管理人のイエイリです。
オランダではなぜか、3Dプリンターで実物の建物や橋などを造る産業が発達し、“建設界の3Dプリンター王国”としての地位が確固たるものになりつつあるようです。
2017年には世界初のコンクリート自転車橋が建設され、2018年は世界初の3Dプリンターによる鋼橋の造形が完了し、3Dプリンターによる建物などの設計・施工をソリューション化したサイビー・コンストラクション(CyBe Construction)という企業も登場しています。
そして、またまた新しい3Dプリンター施工会社が注目を集めつつあります。ベルティコ(VERTICO)という設立から1年ほどのベンチャー企業です。
ナ、ナ、ナ、ナント、
橋やカヌー、彫刻
まで、幅広いものを3Dコンクリートプリンターで造っているのです。
コンクリートカヌーの造形は失敗も多かったようですが、同社のウェブサイトでは、楽しそうにコンクリートカヌーを造る過程の動画や、展覧会で展示されている彫刻の記事などが紹介されています。
また、2019年1月15日付けの当ブログ記事で、ベルギーのゲント大学が橋桁断面を最適化した橋梁を造ったというニュースを紹介しましたが、この橋を造形したのもベルティコだったのです。
「これまで不可能だった設計や施工を可能にする3Dプリント界のパイオニア」を自負する同社は、数人の若いスタッフにより、次々と新技術を開発しているようです。
例えば、3Dデザインソフトの「Rheinoceros(ライノセラス)」と「Grasshopper(グラスホッパー)」によって、3Dコンクリートプリンターでの造形に使う「Gコード」を自動作成するツールを開発して無料公開したり、展示会場などで実演できる「モバイルコンクリートプリンター」や、研究室用の「コンパクトR&Dプリンター」を開発・販売したりしています。
そして、今後、3Dプリンターによる施工が増えるにつれ、問題になる施工管理についても研究を進めているようです。
3Dプリンターで造った建物や構造物は、型枠を使わないのでどうしても造形精度が悪くなりがちですが、造形物を
3Dレーザースキャナー
で計測し、取得した点群データを設計時の3Dモデルと比較することで、出来形の品質管理を行う研究についての短い記事がこのほど発表されていました。
最近は各国で大量のペットボトルゴミの処理が問題になっていますが、同社ではペットボトルを材料にして建物を造形する研究も進めているようです。資源を何度もリサイクルする「ゆりかごから、ゆりかごへ(Cradle
to Cradle)」というコンセプトに基づいた建設生産システムです。
3Dプリンターによる施工は、建設業の生産性を高めるだけでなく、省資源化や地球環境問題の解決など、幅広い効果が期待できそうですね。