名古屋大学が世界初のドライビング・シミュレータを導入
本格的VR空間で没入感をリアルに再現(フォーラムエイト)

2015年6月23日

今年6月12日、名古屋大学東山キャンパスで産学連携拠点となる研究拠点、「ナショナル・イノベーション・コンプレックス(NIC)」の竣工式が行われた。この建物には、フォーラムエイトの高精度ドライビング・シミュレータが設置されている。4Kプロジェクターを使った高輝度高精細な大型スクリーン立体視と、6軸モーションプラットフォームで実車同様に動く運転席を組合せた世界初のものだ。

名古屋大学の「ナショナル・イノベーション・コンプレックス」に設置されたフォーラムエイトの高精度ドライビング・シミュレータ。名古屋の街並みをリアルに再現した立体映像が運転席を包み込む

名古屋大学の「ナショナル・イノベーション・コンプレックス」に設置されたフォーラムエイトの高精度ドライビング・シミュレータ。名古屋の街並みをリアルに再現した立体映像が運転席を包み込む

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ドライビング・シミュレータが設置されたNICの建物(左)。6月12日に行われた竣工式(右)

   運転席を囲むリアルな立体映像

名古屋大学のNICに設置されたフォーラムエイトのドライビング・シミュレータは、運転席を包み込むように正面、左右、床のスクリーンに4K(4096×2160ピクセル)の高輝度高精細な立体映像を映し出す。

さらに運転席の背面にもハイビジョン画質の映像が映し出され、運転席のルームミラーやサイドミラーから実車同様の映像が見られるようになっている。各スクリーンへの映写は、裏側から行う。そのため運転席をぐるりと囲むように映写用の部屋が4つも設けられているのだ。

また、路面となる床面スクリーンへは天井に設置されたプロジェクターから映写する。

このような大型5面スクリーンの本格的なバーチャルリアリティ空間と、6軸モーションプラットフォームで前後・左右・上下の動きを実現した運転席を組合せたドライビングシミュレータは、世界初のものである。(2015年6月現在、公開されているシミュレータとして)

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6軸のモーションプレートで支えられた運転席(左)。前後・左右のスクリーン裏側にそれぞれある映写室(右)
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運転室の後ろにもハイビジョン映像のスクリーンが設置されている(左)。ドライビング・シミュレータを制御するサーバー群(右)

   立体視によって感じる加速度

「普通のドライビング・シミュレータでは、運転席を後ろに傾けることで加速度を再現するようになっています。このドライビング・シミュレータは画像が立体的に見えるので、道路が迫ってくるスピードの変化を人間の目が『差分』として感じ取ります。そのため立体画像からも加速度を感じられます」と、ドライビング・シミュレータによる研究を統括する名古屋大学特任教授で未来社会創造機構 名古屋COI拠点産学連携リーダーの原口哲之理氏は説明する。

名古屋大学特任教授の原口哲之理氏

名古屋大学特任教授の原口哲之理氏

運転席で頭の位置や高さをずらすと、3Dメガネに取り付けたターゲットの位置をダッシュボード上部の「ヘッドトラッキングシステム」が感知し、ドライビング・シミュレータのスクリーンに映される立体映像が視点に合せて自動調整される。

そのため、各スクリーンにまたがって映写されるセンターラインやガードレールは、運転者から見ると折れ曲がることなく、スクリーンの境界を感じさせない。

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3Dメガネに取り付けられたターゲット(左)。ダッシュボードの上部にはターゲットの位置を追跡するセンサーがある(右)
運転者から見るとスクリーンの境界を感じさせない映像が常に映し出される

運転者から見るとスクリーンの境界を感じさせない映像が常に映し出される

筆者も世界初のドライビング・シミュレータに試乗させてもらった。3Dメガネを装着し、ドライビング・シミュレータの運転席に座ると、フロントガラスの前や横、路面には実車同様の風景が広がっていた。

「日本平パークウェイ」を再現した道路を体験運転してみると、これまでのドライビング・シミュレータにはなかったリアルさだ。

目の前に広がる遠近感のある山道を走行すると、正面と左右、路面に設けられた4面の4Kスクリーンの映像がピタリと同期し、センターラインやガードレールなどもスクリーンの境目を感じさせずに迫ってくる。

アクセルを踏むと運転席内に設置された振動スピーカーから、エンジン音とともに振動が伝わってくる。カーブに沿ってハンドルやブレーキを操作すると、運転席も傾く。

試しに制限時速40キロの道路を、70キロで“暴走”してみるとカーブを曲がり切れずにガードレールに激突した。立体映像と運転席の動きで感じる衝突の怖さは、思わず身震いしてしまうほどだった。実車では、とてもできない体験を、このドライビング・シミュレータは可能にしてくれるのだ。

ドライビング・シミュレータのコントロールルーム

ドライビング・シミュレータのコントロールルーム

   ドライビング・シミュレータを構成するソフトとハード

このドライビング・シミュレータは、フォーラムエイト社の3次元リアルタイム・バーチャルリアリティソフト「UC-win/Road」を中心として、さまざまなソフトとハードで構成されている。

車両の動きをリアルにシミュレーションしているのはドイツIPG社の「CarMaker」というシステムだ。従来の車両の動的特性のシミュレーションのほか、モデル・イン・ザ・ループ(MIL)、ソフトウェア・イン・ザ・ループ(SIL)、ハードウェア・イン・ザ・ループ(HIL)に対応したバーチャルな環境で、様々なテストが行える。

クルマの燃費やCO2排出量を予測するシミュレーションシステムとしては、オーストリアAVL List社の「AVL CRUISE」を採用した。

また、周囲を走行する交通流を発生させているのは、スペインのTSS社(国内総代理店はユーデック)のリアルタイム交通流シミュレータ「Aimsun」だ。各車両の起点・終点や交差点での分岐率を指定することにより、ドライビング・シミュレータの周囲にリアルな交通流を発生させることができる。

これらのハードやソフト間の連携を「UC-win/Road」が行い、バーチャル空間内での自動車の運転状態を再現している。

   UC-win/Roadを選んだ理由

ドライビング・シミュレータでは、道路や街並み、地形などの風景をリアルに再現することが求められる。このドライビング・シミュレータでは、フォーラムエイト社の「UC-win/Road」が採用された。

その選定理由について、原口教授は「UC-win/Roadは道路や周囲の建物や風景を簡単に作ることができます。ドライバーの運転動作を左右する道路標識の文字を書き換えたり、修正したりするのも手早くできます。また、道路や橋の作り手側の建設コンサルタントなどでも、UC-win/Roadが多く使われていることもありました」と語る。

UC-win/Roadでリアルに再現された名古屋の街並み

UC-win/Roadでリアルに再現された名古屋の街並み

   ドライビング・シミュレータによる研究活動

名古屋大学は平成25年度の文部科学省「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」に「多様化・個別化社会イノベーションデザイン拠点~高齢者が元気になるモビリティー社会~」をテーマとして応募し、全国の中核拠点の1つとして選ばれた。社会の高齢化が進行するなか、社会と国民が活力を継続発展させるため、未来社会の実現を目指す取り組みだ。

名古屋大学のNICに設置されたドライビング・シミュレータは、産学連携や共同開発によるCOI研究推進における車両性能実証装置として、運用されている。

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高齢者が元気になるモビリティー社会を実現する研究拠点となる名古屋大学のNIC(左)では、ドライビング・シミュレータとともに実車による研究も行われる(右)

 

【問い合わせ】
 株式会社フォーラムエイト
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TEL:03-6894-1888 FAX:03-6894-3888 (各営業窓口はこちらをご覧ください)
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