管理人のイエイリです。
建築家・菊竹清訓氏が設計した「旧都城市民会館」は、惜しまれつつも2019年夏から解体工事が始まっています。
せめて、3Dモデルでこのメタボリズムの名建築を残せないかと、gluon(本社:東京都目黒区)とKUMONOS(本社:大阪府箕面市)が行ったクラウドファンディングには、目標金額の50万円を大幅に上回る173万2500円が272人から集まり、8月14日に締め切られました。
そして、5000円以上の寄付者を対象にしたトークセッション「建築のデジタルアーカイブ」が8月29日の夜、東京芸術大学の上のキャンパスで行われたのです。イエイリも気持ちだけですが、5000円寄付させていただいたので行ってきました。
都城市の許可を取り付けて、この建物を内外から3Dレーザースキャナーや、ドローンとデジタルカメラによる写真によって計測したのは、解体工事の直前でした。
ナ、ナ、ナ、ナント、
スマホから大雨警報
などが鳴り響く状況下での過酷な計測作業だったそうです。
計測は建物の外側より、むしろ内側の方が大変だったそうです。というのは、滝のような雨もりがあったり、木製のキャットウォークが腐りかけていたりしたからです。
点群計測には、3Dレーザースキャナーを4台、持ち込み、延べ350地点から計測しました。水には弱い機械ので、計測時には大変な気を使ったそうです。
また、ドローンによる計測は天候が回復した後、あらためて行いました。ドローンとデジタルカメラによって撮影した写真の枚数は、約1万枚にも上りました。
こうした苦労のおかげで、3Dレーザースキャナーと写真によるフォトグラメトリーによって作成した点群データは、建物の内外を合わせて100GBを超える巨大なものになりました。
建物の内外を計測して作った点群データを輪切りにしてみると、いろいろなことがわかってきました。現在の劇場は外側と内側に2つの建物がある“入れ子構造”になっているのが一般的です。
ところが、予算をギリギリまで削減して建設した旧都城市民会館は、一つの建物を天井板で上下に仕切ることにより、この機能を実現していたのです。
例えば、舞台の上には「どんちょう」がつり下げられていますが、点群の断面を見てみると、一番高い部分を使ってどんちょうがそのまま上に引き上げられる設計になっていることがわかります。
また、映写技師や照明技師などが舞台をコントロールする制御室は、天井板の裏のスペースを使って、つり下げるように設置されていたことがわかります。
このほか、客席下のスラブ構造や屋根の厚さなども、点群データを切ってみればよくわかります。
今回のクラウドファンディングで、5万円の寄付をした人には、この高精細の生点群データがプレゼントされます。ただ、サイズが大きいので、寄付した人のパソコンのスペックに応じて、適宜、“間引き”したデータを用意してくれるそうです。
ちなみに、もし、この点群データ化をKUMONOSが一般の業務として請け負って場合、
料金は約400万円
とのことです。それがわずか5万円で手に入るとは、超おトクですね。
クラウドファンディングの終了までに、5万円を寄付した人は12人います。もう、締め切りは過ぎましたが「追加申し込みもOK」とのことですので、生点群データが欲しくなった方は、gluonやKUMONOSに問い合わせてみてはいかがでしょうか。
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