CG映像と実写を正確にマッチング
映画の舞台作りで活躍するレーザースキャナー(FARO)
2014年7月28日

「FARO Laser Scanner Focus3Dは2013年に導入したばかりですが、2014年の5月現在で既に5本の作品に使いました。CGのモデリングや、現場で撮影した映像を他の映像と合体させたり、コンピューター・グラフィックスの動画と組み合わせたりする業務には、もはや欠かせません」と語るのは、映画制作業界で40数年のキャリアを誇るピクチャーエレメントの大屋哲男代表取締役です。

映画制作の舞台作りで活躍するFARO Laser Scanner Focus3D

映画制作の舞台作りで活躍するFARO Laser Scanner Focus3D

   映画のVFXシーンで欠かせないレーザースキャニング

東京・世田谷の高級住宅街に隣接する東宝スタジオ内にある株式会社ピクチャーエレメント(以下、ピクチャーエレメント)は、映画やテレビドラマ、CMなどの映像制作で、現場で撮影した映像にコンピューター・グラフィックス(CG)を組み合わせるなどのビジュアル・エフェクツ(VFX)を施すポストプロダクションの業務を主体としています。

「FARO Laser Scanner Focus3Dは2013年に導入したばかりですが、2014年の5月現在で既に5本の作品に使いました。CGのモデリングや、現場で撮影した映像を他の映像と合体させたり、コンピューター・グラフィックスの動画と組み合わせたりする業務には、もはや欠かせません」と語るのは、映画制作業界で40数年のキャリアを誇るピクチャーエレメントの大屋哲男代表取締役です。

「映画『魔女の宅急便』では約20カットの制作にFocus3Dを使いました。また現在制作中の『MIRACLEデビクロくんの恋と魔法』では、映画の舞台となる神戸のフルーツフラワーパーク全体をスキャンして3Dモデルを作りました」と、ピクチャーエレメントのプロダクションマネージャー、原田俊弥氏は説明します。

   さまざまな映像制作に使われる点群データ

Focus3Dで現場をスキャンしたデータは、様々な映像制作業務に活用されています。「『魔女の宅急便』では、『ジジ』というCGの黒猫が登場し、実写のテーブルの上や石段を歩いたり、飛び降りたりするシーンがあります。ここでは実写とCGがずれないようにマッチングさせるために点群データを使いました。CGと合わせるために現場を計測するのですが、石段のような曲面は手で測ることができません。Focus3DでスキャンすればCGの黒猫と実写をぴったり合わせることができます」と、ピクチャーエレメントのDIT/VFXスーパーバイザー、高橋直太郎氏は語ります。

「また、『MIRACLE』では、クリスマスのイルミネーションが輝くフルーツフラワーパークのシーンが登場します。パーク内の建物や公園、噴水などを含めてすべてFocus3Dでスキャンし、VFXでのプロジェクションマッピング制作のための3Dモデルを作りました。」(原田氏)

フルーツフラワーパークには、平面形状がコの字形になった建物もあります。そこで建物の周囲12カ所からFocus3Dでスキャンし、後で1つの点群データにつなぎました。このほかテラスから敷地全体、噴水を中心とした4カ所でスキャンし、合計18個の点群データを作成しました。Focus3Dは小型、軽量なので現場でも手軽に持ち運びができ、短時間で作業を終えることができます。「使用したのは『Focus3D
S120』という機種ですが、120m離れた場所まで計測できるので問題なく作業できました」と原田氏は語ります。

点群データを3Dモデル化する作業には、FARO SCENEと、Geomagic Studioを使っています。

   遠隔地での撮影に備えたカットの検討も

このほか実写版の『進撃の巨人』では、ロケ地となった長崎県の軍艦島をスキャンしました。軍艦島は、かつて炭鉱としてにぎわい、今は無人島となって廃虚と化しているところです。

「この現場は簡単に立ち入ることができず、撮影時間も限られています。複雑な建造物、地形ですので、そのような条件下ではFocus3D以外の方法での記録は考えられません。ロケ時にはどこをどう撮ると決まっておらず、とりあえず全部スキャンしました。その点群データを基にカット割りなどの撮影計画の検討を行ったり、ミニチュアやCGでの再現にデータを使用したりしています」と大屋氏は説明します。

いわば、点群データを3Dの絵コンテとして使っているのです。現場を細部までそっくりそのまま3Dで記録して、いろいろな角度からシーンを検討できるのは、Focus3Dならではのメリットと言えるでしょう。

映画のセットでは撮影のため建物の天井は作らないこともよくあります。そしてポストプロダクションの段階で、CGで作成した天井を映像に合成するのです。静止画ではないので、カメラが動くと3次元的に形状が変化します。そのため、Focus3Dで現場をスキャンしておけば、CGの天井との合成も高精度に行えます。

映画のセットをスキャンして実物と同じ3D CGを作成

映画のセットをスキャンして実物と同じ3D CGを作成

   Focus3Dとの運命的な出会い

今ではピクチャーエレメントのポストプロダクション業務に不可欠な存在となったFocus3Dですが、導入のきっかけはDNA捜査をテーマにした映画『プラチナデータ』の1シーンでした。

「近未来の日本が舞台となったこの映画では、警察の現場検証にレーザースキャナーが使われるシーンが出てきます。セットには小道具としてFocus3Dが持ち込まれていました。われわれ映画関係者はセットよりも、Focus3Dの方に関心がありました。そこで実際に撮影現場をスキャンし、点群データを見たところ、これは使えると導入に踏み切りました」と大屋氏は振り返ります。

『運命の出会い』を果たしたFocus3D S 120は測定距離120m

『運命の出会い』を果たしたFocus3D S 120は測定距離120m

「速く、正確に、簡単に計測したいというのは私たちの課題でした。レーザースキャナーの存在は知っていましたが、大型で2000万円もするような機械はとても導入できません。価格的にも手が届くFocus3Dと出会ったことは、まさに『運命』と言えます。」(大屋氏)。

導入後、半日程度のトレーニングでスキャンによる基本的な計測が行えるようになりました。その後、マーカーと呼ばれる白い球を使って複数の点群同士をつなぐ作業も実務を通じて習得していきました。「マーカーの点群データがはっきり取れていると、付属の点群処理ソフト『SCENE』でマーカーを自動認識し、高精度につないでくれます。何度かスキャンしていくうちに、マーカーの上手な配置方法やスキャンの仕方もだんだんわかってきました。これまでの仕事で失敗したことはありません」と高橋氏は語ります。

   作品の精度や生産性も向上

以前はCGと実写を合成するとき、建物の図面や地図、等高線図などの情報から現場の3Dモデルを作っていました。図面がないときには、写真から推定したデータや、現場をメジャーやレーザー距離計で測ったデータを基にしてCG制作を行っていました。

「しかし、計測精度が悪いため、時間がかかる割には不自然な仕上がりになることも多く、人物が浮いてしまったり、地面にめり込んだりすることもときどきありました。Focus3Dを使い始めてからは、そんなトラブルもなくなりました」(高橋氏)。

また、撮影現場の3Dモデルを作る時間も大幅に短縮できるようになりました。「今ではCGを使わないと映画はできないと言われるくらいCGが多用されています。モデリング時間の短縮や精度の向上は映画制作にとって、とても重要な課題なのです」Focus3Dを本格的に使い始めたピクチャーエレメントは、海外の撮影現場での使用も検討しています。同社にとって、Focus3Dは欠かせない機材になったようです。

【問い合わせ】
ファロージャパン株式会社 (FARO Japan, Inc.)
〒480-1144 愛知県長久手市熊田716
Tel: 052-890-5011 Fax:052-890-5012
Email: japan@faro.com URL: www.faroasia.com/jp
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