連の作業を完全自動で繰り返します。
施工管理者が作業開始を指示すると、バッチャープラントがコンクリートの配合に応じて骨材やセメント、水などの材料を計量して練り混ぜ、トランスファーカーに積み込みます。
するとトランスファーカーが移動し、コンクリートをバケットに積み替えます。そして最後に、軌索式ケーブルクレーンがバケットを打設位置まで運び、コンクリートを投下します。
バッチャープラントへの材料供給もシステムが自動管理し、プラント内の骨材量が不足すると骨材貯蔵設備から供給するというところまで自動化されています。
各設備からは動作信号がシステムに送られ、コンクリート打設の進ちょく状況は、リアルタイムに管理画面やタブレット端末ビジュアルで確認できます。
全自動化のポイントは、ケーブルクレーンによるバケット位置の3次元制御でした。ケーブルクレーンは下図のように、「走行トロリー」と「横行トロリー」を組み合わせて三角形の範囲内でバケットを移動させます。
そこでクレーンの操作制御情報と、バケットの3次元位置情報を
連動させる仕組み
を構築し、全自動化に成功しました。
このシステムは、岩手県盛岡市内で清水建設・鴻池組・平野組特定共同企業体が建設中の重力式コンクリートダム、簗川ダム(堤高77.2m、堤頂長249.0m、堤体積22万8500m3。発注者:岩手県盛岡広域振興局)の現場で、2019年3月末から稼働を開始する予定です。
2本のケーブルで位置を調整するケーブルクレーンの動きは、ガントリークレーンのように直交するXY座標での制御とは異なるうえ、たわみなどの要素もあって難しそうです。それが、操作盤で座標を入れるだけでコントロールできるとは、すばらしい技術ですね。
コンクリートダムの堤体工事で、コンクリート打設は総工費の約6割を占めます。これが自動化できることで、大幅な生産性向上につながります。