A0複合機「HP DesignJet T830 MFP」で工事評点アップに挑戦!
CADだけでない新日本工業の大判プリンター活用術(日本 HP)
2016年2月7日

日本 HPのA0プラス対応大判複合機「HP DesignJet T830 MFP」を工事現場での図面作成だけでなく、工事評点アップにも活用しよう―――こんな取り組みを新日本工業(東京・江東区)が行っている。表計算ソフトの描画機能で作ったオリジナルの大判ポスターを、現場の安全管理はもちろん、地域住民に対する現場説明やコミュニケーションにも役立てようという作戦だ。

A0プラス対応大判複合機「HP DesignJet T830 MFP」で、現場のオリジナルポスターを印刷する新日本工業の監理技術者、鈴木努氏

A0プラス対応大判複合機「HP DesignJet T830 MFP」で、現場のオリジナルポスターを印刷する新日本工業の監理技術者、鈴木努氏

   コンパクトカーで運べるA0サイズの複合機

これまでの大判複合機と言えば、大判プリンターの上に大判スキャナーを後付けしたものが多かったが、日本 HPが2015年11月26日に発売したA0プラス対応の大判複合機「HP DesignJet T830 MFP」(以下、T830 MFP)は、そんなイメージを打ち破った斬新なスタイルだ。

というのも、スキャナーとプリンターがスマートに一体化されたうえ、サイズは幅1403mm×奥行き629mm×高さ1155mmと、従来のA1サイズの大判プリンター並みになったからだ。これだと、スペースの限られた現場事務所でも無理なく使える。

そこで、現場でのT830 MFPの活用方法を探ろうと、東京・大田区内でトンネル補修工事を行っている新日本工業の平和島隧道改修作業所に持ち込んだ。

新日本工業の現場事務所に持ち込んだT830 MFP。A0サイズのスキャナーとプリンターがこの中に収まっているとは思えないコンパクトさだ

新日本工業の現場事務所に持ち込んだT830 MFP。A0サイズのスキャナーとプリンターがこの中に収まっているとは思えないコンパクトさだ

「A0複合機のT830 MFPなので、トラックで運んでくると思っていたら、小さなコンパクトカーに積んで来たのにはビックリしました。事務所に運び込んだりスタンドを組み立てたり作業も、2人であっという間に終わってしまいました」と、新日本工業現場代理人の山田貴光氏は搬入時を振り返る。

T830 MFPは、A0サイズ対応のプリンターとスキャナーを搭載していながら、大きさとしては従来のA1サイズ機並みなのだ。

現場は環七通りと首都高速1号羽田線、海岸通りが交差する部分に位置する。環七通りと海岸通りをつなぐインターチェンジに設けられたボックスカルバートのトンネルは、昭和40年代に建設されたもので、コンクリートの壁面が中性化している。

そこでコンクリートの表面を40mm削り取り、金網で補強した後にモルタルを吹き付ける工事を行っているのだ。

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傷んだ壁面を削り取り(左)、金網で補強した後にモルタルを吹き付ける(右)

   「印刷スピードに驚いた」

同社はまず、工事現場で欠かせないCAD図面の印刷機能を評価した。「印刷スピードが速いのには驚きました。A0サイズでも1枚1分もかかりません。昔の大判プリンターは印刷ボタンを押して、動き始めるのに1分くらいかかっていましたが、雲泥の差です」(山田現場代理人)。

A0サイズでも1分とかからないで印刷するT830 MFP

A0サイズでも1分とかからないで印刷するT830 MFP

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A3判図面をスキャンしてA1判に拡大コピーした図面。それでも線や文字はくっきりしている

大判スキャナーはJPEG形式の場合最大914mm×8000mmまでの原稿を読み取ることができる。「下水道工事の図面などは、長尺のものもあります。これだけ大きなサイズをスキャンできれば、困ることはないでしょう」(山田現場代理人)

ロール用紙のセットやスキャンなどの作業は、すべてマシンの前面と上面から行えるので、両サイドや背後に十分なスペースがない現場事務所でも、すべての機能を使えるのだ。

幅914mmの原稿まで読み取れるスキャナー

幅914mmの原稿まで読み取れるスキャナー

   大判複合機で工事評価点アップを狙う

工事現場で使われる図面は最近、A3判が増えているものの、現場に掲示する安全啓発ポスターや工程表はA1やA0の大きなサイズが求められる。T830 MFPのインク代は、A1判のCAD図面なら1枚10円以下で済む。

「これまではA3判を4枚、8枚と張り合わせて大きなサイズのポスターや図面を作ってきましたが、張り合わせる作業だけで20分以上かかっていました。また大判のポスターをラミネート加工で作ってもらうと印刷代込みで5000円もします。現場事務所で大判の図面や印刷物が出力できると、これらの作業が大幅に合理化できそうです」と山田現場代理人は言う。

工事現場で使われる様々な大判印刷物。上の4枚はA0サイズ。T830 MFPで出力することにより、大幅なコストダウンができた

工事現場で使われる様々な大判印刷物。上の4枚はA0サイズ。T830 MFPで出力することにより、大幅なコストダウンができた

大判のプリンターやスキャナーは、図面やCGパース、工程表など工事用の資料作成に使われてきた。この現場ではさらに工事評点アップに使うことを狙っている。

工事の安全ポスターなどは、既製品もあるが画一的な感じが否めない。そこで、現場独自の特徴を盛り込んだ安全ポスターや、地域の気象や行事などをリアルタイムに反映した地域住民向けの掲示物などを、T830 MFPで作成しようというのだ。

このプロジェクトのため、起用されたのは札幌市の工事現場コンサルタント、建設IT職人組合クライスの佐々木実代表だ。

佐々木氏は全国各地の現場を回って、公共工事の発注者が、工事の品質などを評価する「工事評点」を高めるための取り組み方を指導している。

大判複合機を使って工事評点を高めるための秘策を練る建設IT職人組合クライスの佐々木実代表

大判複合機を使って工事評点を高めるための秘策を練る建設IT職人組合クライスの佐々木実代表

「『工事成績評定点』は総合評価方式における工事の受注に影響するため、少しでも有利になるよう経費をかけて対策を行う建設会社も多いと思います。

T830 MFPの価格は税抜きで49万8000円です。実用性だけではなく、アイデアと活用法しだいで評点アップやイメージアップが行えますから、元は十分にとれますよ。」と佐々木氏は説明する。

   現場技術者の似顔絵を生かしたポスターを作成

佐々木氏の特技は、表計算ソフト「Excel」を使って、有名人の似顔絵や建設機械のリアルなイラストを描くことだ。この現場でも、なじみの人物をイラスト化し、ポスターなどの掲示物を作ってみた。

モデルはこの現場の監理技術者を務める鈴木努氏だ。鈴木氏の顔写真をExcelに張り付け、その上からExcelの描画機能にある「フリーフォーム」や「楕円」などを使って輪郭をなぞり、着色している。

こうして作った目や鼻、顔の輪郭などのパーツを、福笑いのように重ねていくと、ほんの15分ほどでリアルな似顔絵が出来上がった。

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Excelに写真を張り付け、描画機能で目や口のパーツを作る(左)。これらのパーツを福笑いのように重ねていく(右)
完成した似顔絵とモデルの鈴木氏

完成した似顔絵とモデルの鈴木氏

このイラストを生かして、職人向けの退職金制度の加入促進ポスターを作ってみた。最近、流行しているギャグ「安心してください。はいてますから」を「入ってますから」にアレンジした。

「市販されているポスターだと、ありきたりの内容であまり目立ちません。しかし、身近な現場の技術者がイラストになり、ユーモアをもって呼びかけるような内容にすると、がぜん、注目度が高まります」と佐々木氏は説明する。

鈴木氏がユーモアをもって呼びかけるポスター。市販のものと違って大いに注目を集めそうだ

鈴木氏がユーモアをもって呼びかけるポスター。市販のものと違って大いに注目を集めそうだ

   小学生の絵もA0判に拡大し、親しみのある現場に

現場のすぐ脇の道路はクルマが頻繁に行き交い、近くにあるモノレール駅を利用する歩行者もよく通る。そこで考えたのが、地域の人に工事の内容を分かりやすく説明するためのポスター作成だ。

地域の小学生が工事現場をイメージして描いた絵をA0判に拡大コピーして、通行人が見やすい場所に張ったのだ。地域と現場とのコミュニケーション促進を図る取り組みと言えるだろう。こうしたことが簡単にできたのも、大判スキャナーとプリンター機能を搭載したT830 MFPがあってのことだろう。

A0判で印刷した工事内容の説明などを説明したポスター

A0判で印刷した工事内容の説明などを説明したポスター

子どもたちの絵もA0判に拡大して掲示し、地域と現場とのコミュニケーション促進を図った

子どもたちの絵もA0判に拡大して掲示し、地域と現場とのコミュニケーション促進を図った

取材当日は珍しく、東京で雪が積もり、現場の技術者たちは朝早くから付近の歩道橋などの雪かきに追われた。

「今後は、雪が降った日に『滑りやすいので足元にお気を付けください』という掲示を出したり、付近の学校で卒業式が行われるときは『〇〇小学校の皆さん、ご卒業おめでとうございます』といったお祝いの言葉を掲示したりすることもできるでしょう」と佐々木氏は語る。

T830 MFPは、図面の作成だけでなく、地域とのコミュニケーションツールとしても役立つのだ。それは現場の工事評価点アップにも貢献し、建設会社の経営改善にもつながることになる。

   工事現場用の「ハードプロテクトカバー」も用意

コンパクトなボディーにA0判プリンターとスキャナーが収められたT830 MFPは、工事現場で使いやすい大判複合機として開発された。

ほこりっぽい場所や粗い床面上での輸送など、現場での過酷な使用条件を考慮して、オプションで防塵(ぼうじん)性や耐衝撃性を高めるための開閉式の「ハードプロテクトカバー」も用意されている。輸送時や非使用時は、プリンターやスキャナーの開口部が完全に覆われるので、ほこりの侵入を防ぐことができる。また、カバーには輸送用の大きなタイヤのキャスターもセットされている。

オプションの開閉式の「ハードプロテクトカバー」を装着したイメージ。開口部がすっぽりと覆われ、ほこりが侵入しにくい

オプションの開閉式の「ハードプロテクトカバー」を装着したイメージ。開口部がすっぽりと覆われ、ほこりが侵入しにくい

ハードプロテクトカバーにセットされている大型の車輪

ハードプロテクトカバーにセットされている大型の車輪

現場で使う図面は、一般オフィス用の複合機で扱えるA3サイズ化が進んでいる一方、高齢の作業員者が多い現場では細かい鉄筋の図面などが読みにくいので大判の図面の方が使いやすいという声も多くなっている。

T830 MFPは50万円以下でA0判のスキャナーとプリンターが両方とも手に入る。現場事務所や設計事務所に1台置いておくと、建設業の設計や施工管理で使うほとんどの図面や資料の作成に使えるほか、工事評点アップなど「攻めの活用」への道も広がりそうだ。

T830 MFPを前に。左から新日本工業土木部、現場係員の砂山芳之氏、監理技術者の鈴木努氏、現場代理人の山田貴光氏、建設IT職人組合クライス代表の佐々木実氏

T830 MFPを前に。左から新日本工業土木部、現場係員の砂山芳之氏、監理技術者の鈴木努氏、現場代理人の山田貴光氏、建設IT職人組合クライス代表の佐々木実氏

【問い合わせ】
 株式会社 日本HP
 東京都江東区大島2-2-1カスタマー・インフォメーションセンター
 0120-436-555 (携帯電話・PHS)03-5749-8291
 受付時間:月曜日~金曜日 9:00~19:00 土曜日 10:00~17:00
 ホームページ : www.hp.com/jp/designjet
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