ARCHICADで意匠、構造、設備の設計を統合
2次元CADを使わないArch5のBIM活用戦略(グラフィソフトジャパン)

2015年10月11日

東京・外神田の建築設計事務所、Arch5では、設計や図面の作成には2次元CADは使わず、ARCHICADなどのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトだけを使っている。BIMモデルによって意匠、構造、設備の設計を統合し、積算などの作業を効率化し、遠隔地の事務所と連携するといったBIMによる生産性向上を実践している。

 

設立以来、2次元CADは使わずBIMモデルベースの設計業務を行うArch5のオフィス
設立以来、2次元CADは使わずBIMモデルベースの設計業務を行うArch5のオフィス

   RC梁の貫通許可範囲をBIMモデル上に表示

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Arch5代表取締役
小俣光一氏

東京・秋葉原の電気街の一角にオフィスを構える建築設計事務所、Arch5のワークステーションにはもはや2次元CADはインストールされていない。2010年9月の会社設立以来、グラフィソフトの意匠設計用BIMソフト、ARCHICADを中心としたBIMモデルベースによる設計業務を行っているからだ。

Arch5代表取締役の小俣光一氏は「ARCHICADは操作性とスピード感が優れているため、以前、務めていた事務所時代から使っていました。そのためArch5設立当初から2次元CADは使わず、ARCHICADによるBIMベースの業務を行っています」と説明する。

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意匠、構造、設備のBIMモデルをARCHICADで統合するのがArch5ならではの活用法だ

現在の所員は5人。うち4人の設計者は、小俣氏を含めて全員がBIMを活用している。オフィスにはARCHICAD用のBIMサーバーを設置し、島根県や中国・上海の協力事務所とも連携しながらBIMによるプロジェクト進行が行える体制をとっている。

「もちろん、設備設計や構造設計は他社にお願いしていますが、その成果品はBIM用のデータ交換フォーマットであるIFC形式で納品してもらいます。そして最終的には社内で意匠、構造、設備のBIMモデルを統合しています」と小俣氏は言う。

ARCHICADを軸としたBIMネットワーク。他の事務所や他社ソフトとIFC形式などで幅広く連携している

ARCHICADを軸としたBIMネットワーク。他の事務所や他社ソフトとIFC形式などで幅広く連携している

   水回りがガラリと変わったマンションリフォーム

意匠だけでなく構造や設備と一体化したBIM活用の強みを生かして、Arch5ではユニークなプロジェクトの数々を手がけている。

その1例があるマンションの4LDKをオール電化仕様の3LDKにリニューアルしたプロジェクトだ。これまではなかった給湯器「エコキュート」や床暖房を新たに設置したほか、和室をキッチンに、キッチンをトイレにと、大がかりな水回りの設計変更を伴う大工事だ。

Arch5ではまず、既存の図面をARCHICADでBIMモデル化し、50分の1縮尺の図面を作った。そして新たな間取り案をARCHICADで設計し、同時に排水勾配などを考慮した給排水管などを設備用BIMソフト、Rebroで設計したのだ。そのため、既存の床高の範囲で大がかりな水回りの設計変更も実現した。

水回りの大改造。排水管の勾配も考慮しながら既存のスペースに収めることができた

水回りの大改造。排水管の勾配も考慮しながら既存のスペースに収めることができた

「リフォーム工事では、主婦の要望をうまくくみとり、設計に盛り込むことが必要です。そこで設計案は図面でなく、3Dモデルを使って説明し、その場で確認してもらいました」(小俣氏)。

このマンションは壁構造だったため、構造部分である耐力壁を壊さないようにリフォームすることが求められた。また、エコキュートの新設では、本体以外に数百キログラムのお湯をためる貯湯槽もあるため、既存構造でもつかどうかの検討も必要だった。

結果的には、エコキュートは既存の床荷重の範囲内に収まることが確認できた。最終的な設計案は、既存のスリープ穴を利用したダクトなどの設備も含めて、フルカラーの3Dプリンターで模型化した。

リフォーム工事の設計を管理組合に説明するときも、意匠、構造、設備を統合したBIMモデルや3Dプリンターで作成した模型のおかげでスムーズな合意形成につながった。

既存間取りのBIMモデル

既存間取りのBIMモデル

既存スリーブを生かしたリニューアル後のBIMモデル

既存スリーブを生かしたリニューアル後のBIMモデル

3Dプリンターで作成した模型

3Dプリンターで作成した模型

   高低差のある大規模マンションの検討にも威力を発揮

1500戸のマンションの事前検討業務では、土木プロジェクト並みの大規模なBIMモデルをARCHICADで作り、様々な検討シミュレーションを行った。

長さ約2km×奥行き約1kmという起伏のある広大な敷地の数値地図データをARCHICADに読み込み、3Dモデル化し、その上にマンション全体のBIMモデルを構築したのだ。

「高低差が5~7mある敷地にマンションを計画すると、どうしても半地下部分の区画を作らざるを得ません。地下部分の割合に応じて住戸にするか、それとも駐車場にするかという検討をARCHICADで行いました。500分の1スケールの模型だと高低差はわずか1~2mmとなり、とても検討できませんが、ARCHICADだと自由自在に拡大し、視点を変えて確認することができました」(小俣氏)。

ARCHICAD上に約2km×1kmの3D地形を取り入れて検討した

ARCHICAD上に約2km×1kmの3D地形を取り入れて検討した

また、マンションでは住戸からの眺望が売れゆきを左右する。「5階から周囲の景色が見えるか、前の建物が近すぎて視界が閉鎖的にならないかといったことも考慮しました」(小俣氏)

地形の起伏を考慮した大規模なまちづくり計画の例。特に高低差がある計画地ではBIMによる提案が不可欠となっている

地形の起伏を考慮した大規模なまちづくり計画の例。特に高低差がある計画地ではBIMによる提案が不可欠となっている

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Arch5 BIMマネージャー東尾勝則氏

 

同社のまちづくり計画業務では、BIMxによるウォークスルー、及びBIMモデルを利用したムービー作成は社内で作成することが通常業務となっている。社内で対応することにより、計画変更にも素早く対応できる。

このほか、あるオフィスビルでは1階の階段部分周辺を花壇のようにデザインするとき、ARCHICADによる3D設計が大いに力を発揮した。

「2D図面で検討していると、花壇部分を支えるために大きな擁壁を作るという設計になりがちですが、ARCHICADに構造部材を入力して3Dで検討すると、各部分のレベルの違いが分かりやすく、小さな擁壁2つを組み合わせた設計が実現しました。結果として、コスト削減にもつながりました」とArch5のBIMマネージャー、東尾勝則氏は説明する。

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階段周辺を花壇のようにした例。3Dによる構造検討により工費も抑えられた。また、意匠・構造・設備がBIMにより設計されているため、常に互いの取り合いの確認が可能だ

Arch5では一貫構造計算ソフトのデータをARCHICADと連携させるため、データコンバータソフトなどを使っている。一貫構造計算ソフトのデータが、容易に鉄筋の配筋まで3Dモデル化され、瞬時に再現できるので、無理な配筋がないか、設備スリーブ位置など、視覚的に判断可能となる。当社にとって、ARCHICADを中心としたBIM設計がいかに有益かを実感できる事例の一つである。

   BIMモデルをサッシメーカーに提供し気流解析

現在工事中のプロジェクトでは、Arch5が作成した実施設計レベルの高精度なBIMモデルをサッシメーカーに提供し、メーカー側で熱流体解析(CFD)によるシミュレーションを行った。

その一つは放射空調の気流解析だ。実施設計レベルのBIM 3Dモデルを利用することにより、気流解析用にモデルを一から作成する工程を省けたため、短期間での検討が可能になった。動画で気流の動きを確認することにより、放射空調システムが有効であることを視覚的に判断できたのだ。

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BIMによる3Dモデルを利用した放射空調の気流解析(株式会社ソフトウェアクレイドル社のソフト「STREAM」による)

BIMによる3Dモデルを利用した放射空調の気流解析(株式会社ソフトウェアクレイドル社のソフト「STREAM」による)

また、縦型低風量換気スリットによる自然換気のシミュレーションも行った。「メーカーの担当者によるとBIMモデルで気流解析をした事例は数件あるが、そのほとんどは企画レベルのBIMモデルであり、実施設計レベルのBIMモデルを用いた気流解析は事例がないという。すでにある実施設計レベルのBIMモデルを使用できたため、新たにモデル入力をする必要がなく、より正確な気流解析ができたと聞いた」と東尾氏は説明する。

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BIMによる3Dモデルを利用した縦型定風量換気スリットの気流解析(協力:三協立山株式会社 三協アルミ社。解析は株式会社ソフトウェアクレイドル社のソフト「STREAM」による)●

   積算用テンプレートも建物種ごとに用意

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Arch5 取締役
井熊正氏

BIMモデルを積算に生かせるのも、Arch5ならではの強みだ。取締役の井熊正氏は建築積算士の資格をもち、そのノウハウを生かして同社では建物の種類ごとにARCHICADのテンプレートを作成している。

「マンション、オフィス、商業ビルと、それぞれに適したテンプレートを作りました。建築部分の8割は、ARCHICADのモデルから集計された数量で見積書を作れるので、手作業による転記ミスなどを大幅に減らすことができます」と井熊氏は説明する。

ARCHICADのテンプレート(左)から積算用データ(右)を作成することで、積算の8割を自動化した

ARCHICADのテンプレート(左)から積算用データ(右)を作成することで、積算の8割を自動化した

このほか、最近、依頼が多いのは日影や斜線などの制限をクリアして、最大限に建物が建てられる“鳥かご”と呼ばれる3Dメッシュを利用してを検討する企画(ボリュームチェック)業務だ。

「一般の設計事務所なら1物件あたり1~2週間かかるところですが、当社ではARCHICADを使って検討するので、月に4~5件の企画業務をこなすことが可能です。その“鳥かご”に合わせてボリューム検討を行った結果、予想以上の面積がとれることがわかり、見送られると思っていたプロジェクトが実現したこともありました。平面図作成と同時に初期段階のパースも提示できるので、依頼主には大変好評です」と小俣氏は振り返る。

日影や天空率シミュレーションによる検討

日影や天空率シミュレーションによる検討

作成された3D鳥かご図

作成された3D鳥かご図

経営トップ自らがARCHICADを使うArch5のBIM活用力には定評がある。そのため、新築プロジェクトから耐震補強工事などの設計実務のほか、BIM導入のコンサルティングから、GDLによるBIMパーツの作成依頼まで幅広いBIM関連業務か飛び込んでくるほどになった。

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BIMによる事務所ビルの耐震補強プロジェクト

「BIMを使えば少人数の設計事務所でも、大きなプロジェクトができる。今後はさらに大規模なマンションや商業施設・オフィスから、大規模なまちづくり計画まで、さまざまな設計に、当社のBIM力を生かしていきたい」と小俣氏は語った。

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