管理人のイエイリです。
2019年5月21日~23日、米国ロサンゼルスのアナハイムコンベンションセンターで開催された「SPAR3D」と「AEC NEXT」の合同イベントのセミナーで、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用した工事の生産性がいかに早いかを実験した動画が話題になりました。
米国・ボストンにあるウェントワース工科大学(Wentworth Institute of Technology)のジョン・クリブス(John Cribbs)助教が、「建設サプライチェーンの最適化についての研究結果」(原題:Results of An AEC Supply Chain Optimization)と題する講演の中で紹介したYouTube動画(Virtual Construction VS Traditional Construction)です。
テーブル上に障害物を避けて配管するスピードや人工(にんく)を、BIMとプレハブ工法を使う「チーム1」(以下、BIMチーム)と、現場で材料を加工する在来工法を使った「チーム2」(以下、在来工法チーム)で競うものです。
BIMチームには全体の完成図と配管のプレハブ配管の単品図、在来工法チームには配管の始点と終点の位置、障害物となる“躯体”の位置と大きさを表した図が渡されました。
BIMチームに渡された図面 | |
在来工法チームに渡された図面 | |
「よーい、ドン」でスタートした工事ですが、在来工法チームは2人のメンバーを配置したのに対し、BIMチームは
ナ、ナ、ナ、ナント、
たった1人
しか、現場に立っていませんでした。
在来工法チームは早速、図面を広げてどの位置に配管を通すか、材料の配管はどれくらい発注するかなどの検討を始めます。
一方、BIMチームは「そろそろプレハブ配管が届く時間だ。安全具でも着けておくか」と余裕です。そうしているうちに開始から1分ちょっとでプレハブ配管が「ジャスト・イン・タイム」で届きました。
実はこれらの配管は、事前にもう一人のメンバーが別室で作っていたものです。各配管には図面にあったラベルが張ってあります。現場のメンバーは1分ちょっとで所定の順序に配管を並べ、仮組みしていきます。
あとはBIMチームが圧倒的な生産性の高さを発揮します。仮組みした配管の位置を正確に調整し、接続金具を締めて配管をテーブル上に固定していきます。
そして開始から9分ちょっとで
「完成したぞ」と宣言
しました。一方、在来工法チームはこの時点でも発注した材料が届いていません。
その後、在来工法チームはメンバーを3人に増やして施工を続けますが、開始から35分で「タイムアップ」が告げられました。このとき、在来工法チームの工事進ちょく率は50%ほどでした。
BIMチームは事前に配管のプレハブ加工を行っていたので、早く完成するのは当然ですが、問題は工事全体にようした人工です。
BIMチームは、BIMモデルの作成に10分、単品図の作製に5分、プレハブ加工に18分、現場での設置に9分かかり、それぞれの作業を1人で行ったので全体では42分・人となります。
一方、在来工法チームはタイムアップまで工事は50%しか完成していないにもかかわらず、のべ95分・人の人工がかかりました。完成までだと、さらに多くの人工がかかるでしょう。
Virtual Construction vs Traditional Construction(YouTubeより)
クリブス氏は研究の結果として、「BIMのワークフローで施工段階での生産性を高めるためには、正確で信頼できる部材の形状と寸法を決めておくことが最も重要だ」としています。
現場に入る前、BIMで詳細な部分まで決めておくのは面倒くさいという意見もありそうですが、そのフロントローディング(業務の前倒し)効果は、非常に大きいことがこの実験からもよくわかりますね。