文化財調査や建物のバーチャル保存に
博物館を支えるFARO Focus 3D(FARO)

2016年8月22日

栃木県立博物館はFAROの3Dレーザースキャナー「Focus 3D」を導入し、石仏や古墳などの文化財調査に活用している。従来の図面や写真による調査では、写真はひずみがあり、図面は要所の寸法しか記録できない。3Dスキャナーで点群データを残しておくと、後から必要な部分の寸法を測ったり、正確な形状を観察したりと、記録の情報量が大幅に高まる。

FAROレーザースキャナー Focus 3Dによる栃木県壬生町にある車塚古墳の横穴式石室の3D計測作業

FAROレーザースキャナー Focus 3Dによる栃木県壬生町にある車塚古墳の横穴式石室の3D計測作業

   石仏の全体像が明らかに

「石仏をFAROの3Dレーザースキャナー、Faro Focus 3Dで計測したところ、肉眼では分かりにくかった腕などが意外に残っていることが明らかになりました」と、栃木県立博物館 学芸部長補佐兼人文課長の森嶋秀一氏は語る。

栃木県立博物館のロビーで。学芸部長補佐兼人文課長の森嶋秀一氏

栃木県立博物館のロビーで。学芸部長補佐兼人文課長の森嶋秀一氏

現場は栃木県塩谷町にある佐貫観音だ。鬼怒川べりにそびえ立つ高さ64mもの巨大な岩塊の壁面に、石仏が彫られている。

太陽光や影のため、肉眼では石仏の一部しかよく見えない。しかし、Focus 3Dで石仏の表面を計測し、3D形状を点群データで見ると、光や影の影響が取り除かれて、石仏本来の姿が浮かび上がったのだ。

FAROレーザースキャナー Focus 3Dによる栃木県塩谷町にある佐貫観音の計測作業

FAROレーザースキャナー Focus 3Dによる栃木県塩谷町にある佐貫観音の計測作業

実際の石仏。時間によっては太陽光の光や影によって石仏の凹凸が見えにくい

実際の石仏。時間によっては太陽光の光や影によって石仏の凹凸が見えにくい

FAROの3Dスキャナー「Focus 3D」で計測した点群データ。肉眼では見えにくかった部分もはっきり分かる

FAROの3Dスキャナー「Focus 3D」で計測した点群データ。肉眼では見えにくかった部分もはっきり分かる

「この石仏は、12~13世紀初期の平安時代から鎌倉時代に掘られた作品と言われてきました。しかし、Focus 3Dによる計測によってこれまで分からなかった石仏の形も判明し、もっと古い時代の作品である可能性も出てきたのです。3Dスキャナーならではの成果でしょう」と森嶋氏は語る。

   現代のニーズに合った展示を探る

栃木県立博物館は、地域の自然から歴史まで、様々な学術分野をまたぐ総合博物館だ。そのため、絶滅した動物と自然史や生活史などを関連づけるなど、過去の歴史を立体的に理解できる展示を強みとする。

そして、ガラス越しに展示品を見るだけでなく、土偶や食器などは、模型やレプリカを手にとり、裏側や底も見ることで理解を深める博物館にしていきたいという思いもある。

こうした展示を実現しようと、2015年7月に導入されたのが、Focus 3Dだ。

「屋外の石仏や建物など、スケールの大きなものも、点群データにすることで、分かりやすく展示できると思います。予算が限られているので、数千万円もする3Dスキャナーは難しい。しかし、Focus 3Dは低コストなので導入が実現できました」(森嶋氏)。

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栃木県立博物館(上)の入り口前で3D計測のデモンストレーションをするFocus 3D(下)

栃木県立博物館(上)の入り口前で3D計測のデモンストレーションをするFocus 3D(下)

栃木県立博物館の玄関周辺を計測した点群データ

栃木県立博物館の玄関周辺を計測した点群データ

森嶋氏は、数年前に奈良文化財研究所でFocus 3Dが使われているのを見て、その存在を知ったという。ウェブサイトにもFocus 3Dを使った文化財調査などの事例が多く紹介されていたことも、導入を後押しした。

   古墳の内部や建物のデジタルアーカイブも

栃木県立博物館では、Focus 3Dの用途として様々な文化財の記録や展示を構想している。その1つは、歴史的建物の姿を3Dデータとして残すデジタルアーカイブによる保存だ。

「創業時の古いビルをデータとして残したいという企業からの相談などが増えてきました。実物の建物を保存するのは、土地の有効利用に制約があったり、維持管理に膨大なコストがかかったりと難しい面もあります。その点、3Dスキャナーによって点群データを残しておくと、建物が解体されてもいつでも当時の様子が体験できます。ヘッドマウントディスプレーを使うと、実物大でウオークスルーすることもできるでしょう」(森嶋氏)。

Focus 3Dは点群計測と同時に写真撮影も行い、点群に色を付けることができる。建物の形状だけでなく、色やテクスチャーもそのまま保存できるので、博物館の展示にも使いやすそうだ。

また、古墳や石室などの調査記録は、これまで図面や写真で残してきた。しかし、写真はひずみがあり、図面は要所の寸法しか記録できない。3Dスキャナーで点群データを残しておくと、後から必要な部分の寸法を測ったり、正確な形状を観察したりと、記録の情報量が大幅に高まる。

栃木県博物館では、同県壬生町にある車塚古墳の墳丘や横穴式石室の内部を3Dスキャナーで計測した。

Focus 3Dによる栃木県壬生町車塚古墳の計測作業。マーカーを使って古墳全体を計測

Focus 3Dによる栃木県壬生町車塚古墳の計測作業。マーカーを使って古墳全体を計測

車塚古墳の横穴式石室の3D計測作業

車塚古墳の横穴式石室の3D計測作業

   専門家でない職員も簡単に使いこなせる

車塚古墳などの計測は、墳丘の横や石室内部などを数カ所にFocus 3Dを据え付けて計測した複数の点群データを1つにまとめる作業もあった。

「点群の合成作業は、Focus 3Dに付属している『SCENE』というソフトウエアを使って、博物館の職員自身が行っています。特に3D計測の専門家というわけではありませんが、ちゃんと使いこなせています」と森嶋氏。

「Focus 3Dは軽量でコンパクトなので、山などに持って行くときも楽ですし、傾斜地に設置しても倒れる危険が少ないので安心です」(同)。

今後、栃木県立博物館では3Dスキャナーによって計測した文化財の点群データを利用し、3Dプリンターによって模型や複製を作ることも行っている。

例えば、古い屋根瓦の端面に彫られたハスの花の彫刻を点群データ化し、高さ方向を強調して3Dプリンターで縮小出力する。それを型にして石こうで模型を作るといった使い方だ。

来館者に模型に色を塗ってもらうなどのイベントを行っているという。

古い屋根瓦に彫られたハスの花の彫刻

古い屋根瓦に彫られたハスの花の彫刻

3Dスキャナーで計測し、3Dプリンターで縮小出力した型で作った石こうの模型

3Dスキャナーで計測し、3Dプリンターで縮小出力した型で作った石こうの模型

博物館にFocus 3Dなどの3Dスキャナーがあると、貴重な文化財や建物を高精度で記録したり、来館者に対して歴史や文化の遺産を魅力的に展示したりするという新しい取り組みが広がりそうだ。

●栃木県立博物館について
20160820-FARO-13栃木の郷土や動植物、暮らしなどの自然や文化などに関する資料を収めた総合博物館。各地を訪れて調査研究する見学会や観察会などのイベント、子どもを対象にした体験学習などにも力を入れている。昭和57年(1982年)10月に開館。
〒320-0865  栃木県宇都宮市睦町2-2
Tel: 028-634-1311(代)  Fax: 028-634-1310
http://www.muse.pref.tochigi.lg.jp/
【問い合わせ】
ファロージャパン株式会社 (FARO Japan, Inc.)
〒480-1144 愛知県長久手市熊田716
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