大建設計ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)をプロポーザルや実施設計、さらに建物の通風性能を高めるための流体解析(CFD)まで、様々な業務に活用している。同社デザインセンターの設計実務者が日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)の省スペース型ワークステーション「HP Z220 SFF(以下、Z220 SFF)」の性能や使い勝手を徹底検証した。
BIMを活用する大建設計でZ220を検証
Z220 SFFワークステーションをテストしたのは、大建設計のデザインセンターだ。同社ではBIMが普及するはるか昔の1980年代から日影シミュレーションなどで3次元設計を活用してきた。
「以前から曲面や曲線が多い建物の設計は、3次元で設計した方が早いという考え方で、様々な3Dソフトを開発し、活用してきました」と建設計技術部門デザインセンターの井上久誉統括部長は説明する。
大建設計は東京のほか名古屋、大阪など全国に10拠点を持つ組織設計事務所。社員約300人のうち9割が技術者だ。民間や公共の建物全般やプラント関係の建築物などを強みとする。現在は、多くのBIMソフトを駆使し、建物の企画から実施設計、そしてプロポーザルなど幅広い業務に使用している。
同社の東京ビルには約150台のパソコンやワークステーションが稼働している。BIMによる設計や高画質レンダリング、流体解析などの業務には高性能のワークステーションを導入している。
「かつては構造計算や日影解析のソフトも自社開発し、市販していた時期もあります」(井上氏)。そのため、ソフトやハードについてはユーザーだけでなく、開発者としての視点もある。当然、パソコンやワークステーションを評価する目は厳しいのだ。
3台のワークステーションと徹底比較
今回の検証ではZ220 SFFと、同社が既に導入済みの3台のワークステーションと性能を比較した。他のマシンはZ400、Z600などのワークステーションだ。2年~1年少し前に導入したものだが、いずれも性能は高い。
メモリー容量は8GBが標準で12GBのものもある。また、パフォーマンスを高めるため、2台はSSDを搭載している。そして価格は他のマシンが約22万~44万円(税別。以下同じ)だったのに対し、Z220 SFFは16万7400円(※)と最も低価格だった。
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今回、使用したZ220 SFFはインテル® Xeon® プロセッサー搭載の省スペース型でHDD搭載、メモリー8GBの機種だった。比較したのは、OSの起動時間やサーバーに保存されたBIMファイルを開く時間、平面表示から3D表示への切り替え時間などだ。Z220 SFFは、他のマシンに比べても遜色(そんしょく)ない性能を示した。
ログインまでの立ち上がり時間はSSD搭載機種とほぼ同じ。サーバー上にあるBIMファイルを開く時間は最も速かった。また、3D表示と平面図表示を相互にビューを切り替える操作は、最も速かった。
このデータから、流体解析や高画質レンダリングを頻繁に行うヘビーユーザーにはZ600をはじめとするハイスペックマシン、BIMでモデリングを行う設計者にはエントリーマシンのZ220 SFFと、用途に応じてマシンを使い分けることで社内のコストパフォーマンスを最大化できることが分かる。
コンパクトだが高いパフォーマンス
Z220 SFFはミニタワー型のワークステーションに比べて、体積がわずか3分の1程度だ。しかし、最新のプロセッサーやグラフィックスに対応し、ワークステーションとしての高いパフォーマンスを発揮する。
同社のワークステーションはミニタワー型などが主流だ。そのため机の下にマシンを設置して使う設計者も多い。「オフィスにこれだけたくさんのパソコンやワークステーションがあると、マシンからの発熱も少ない方がいいですね」と言うのは、デザインセンターの堀桂輔氏だ。
Z220 SFFのコンパクトなボディーの内部にはCPUやメモリー、グラフィックボードなどを搭載したマザーボードやハードディスクドライブ、電源などが高密度で配置されている。しかし、内部に気流がスムーズに流れる設計のため効率的に冷却できるようになっている。
それはボディーを触ってみると実感できる。運転中でも表面が熱くならないからだ。机の上にマシンを置いた場合でも、ボディーからの輻射熱は全く気にならない。また、ファンの音も静かなので、デザインを創造する設計者のクリエーティブ作業を妨げない。
150台すべてが日本HPのマシン
大建設計の東京ビルにある約150台のパソコンやワークステーションは、実はすべて日本HPのマシンなのだ。
マシンのサポートなどを担当する同社経営管理部の柏山崇氏は「4年に1度の割合で社内のハードがすべて新機種に更新されるように定期的に入れ替えています。ワークステーションではZ400やZ600などを使っており、今度はZ420も導入予定です。管理を効率化するため、同一機種、同一スペックのものをまとめて導入するようにしています」と説明する。
同社では、社内外で開催されるBIMのトレーニングに設計者が参加し、業務を効率化するための活用を目指している。
「例えば、1万㎡の建物の意匠と構造をBIMモデルで作ると、データが重すぎて動かない場合もあります。無理に意匠、構造、設備をすべてBIMで行おうとせず、あくまでも業務を効率化できる方法でのBIM活用を目指しています」と井上氏は説明する。
この言葉には3次元設計を長い間、実務で活用してきた大建設計ならではの経験と実績が裏打ちされている。今後、BIMの活用がさらに普及し、設計から施工、維持管理まで活用範囲が広がったとしても、同社のBIM活用ポリシーは変わらない。それを日本HPのマシンが支えているのだ。
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