第1回ナショナル・レジリエンス・デザインアワード
国土強靱化をテーマにしたコンテストの結果発表(フォーラムエイト)

2015年1月11日

2014年11月21日、東京・品川で開催されたフォーラムエイトデザインフェスティバル2014で国土強靱化をテーマにしたコンテスト、「第1回 ナショナル・レジリエンス・デザインアワード」の結果発表と表彰式が行われた。日ごろ、公開されることが少ない様々な解析やシミュレーションの成果が発表され、その高度な技術には審査員も驚きを隠せない様子だった。

第1回 ナショナル・レジリエンス・デザインアワードの受賞式

第1回 ナショナル・レジリエンス・デザインアワードの受賞式

   国土強靱化を支える解析・シミュレーションを「作品」に

最近のCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)やBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)をはじめとする3D設計ツールの普及や、解析ツールとの連携により、従来は数値の羅列だった解析結果が見える化されるようになってきた。

しかし、構造物や建物の耐震解析や、補強後の構造シミュレーションといった解析・シミュレーション業務は、設計コンペの応募作品などと異なり、通常、発注者だけに報告され、一般に公開される機会は少ない。

そこで、フォーラムエイトは、解析・シミュレーションの取り組みにスポットを当て、国土強靱化を支える様々な解析事例を審査・表彰するコンテスト、「ナショナル・レジリエンス・デザインアワード」を創設。2014年11月21日、東京・品川で第1回の表彰式を行った。

「国土強靱(きょうじん)化に資する具体的な事例と成果を一堂に集め、情報提供および技術研さんの場とすること」が、コンテストの開催趣旨だ。フォーラムエイトの「Engineer’s Studio」や「FEMLEEG」などの有限要素解析ソフト、橋梁や土工などの構造解析、雨水による氾濫(はんらん)などを解析する「UC-1」シリーズ、そして解析支援サービスを使った土木・建築の構造解析や地盤工学、水工学、防災の各分野の解析成果を審査対象とした。

解析やシミュレーションを対象としたコンテストと聞くと、堅苦しい論文審査のようなものを思い浮かべがちだ。しかし、このコンテストは、建築の設計コンペにように解析やシミュレーションの結果を「作品」の域まで高め、わかりやすくプレゼンテーションすることが求められた。

応募者は解析やシミュレーションの結果をわかりやすくA1判のポスターにまとめた上、A4判で3~4枚の報告書、そして入力データと解析結果ファイルを提出しなければならない。このほかアニメーションや動画なども任意で提出できる。

A1判のポスターにまとめられた応募作品

A1判のポスターにまとめられた応募作品

   締め切りまでに17件もの力作が集まる

初めてのコンテストだったにもかかわらず、10月14日の応募締め切りまでにナント、17件もの作品が集まった。審査10月21日には、この中からノミネート作品を選ぶ作品審査会が行われた。

審査を担当したのは、東京都市大学 災害軽減工学研究室 教授の吉川弘道氏(審査委員長)、群馬大学大学院 工学研究科 名誉教授の鵜飼恵三氏、そして芝浦工業大学 工学部土木工学科 都市環境工学研究室 教授の守田優氏だ。

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第1回ナショナル・レジリエンス・デザインアワードの審査員。左から吉川弘道氏(審査委員長)、鵜飼恵三氏、守田優氏

受賞作品を見ると、解析・シミュレーション分野の進化に驚かされるばかりだ。グランプリ賞から順に作品の概要を紹介しよう。

グランプリ●東日設計コンサルタント株式会社
竣工40年を経過した鋼方杖ラーメン橋に対し、新道路橋示方書を適用した耐震照査と補強検討
― 免震ダンパー、座屈拘束ブレース等の中から効果面・経済面として最適工法の適用 ―
使用プログラム : Engineer’s Studio®

グランプリ賞に輝いたのは、東日設計コンサルタントだ。1970年に完成した鋼方杖ラーメン橋(橋長80m)の現況照査を行い、その結果を基に、耐震補強の設計を行った例だ。地震時の降伏ひずみなどを低減させるため、橋を3Dモデル化し、Engineer’s Studioで動的解析を行った。

様々な部材で構成された鋼方杖ラーメン橋は複雑な振動挙動を起こすことが予想されるため、幾何学的非線形と材料非線形を同時に考慮した複合非線形解析を行った。その結果、橋軸方向対策として免震ダンパー、直角方向対策として座屈低減ブレースを対傾構に導入し、あて板などで補強を行った。

 

1970年に完成した鋼方杖ラーメン橋

1970年に完成した鋼方杖ラーメン橋

補強前の解析結果。降伏ひずみが基準を超えている部分が赤く示されている

補強前の解析結果。降伏ひずみが基準を超えている部分が赤く示されている

補強対策

補強対策

補強対策後の解析結果。赤い部分がなくなり、降伏ひずみは基準内に収まっていることが確認された

補強対策後の解析結果。赤い部分がなくなり、降伏ひずみは基準内に収まっていることが確認された

準グランプリ 優秀賞●株式会社横河住金ブリッジ
橋軸直角方向加震時における座屈拘束ブレースの設置効果検討
―桁橋に対する制震ダンパーを用いた補強対策の一提案―
使用プログラム : Engineer’s Studio®

準グランプリを受賞した横河住金ブリッジは、橋梁の固定支承部に橋軸直角方向の地震荷重を受け持つ「座屈拘束ブレース」の効果をEngineer’s Studioで動的非線形解析を行った。

既設橋梁は支承を介して上部工の荷重が直接、橋脚に作用するため、橋脚の下部に道路橋示方書の基準を超える応力が発生していた。

一方、座屈拘束ブレースによる対策後のモデルでは、支承をばね要素で表して橋軸直角方向に可動とし、座屈拘束ブレースのばね要素を追加した。このモデルで動的非線形解析を行った結果、橋脚下部の応力は許容値以下であることがわかり、設置効果を確認できた。

座屈拘束ブレースを設置した固定支承部のモデル

座屈拘束ブレースを設置した固定支承部のモデル

座屈拘束ブレースの設置により、橋脚下部の応力は基準値内に収まることが確認できた

座屈拘束ブレースの設置により、橋脚下部の応力は基準値内に収まることが確認できた

審査員特別賞 環境サスティナブル解析賞●アトリエ・ドン
N邸CFDシミュレーション(N project CFD simulation)

― 住宅設計におけるスマートな熱・風環境流体解析による空調検討とBIM&VR連携 ―

使用プログラム : DesignBuilder、Allplan

3人の審査員の総意により、審査員特別賞を受賞したのはアトリエ・ドンだ。茨城県潮来市郊外に建設される住宅の設計で、大きな吹き抜け空間のあるリビングリームを中心に「DesignBuilder」によるCFD解析(数値熱流体解析)を行った。

その結果を設計にフィードバックすることにより、エアコンの吹き出し口の位置や容量、窓面や間仕切り位置を検討し、快適で利便性の高い室内環境計画や省エネルギー化ができたことが評価された。

このほか、3DモデルデータをBIMソフト「Allplan」に読み込み、パースやアクソメ図を作成したり、UC-win/Roadで隣家からの見え方の検討や景観シミュレーションを行ったり、AR(拡張現実感)システムで現実空間上に住宅の3Dモデルを表示したりと、BIM・VR・ARの連携を行った。

CFD解析の結果を設計にフィードバックし、ドアを設けた例

CFD解析の結果を設計にフィードバックし、ドアを設けた例

BIM・VR・ARの連携により、様々なシミュレーションを行った

BIM・VR・ARの連携により、様々なシミュレーションを行った

審査員特別賞 耐震性能評価賞●日中コンサルタント株式会社
東京都市大学 災害軽減工学研究室 教授 吉川 弘道 氏
アーチ橋における動的解析での耐震性能照査
― 多点入力機能を利用した動的解析事例―
使用プログラム : Engineer’s Studio®

I種地盤とII種地盤をまたぐ3径間単純鋼上路式ローゼ橋(橋長118m)の動的解析をEngineer’s Studioで行った。アーチ橋の両側で地盤条件が異なるため、両岸に振動特性の異なる地震波を多点入力して動的挙動を確認した。この解析手法は、Engineer’s Studioに新たに追加された機能だ。

アーチ橋を構成するアーチや主桁、横桁などの鋼部材はファイバーモデルを使ってモデル化し、橋台は弾塑性梁要素モデルとするなど、精密にモデル化した。

通常の動的解析に比べて、両側で地震動の特性を変えた場合は、アーチ中央が盛り上がるような変形となり、主桁、アーチともにかなりの範囲で損傷していることがわかった。橋台と桁の相対変位が大きくなり、その大きさは橋台の竪壁を貫くほどだった。

多点入力は、左右の地盤が異なる構造物の場合、実地震に近い、より現実的な構造物の設計が可能になる。その一方で、動解モデルを作成する場合は、壁式橋脚や横桁のねじり剛性やピン部材などの結合条件の評価を適切に行う必要があることがわかった。

解析に使用した3径間単純鋼上路式ローゼ橋のモデル

解析に使用した3径間単純鋼上路式ローゼ橋のモデル

解析に使用した2種類の地震動。赤がI種地盤用、緑がII種地盤用

解析に使用した2種類の地震動。赤がI種地盤用、緑がII種地盤用

多点入力による解析結果

多点入力による解析結果

審査員特別賞 地盤工法アセスメント賞●新日本技研株式会社 西部支社
群馬大学大学院 工学研究科 名誉教授 (株)フォーラムエイト 監査役 鵜飼 恵三 氏
堤体内に設置する橋脚の地震時影響解析
― 鞘管構造による遮蔽効果の確認検討―
使用プログラム : 動的有効応力解析(UWLC)

杭基礎に支えられたフーチング上に立つ橋脚が、地震時に堤体に与える影響を軽減するため、橋脚の周囲に地盤との縁切りを行うために鞘管(さやかん)を設置した場合の地震応答変位をFEM解析した。

橋脚のモデル化では橋脚やフーチング、基礎杭を断面寸法や材料特性によってメッシュで再現し、解析には動的有効応力解析用ソフト「UEWLC」を使用した。

解析の結果、鞘管と橋脚の離隔距離を10cm空ければ、地震時に鞘管と橋脚が干渉することはなく、地震時に橋脚が堤体に及ぼす影響が減ることが確認できた。その結果、堤防全体の安全性も向上することがわかった。

解析に用いられたモデルの全体図

解析に用いられたモデルの全体図

フーチング上の橋脚の周りには離隔距離10cmで鞘管が設置され、橋脚と地盤との縁切りを行った

フーチング上の橋脚の周りには離隔距離10cmで鞘管が設置され、橋脚と地盤との縁切りを行った

橋脚と鞘管天端との相対変位

橋脚と鞘管天端との相対変位

審査員特別賞 洪水リスクマネジメント賞●アズビル株式会社
芝浦工業大学 工学部土木工学科 都市環境工学研究室 教授 守田 優 氏
河川堤防の決壊を考慮した工場敷地氾濫解析
― 降雨による河川増水時の堤防決壊を想定し工場敷地周辺を対象とした浸水氾濫解析により浸水状況を把握―
使用プログラム : xpswmm

アズビルの工場がある地域では、自治体により洪水ハザードマップが公開されているが、河川増水時による堤防決壊を想定した浸水氾濫が過剰に予測されていると思われた。そこで、xpswmmを用いて浸水氾濫解析を同社が独自で行った。

解析範囲は神奈川県伊勢原市鈴川の中流から下流方向側の東西何本約3km四方とし10m四方のメッシュに分割した。解析手順はまず、破堤時の流出量を推定するため、50年に一度発生すると想定される1時間最大雨量94~103mmの降雨で鈴川水系全体の流出解析を行った。

その結果を基に、鈴川からの流出量を推定し、工場敷地周辺の氾濫解析を行った。そして工場敷地の最大浸水深や最大流速、最大ハザード(流速×水深)を求めた。

解析の結果、工場周辺の最大浸水深は0.5m程度、最大流速は0.7m/秒、最大ハザードは0.2と推定され、工場建物への損傷は低いと考えられた。

BCP(事業継続計画)対策としては、大きな浸水深に対しては1階の出荷ヤードの床面かさ上げや防水壁の設置などの大規模な補修が必要だが、小さな浸水深の場合は土のうや止水板、排水ポンプの波射場で対応が可能なことがわかった。その結果は同社工場のBCP対策に有効活用されている。

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第1回 ナショナル・レジリエンス・デザインアワードの受賞者(後列)と審査員(前列)。前列左端は主催者、フォーラムエイトの伊藤裕二代表取締役社長

第1回 ナショナル・レジリエンス・デザインアワードの受賞者(後列)と審査員(前列)。前列左端は主催者、フォーラムエイトの伊藤裕二代表取締役社長

上記以外でノミネートされた作品は次の通りだった。

ノミネート賞●株式会社RATECH
防潮樋門の耐震性能照査
― 地震時保有水平耐力法と動的解析手法との比較検討事例 ―
使用プログラム : Engineer’s Studio®

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ノミネート賞●九州工営株式会社
液状化を考慮した河川堤防の地震時変形解析
― 樋門函体の耐震性能照査を目的とした自重沈下量計算 ―
使用プログラム : 2次元弾塑性解析(GeoFEAS 2D)

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ノミネート賞●若鈴コンサルタンツ株式会社
UWLCを用いた地盤応答解析における影響検討
― 中央防災会議の加速度波形を使用した設計水平震度算定事例 ―
使用プログラム : 動的有効応力解析(UWLC)

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ノミネート賞●昭和コンクリート工業株式会社
大断面ボックスカルバートにおける斜角の影響検討
― FEMLEEGを使用したFEM解析事例 ―
使用プログラム : FEMLEEG

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