一貫構造計算プログラムとBIMをシームレスに連携
RevitとST-Bridgeの橋渡しプロジェクトがスタート(オートデスク)

2016年7月2日

日本の構造設計業務で使われている一貫構造計算プログラムと、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト「Autodesk Revit」を連携させるプロジェクトがスタートした。構造関係のソフトが多く対応しているデータ交換標準「ST-Bridge」を、Revitに読み込めるようにするものだ。オートデスクはbuildingSMART Japan(旧IAI日本)と、BIMのユーザー会であるRUGの協力を得ながら開発を進め、2016年末には成果を公開する予定だ。

RevitとST-Bridgeの連携プロジェクトにかかわるメンバー。左からbuildingSMART Japan 構造分科会リーダーの鹿島孝氏、RUG会長の飯島憲一氏、同・構造ワークフロータスクフォースリーダーの青木隆広氏、オートデスク技術営業本部の内藤聡氏

RevitとST-Bridgeの連携プロジェクトにかかわるメンバー。左からbuildingSMART Japan 構造分科会リーダーの鹿島孝氏、RUG会長の飯島憲一氏、同・構造ワークフロータスクフォースリーダーの青木隆広氏、オートデスク技術営業本部の内藤聡氏

   一貫構造計算の結果をRevitに引き継ぐ

RevitがST-Bridge形式に対応することで、一貫構造計算プログラムとBIMソフト、Revitの間にあったミッシング・リンクを解消できることを期待している」―――RUG会長の飯島憲一氏(所属:安井建築設計事務所)は、今回のプロジェクトについて語った。

「ミッシング・リンク」とは、BIMによるワークフローの中で、BIMモデルデータの流れが阻害される部分のことだ。

建築設計事務所や建設会社などの有力BIMユーザーが集まるRUGでは、意匠、構造、設備の設計・施工ワークフローの中に潜むミッシング・リンクを発見した場合、それを解消するためのタスクフォースを立ち上げ、問題解決を行うことを主な活動としている。

日本の建築構造設計では、BIMが普及する以前から、ソフトベンダー各社が開発した「一貫構造計算プログラム」が広く使われている。

しかし、一貫構造計算の結果をBIMソフトに引き継ぎ、意匠や設備とBIMで統合したり、構造設計を詳細化したりするためには、出力結果に基づき、人間が手入力でBIMモデルを作る必要があったのだ。

そこで、オートデスクは一貫構造計算プログラムなどが対応している構造用のデータ交換標準「ST-Bridge」を、Revitが読み込めるようにするプロジェクトを2016年6月にスタートさせた。

RevitがST-Bridgeに対応すると、一貫構造計算プログラムのデータをIFCまで橋渡し、Integrated BIMのワークフローがさらにスムーズになる(資料:buildingSMART Japan)

RevitがST-Bridgeに対応すると、一貫構造計算プログラムのデータをIFCまで橋渡し、Integrated BIMのワークフローがさらにスムーズになる(資料:buildingSMART Japan)

このプロジェクトには、ST-Bridgeを開発しているbuildingSMART Japanと、建築設計事務所や建設会社などの有力BIMユーザーが集まるRUGが協力している。

   構造分野のデータ交換標準「ST-Bridge」を活用

一貫構造計算プログラムは、建築構造を3次元で表現し、部材の仕様や拘束条件などの属性情報をソフト内で扱っている点では、BIMソフトと似ている。

一方、buildingSMARTが開発しているBIMモデルのデータ交換標準「IFC」にも、鉄筋コンクリート構造用の「ST-2」という規格がある。「2006年にST2による鉄筋や躯体モデルのデータを交換する実証実験を行った結果、日本でよく使われている鉄筋の断面リスト表現が使いにくいなど実務上の問題点があることがわかった」と、buildingSMART Japan構造分科会リーダーの鹿島孝氏(所属:竹中工務店)は語る。

そこで構造分科会は、日本の構造設計実務に合ったデータ交換標準「ST-Bridge」を2011年に開発。3D形状データと属性情報を一括して他のソフトに受け渡せるようにした。現在では一貫構造計算プログラムなど構造設計関連のソフト、十数本が対応し、日本の構造設計界ではデータ交換標準としての地位を確立するまでになったのだ。

buildingSMART構造分科会の定例会。参加社数は約30社にも達している

buildingSMART構造分科会の定例会。参加社数は約30社にも達している

Revitは既にIFC形式によって、他社製品を含めた意匠、構造、設備の各BIMソフトと連携している。

今回の開発によってST-Bridgeの読み込み機能が加わると、一貫構造計算プログラム→ST-Bridge形式→Revit(構造3次元CADソフト)→意匠・構造・設備の統合という、オートデスクが提唱する「Integrated(インテグレーテッド) BIM(ビム)」のワークフローがさらにスムーズに流れるのだ。

   ミッシング・リンク解消へのRUGの熱意

RUGはRevit User Groupの略で2007年に発足した。当初はRevitユーザー同士の情報交換や、初心者に対する指導などが活動の中心だった。

2016年1月にRUGの会長に就任した飯島憲一氏は、「参加者のニーズが変化し、現在は日本のBIMワークフローをスムーズにつないでいくことが活動方針となっている」と語る。

その1つの成果が、2014年2月に完成した「SS3 Link」というRevit用アプリの開発だ。一貫構造計算プログラム「SS3」とRevitの間で双方向のデータ連携を行えるようにするもので、BIMモデルから日本独特の断面リストを自動的に作る機能も備えた。

●「SS3 Link」の機能

Revitのメニュー画面にある「SS Link」のコマンドを操作し、SS3の構造部材を読み込む為に「CSVインポート」ボタンをクリックする

Revitのメニュー画面にある「SS Link」のコマンドを操作し、SS3の構造部材を読み込む為に「CSVインポート」ボタンをクリックする

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すると、何もなかったRevitの画面に5階建てビルの構造モデルが読み込まれた

すると、何もなかったRevitの画面に5階建てビルの構造モデルが読み込まれた

 20160702-Revit-arrow

さらにRevitの「RC断面リスト」コマンドにより自動作成された各階の柱の断面リスト

さらにRevitの「RC断面リスト」コマンドにより自動作成された各階の柱の断面リスト

自動作成された柱や梁の断面リスト

自動作成された柱や梁の断面リスト

「SS3 Linkの開発は、Revitユーザーから大きな反響があった。そこでSS3以外の一貫構造計算プログラムで作成した構造モデルも、ST-Bridgeを介してRevitに読み込めるようにしたいと思い、今回のプロジェクトが始まった」と飯島氏は語る。

RUG構造部会リーダーの青木隆広氏(所属:日立建設設計)は、「ST-Bridgeとは、2次元CADで言うとDXF形式のようなもの。RevitがST-Bridgeに対応すると、一貫構造計算プログラムだけでなく、他の周辺ソフトとRevitとの汎用的な連携も可能になり、BIMのワークフローがいっそう広がることになる」と説明する。

今回の開発で、RevitがST-Bridgeに連携すると、既にST-Bridgeに対応している十数本のソフトとのスムーズなデータ交換が可能になる。一気にミッシング・リンクが解消する効果が得られそうだ。

   ユーザーの声を開発に反映するオートデスク

オートデスク技術営業本部の内藤聡氏は「これだけBIMが普及した今、ベンダーだけがソフトを開発してリリースする時代は終わった。オートデスクはユーザーと協力し、現場の声を聞きながら、実務で使いやすいソフトを開発していきたい。RUGの力は当社にとって不可欠だ。今後、ST-Bridgeのバージョンアップにも追従していきたい」と語る。

また、オートデスクのインダストリーマーケティングマネージャー、泉昌一郎氏は「BIMの世界では、いろいろなプロ用ツールが使われているので、オートデスクの製品もこれらと連携していく必要がある。今回の開発は、RUGの協力により30~40社の建築設計事務所や建設会社からの要望を生かせることになる」と期待する。

オートデスクでは、RUGやbuildingSMART Japanとともに、2016年6月にRevitをST-Bridgeに対応させるための仕様検討会議を開催した。今後、両者の要望や意見を取り入れながら、約6カ月で開発を行い、年内にも開発成果を無償公開する予定だ。そのとき、日本の構造設計はBIMによって新たなワークフローが可能になるだろう。

RevitとST-Bridgeを連携させる仕様書案。6月の会議で使われた

RevitとST-Bridgeを連携させる仕様書案。6月の会議で使われた

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