ユーザーとオートデスクが協力して、日本仕様への取組を実現!
断面リスト作成機能 + 構造設計ソフト「SS3」 と「Autodesk Revit」が直結!
2014年2月26日

一貫構造計算ソフト「SS3」と、オートデスクのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト「Autodesk Revit」の間でデータの双方向連携を行う「SS3 Link」と、BIMモデルから日本独特の断面リストを自動的に作る「RC断面リスト作成」という2つのエクステンションアプリがこのほど完成し、公開された。Revitの構造設計ユーザーとオートデスクの密接な協力から、日本独自の機能が生まれた。

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日本独自のエクステンション「SS3 Link」と「RC断面リスト作成」の完成を喜ぶRUG構造部会メンバーの大越潤氏(大成建設)

   SS3とRevitの双方向連携が実現

2014年2月14日の午後、東京・晴海のオートデスク本社の会議室には同社のBIMソフト「Autodesk Revit」を構造設計分野で活用する実務者からなる「Revit User Group Japan構造部会(以下、RUG構造部会)のメンバーが集まり、ユニオンシステムの一貫構造設計ソフト「SS3」と、「Autodesk Revit」の双方向連携機能、及び断面リスト自動作成機能の最終確認が行われた。

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オートデスク本社の会議室に集まったRUG構造部会のメンバーとオートデスクの梶浦久尚氏

オートデスクのエンジニアがAutodesk Revitの画面を立ち上げると、メニューバーには「SS3 Link」というコマンドのアイコンが表示されている。SS3とRevitを連携させる新機能だ。このコマンドを操作すると、何もなかったRevitの画面に、SS3で計算した建物の構造モデルが数十秒で読み込まれ、5階建てビルの構造モデルが表示された。

Revitの画面には、さらに「RC断面リスト」というコマンド群が表示されている。このコマンドを操作すると、今度は各階ごとの柱や梁の断面リストが自動作成されたのだ。

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Revitのメニュー画面にある「SS Link」のコマンドを操作し、SS3から読み込む構造部材の種類を選んで「OK」ボタンをクリックする
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すると、何もなかったRevitの画面に5階建てビルの構造モデルが読み込まれた
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さらにRevitの「RC断面リスト」コマンドにより自動作成された各階ごとの柱の断面リスト
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自動作成された柱の梁の断面リスト

上記のプレゼンは、SS3からRevitへのデータ連携の流れを説明するものだ。さらにSS3 Linkのコマンドは逆方向の連携機能も持っており、Revitで作成した構造モデルをSS3に読み込んで一貫構造設計を行うことができる。

一貫構造設計ソフトと構造設計用BIMソフトのデータが双方向で連携できるようになったことで、設計と構造計算の間のフィードバックによる品質の向上や、データ連携による整合性の確保や作業の省力化、そして生産性向上など様々なメリットが生まれた。

両エクステンションの登場によって、構造設計業務における本格的なBIMの活用がついに可能になったと言っても過言ではない。

   RUG構造部会が仕様を決め、オートデスクが開発を援助

日本の建築業界ではBIMがかなり普及してきたものの、構造設計分野ではBIMの活用が十分とはいえなかった。その理由は、BIMソフトと一貫構造設計ソフトとの間で、データの双方向連携を十分に行うことができなかった事が要因の一つであったからだ。

「RevitとSS3の双方向データ連携と断面リストの自動作成という2つのツールが完成したことで、構造設計業務のスピードにBIMのワークフローが追いつくようになり、BIMの本格活用が可能になる」とRUG構造部会の飯島憲一氏(安井建築設計事務所)は語る。

「SS3 Link」と「RC断面リスト作成」の原形となったシステムは、オートデスクとユニオンシステムが2012年4月に発表した。

しかし、データ交換できる部材が柱と大梁だけだったため、RUG構造部会では2次開発として小梁や床、壁、開口部、ブレースについてもデータ交換できるようにオートデスクに提言した。

断面リストの自動作成機能もBIMモデルを切断した断面を表示する仕組みになっていたため、レスポンスが遅いなどの問題があった。そこでRUG構造部会は有志メンバーによる自主開発も視野に入れて、これらの機能の細かい仕様作成まで行った。

RUG構造部会がユーザー主導による開発を行っていた2013年2月、オートデスクはこの取り組みに対する支援を決定。以後、RUG構造部会とオートデスクは連携しながら、仕様の調整や開発テストを繰り返した。

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「SS3 Link」の機能追加を提言するとともに、「RC断面リスト作成」の仕様を決めたRUG構造部会のメンバー
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RUG構造部会リーダーの青木氏(右)とオートデスク側の窓口となった梶浦氏(左)

その結果、構造設計の実務者のニーズを大幅に盛り込んだ断面リストの自動作成を行う「RC断面リスト作成」機能が実現し、加えてSS3とRevitの双方向連携を行う「SS3
Link」の2つのRevit の構造向けエクステンション(アドオンソフト)による新たなワークフローが完成したのだ。

「エクステンションの開発が実現した裏には、SS3を開発・販売するユニオンシステムの協力も不可欠だった」と青木氏は振り返る。

「断面リストの作成方法はBIMモデルを切断して作る方式から、Revitの鉄筋仕様などの属性情報を利用して作図する方式に変えた。その結果、以前に比べて動作がずっと早くなり、実用的になる。そして、断面リストは標準書式を定めるだけでなく、各社の書式に合わせて細かくカスタマイズできるように配慮した」とRUG構造部会メンバーの佐脇宗生氏(清水建設)は語る。

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断面リストの書式設定画面。各社の書式に合わせて細かくカスタマイズできるようにした

   ポーランドの開発責任者とも直接交流

両エクステンションは今月から、Autodesk Building Design SuiteとAutodesk Revit Structureのサブスクリプションユーザー向けに、「Autodesk
Exchange」サイトで無料ダウンロードできるようになっている。

今回のSS3 Link、RC断面リスト作成の両エクステンションを開発する過程では、RUG構造部会メンバーと、ポーランドのクラクフにいるオートデスクのRevitの
構造設計開発責任者が直接、意見交換を行った。

まずポーランドからRevitの構造設計開発責任者が来日し、RUG構造部会のメンバーと打合せを行い、日本の建設業界の実態やニーズを把握する機会を持った。その中でRUG構造部会から日本における構造設計業務の厳しい納期や業務のワークフローなどの背景を説明し、Revit
に盛り込んでほしい新機能についての要望を訴えた。

その後は電話会議、テレビ会議、及びメールなどで打合せを重ね、最終的にはRUG構造部会から大越潤氏(大成建設)と飯島憲一氏(安井建築設計事務所)がポーランドに飛び、再度状況確認と開発陣との打合せを持った。

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Autodesk Exchangeのウェブサイトで、サブスクリプションユーザー向けに無償公開されている「SS3 Link」(左)と「RC断面リスト作成」(右)

「以前からRevit に対する構造設計向け新機能などの要望は、毎年、『ウイッシュリスト』という書式にまとめてオートデスクに提出し、開発責任者の判断を待つという方法だった。今回、開発責任者と直接交流ができたことで、どこまで開発が可能かや、部材の勝ち・負けを自動調整する優先順位をつけるアドオンソフトなどの情報を知ることができたのは収穫だった」と大越潤氏(大成建設)は語る。

オートデスクの開発責任者の交流をきっかけに、RUG構造部会は、世界中からRevitのエキスパートユーザが集まって行われる新機能確認国際評価会議である「Revit
Gunslinger」にも2013年から参加し、日本のユーザの意見を反映できるようになった。

RUG構造部会リーダー青木隆広氏(日立建設設計)は「当初の構想から実現まで約3年かかった。今回、開発した2つのエクステンションは実務で活用しながら、機能などをブラッシュアップしていきたい。今回の開発経験を生かし、次回はもっとスピーディーに新機能を開発していきたい」と今後の抱負を語った。

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「SS3 Link」と「RC断面リスト作成」が完成した今、RUG構造部会のメンバーとオートデスクは次の課題に向かってさらに歩み続けていく。オートデスク本社にて

写真上段左から、オートデスク 梶浦氏、安井建築設計事務所 飯島氏、大成建設 大越氏、千代田テクノエース 糸永氏、清水建設 佐脇氏、日立建設設計青木氏、ユニオンシステム 奥平氏、竹中工務店 吉田氏、下段左から、安藤・間 濱田 氏、新日鉄住金エンジニアリング 遠塚氏、新日鉄住金エンジニアリング 松陰氏、大塚商会 飯田氏

【問い合わせ】
Autodesk Revit日本公式Facebook
autodeskrevitjapan@facebook.com
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