北海道の沢口産業が150万円でマシンガイダンスを自作
「快測ナビ Std」を活用し、低コストで情報化施工(建設システム)

2016年10月1日

重機のオペレーターが切土や盛土の3Dデータを見ながら施工する「マシンガイダンスシステム」の導入には、1000万円近い投資が必要だ。ところが北海道湧別町の沢口産業は、約150万円という低コストで同様のシステムを自作した。建設システムのスマート施工システム「快測ナビ Std」を、独自のアイデアで活用したのだ。

「快測ナビ Std」を使って自作したマシンガイダンスシステムによる法面仕上げ作業

「快測ナビ Std」を使って自作したマシンガイダンスシステムによる法面仕上げ作業

   自作のマシンガイダンスで法面仕上げ

北海道の東部を流れる湧別川の堤防を、1台のバックホーが3割勾配に黙々と仕上げていく。その周辺には勾配を示す丁張りや水糸はなく、バケットの高さを指示する作業員もいない。

バックホーの運転席には、タブレット端末が置かれ、オペレーターはバックホーの刃先の位置が仕上げ面に対してどんな位置関係にあるのかを、リアルタイムで確認しながら一人で施工することができる。

バックホーの運転席に設置されたタブレット端末(円内)

バックホーの運転席に設置されたタブレット端末(円内)

タブレット端末の画面には、仕上げ面に対するバケットの刃先位置がリアルタイムで表示されるので、丁張りがなくても正確な施工が可能だ

タブレット端末の画面には、仕上げ面に対するバケットの刃先位置がリアルタイムで表示されるので、丁張りがなくても正確な施工が可能だ

丁張りなしで法面を仕上げるバケット

丁張りなしで法面を仕上げるバケット

3Dモデル対応のトプコン製「LN-100(杭ナビ)」

3Dモデル対応のトプコン製「LN-100(杭ナビ)」

しかし、現場で使われていたバックホー、コマツ「HB205」は、マシンガイダンス仕様のものではない。実は丸建工業(本社:北海道調子府町)の1次下請けとして土工を担当する専門工事会社、沢口産業(本社:北海道湧別町)が、法面仕上げ用のマシンガイダンスシステムを自作し、施工に使っているのだ。

この道30年のベテランオペレーター、沢口産業土木課課長の向平友幸氏は「バケットの角度や位置がいつも正確に分かるので、安心だ。丁張りがなくても、自信をもって施工できる」と語る。

丁張りなしによる施工の安心感を語る沢口産業土木課課長の向平友幸氏

丁張りなしによる施工の安心感を語る沢口産業土木課課長の向平友幸氏

   「快測ナビ Std」でマシンガイダンスを作れないか

沢口産業は昨年11月、建設システムの「快測ナビ Std」という現場の次世代のスマート施工を実現する「どこでもナビ」を搭載した現場端末アプリを導入した。

「快測ナビ Std」とは、トプコン製の「LN-100(杭ナビ)」という3Dモデル対応のセンサー機器を使い、プリズムとタブレット端末で、盛土などの3Dモデルを簡単に確認しながら施工可能な「どこでもナビ」を搭載した画期的なシステムだ。

通常は3次元設計データを元に技術者がプリズムとタブレット端末を持ち、タブレットの画面の誘導に従って位置出しを行う、さらに地面にマーキングしたり、U字溝などのコンクリート2次製品を現場に設置したり、といった作業員でも簡単に扱えるシステムになっている。

「快測ナビ Std」の使用イメージ

「快測ナビ Std」の使用イメージ

その一方、2016年4月から国土交通省は「i-Construction」政策を推進しはじめた。その結果、盛土や切土の3Dモデルを、重機のオペレーターが運転席のモニターで見ながら施工する「マシンガイダンス」という情報化施工が全国的に普及しつつある。

しかし、マシンガイダンスに対応した重機を導入するためには1000万円近い投資が必要だ。その価格のため、沢口産業も導入は検討したものの、ためらっていた。

「そんなとき、千葉県の建設会社が快測ナビ Stdを使って、重機オペレーターと地上作業員の2人1組で丁張りなしの施工を行っているという記事と動画を見る機会を得た。そこで、快測ナビ
Stdを使ってマシンガイダンスと同じようなシステムが作れないかと考えた」と、沢口産業土木部課長の丹野了氏は振り返る。(※記事の詳細は、2016年1月7日付けのサクセスストーリーを参照

マシンガイダンスシステムを自作した沢口産業土木部課長の丹野了氏

マシンガイダンスシステムを自作した沢口産業土木部課長の丹野了氏

   振り子式金具を自作し、コストは約150万円だけ

そこで丹野氏がひらめいたのは、プリズムをバックホーに取り付け、タブレット端末の画面をオペレーター自らが見られるようにすることだった。この方法だと、丁張りや地上の作業員なしで、オペレーターだけによるバケットの位置を確認しながら、効率的に法面仕上げができる。

ここで、問題になったのは、地上の作業員がプリズム付きのピンポールを地盤に鉛直に立てたときと同じように、設計仕上げ法勾配時にバケットに取り付けたプリズムからバケットの接地位置までを鉛直に保持し、ピンポールと同じ距離に保つ必要があることだ。

「LN-100(杭ナビ)」からのレーザー光を反射するプリズム付きピンボール

「LN-100(杭ナビ)」からのレーザー光を反射するプリズム付きピンボール

バケットに取り付けたプリズム(右)から地盤面までの鉛直距離が同じように取り付ける必要があった

バケットに取り付けたプリズム(右)から地盤面までの鉛直距離が同じように取り付ける必要があった

そこで丹野氏は、バケットの底面が3割勾配の角度になったとき、オペレーターに知らせる振り子式の目印を考案した。常に鉛直方向を指す振り子と、バケットに固定したプリズムにそれぞれ目印を取り付け、両方の位置がピタリと並んだとき、バケットが3割勾配に合っているというわけだ。

バケットに取り付けられたプリズムと振り子の目印。目印の位置が合えばバケットの角度が3割勾配になったことを示す

バケットに取り付けられたプリズムと振り子の目印。目印の位置が合えばバケットの角度が3割勾配になったことを示す

端材を利用して自作したプリズム取り付け金具

端材を利用して自作したプリズム取り付け金具

沢口産業では重機整備などを行う工場を持っているため、プリズム取り付け金具や振り子などは端材を利用して自作した。

その結果、このマシンガイダンスシステムの作成にかかったコストは、快測ナビとLN-100の導入にかかった約150万円だけで済んだ。

   「予想以上の高精度に驚いた」

「簡単な仕組みだし、精度は4cmくらいに収まればいいだろうと考えていた。しかし、実際に施工してみると精度は2cmくらいになった。予想以上の高精度に自分でも驚いている」と丹野氏は言う。

自作のマシンガイダンスで施工した3割勾配の法面。精度は2cmくらいに収まった

自作のマシンガイダンスで施工した3割勾配の法面。精度は2cmくらいに収まった

施工に使用した現場の3Dモデル(デキスパートの現場大将で作成)

施工に使用した現場の3Dモデル(デキスパートの現場大将で作成)

1000万円もかかるならマシンガイダンスの導入も二の足を踏んでしまいそうだが、現場技術者のアイデアがあれば、150万円程度(快測ナビ+杭ナビ)でも同様の情報化施工が行えることを、沢口産業の技術者やオペレーターは実証した。

今回、使った振り子式のプリズム取り付け金具は、3割勾配の法面専用に設計・制作したものだ。丹野氏は、異なる勾配の法面や、溝掘りなど、他の現場でもこのシステムを使えるようにさらに、改良を加えている。

現場を訪れた関係者一堂と

現場を訪れた関係者一堂と

どこでもナビ「マシンガイダンス編」

 【問い合わせ】
 株式会社建設システム
 〒417-0862 静岡県富士市石坂312-1
TEL: 0545-23-2600
快測ナビ特設サイト:http://www.kentem.jp/products/ksnavistd/