BIMの目的を明確にし、確実に成果を出す
ROIを最大化した鉄建建設のBIM活用(オートデスク)

2018年7月2日

鉄建建設は2015年にオートデスクのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトを導入し、ホテル建設や駅改良工事の施工段階で積極的に活用。スムーズな合意形成や施工現場での手戻り防止成果を上げ、ムダのないBIM活用でROI(費用対効果)を最大化している。確実に成果を出せる秘密は、後発企業ならではの目的を明確にしたBIM活用にあった。

発足からわずか1年でBIM活用による様々な成果を上げてきた鉄建建設 建築技術部 BIM推進グループのオフィス

発足からわずか1年でBIM活用による様々な成果を上げてきた鉄建建設 建築技術部 BIM推進グループのオフィス

   竣工検査日を合わせて外観シミュレーション

「外壁の色決めをするための外観シミュレーションは、オートデスクのRevitを使って2018年2月14日の午前、午後の時間帯に合わせて作りました」と語るのは、鉄建建設 建築技術部 BIM推進グループリーダーの松本賢二郎氏だ。

この日をターゲットに外観シミュレーションを行った理由は、鉄建建設が施工BIM導入のモデル現場第1号となったホテルの竣工検査に予定されている日だったからだ。

「建物の正面は、午前と午後とで太陽光の当たり方が変わり、見た目の色調や濃淡が大きく変わります。そこで時刻ごとに外観シミュレーションを行い、竣工検査の日に予想される外観の見え方をシミュレーションしました」と松本氏は説明する。

 

竣工検査日の2018年2月14日を想定して行ったRevitによる外観シミュレーション。左上から時計回りに10時、12時、14時、16時の状態を示している

竣工検査日の2018年2月14日を想定して行ったRevitによる外観シミュレーション。左上から時計回りに10時、12時、14時、16時の状態を示している

同社がBIMソフトを導入したのは、2015年と同業他社の中では“後発組”だった。そして2017年に、BIMを現場などに展開するため、建築技術部の中にスタッフ5人からなる建築技術部BIM推進グループを立ち上げた。

短期間で他社に追いつくため、徹底しているのがBIM活用の目的をいつも明確にすることだ。外観シミュレーションの設定日時にこだわったのも、その一例だ。

BIMモデルの特徴を生かし、いろいろな方向から建物の見え方や形状、色なども確認した。「何度も修正や確認を行いながら迅速に色決めを進めることができました。ホテルの裏側の地形は傾斜しており、見る位置によって隠れる部分もありますが、それを含めて完成時の外観を把握できました」と、建築技術部BIM推進グループの本田瑛久氏は振り返る。

ホテル裏の傾斜した隣地から見え隠れする外観もBIMで再現した

ホテル裏の傾斜した隣地から見え隠れする外観もBIMで再現した

このほか、1階のエントランス付近の色やレイアウトなども、内観BIMモデルを使って確認した。

表面仕上げ材の色やパターンのほか、折り上げ天井の形や照明、家具の配置、そして雰囲気などを、ホテルを運営するうえでいろいろな視点から、納得いくまで確認してもらったのだ。そこには、設計時に運営時を想定したフロントローディングを、ホテル運用側の様々名視点で行うという明確な目的があった。

   手戻りを防ぐため基礎躯体の納まりをBIMで確認

このほか、このホテルのプロジェクトでは、意匠のほか構造や設備、施工計画など、目的にこだわった様々なシミュレーションをRevitやNavisworksで行った。その一つが基礎躯体の形状確認やコンクリート打ち継ぎ位置の確認だ。

1階には男女別の大浴場が設置されており、浴槽周りの基礎躯体に微妙な段差がある。建物の基礎という重要部分だけに、鉄筋や設備の貫通部分も多く、施工の手戻りは許されない。

「従来の2D図面だと、基礎伏図や土間伏図を見ながら、地中梁の高さやふかし、躯体の打ち継ぎ位置などを確認しながら施工計画を立てますが、細かな構造や段差を見落とす心配もあります。この部分をBIMモデル化することにより、協力会社と納まりの確認や躯体の数量算出がスムーズに行えました」と、建築技術部BIM推進グループの甚野祐司氏は語る。

ホテルの基礎躯体。右上端部分に男女別の浴室が設けられるため、その周辺に微妙な段差がある

ホテルの基礎躯体。右上端部分に男女別の浴室が設けられるため、その周辺に微妙な段差がある

2Dの基礎伏図(左)と土間伏図(右)で表した浴室付近の基礎躯体。地中梁の段差やふかしが複雑なため、わかりにくい

2Dの基礎伏図(左)と土間伏図(右)で表した浴室付近の基礎躯体。地中梁の段差やふかしが複雑なため、わかりにくい

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BIMモデルで表した浴室周辺の基礎躯体。構造や段差などが一目でわかる

BIMモデルで表した浴室周辺の基礎躯体。構造や段差などが一目でわかる

また、基礎躯体と鉄骨柱をつなぐ部分は、基礎の配筋とアンカーボルトが密集し、配筋の納まりが特に重要だ。そこでBIMモデルによって配筋やアンカーボルトを1本1本、3次元モデル化し、太さや曲率、鉄筋の「あき」や「かぶり」を満たしたうえで、配筋が納まることを確認した。●

BIMモデルで配筋やアンカーボルトの納まりを確認した基礎躯体と鉄骨柱の接続部

BIMモデルで配筋やアンカーボルトの納まりを確認した基礎躯体と鉄骨柱の接続部

   クレーン作業の干渉確認と安全率をBIMで確保

このホテルの工事では、限られた敷地内でのクレーン作業をスムーズかつ安全に行うため、BIMで鉄骨建方計画のシミュレーションを行った。

鉄骨の組み立てからボルト締め、床版の型枠となるデッキスラブの敷設、そして足場の設置と、複数の協力会社が連携し、一定の施工速度を保ちながら最上階まで立ち上げる施工計画をBIMで作成。現場では、翌日の施工に備えた打ち合わせを行ったのだ。

複数の協力会社との作業打ち合わせに使用したBIMモデル

複数の協力会社との作業打ち合わせに使用したBIMモデル

さらに、鉄骨の組み立て手順を1ステップずつBIMモデルで検証し、クレーンのブームと鉄骨の干渉確認や、ブームの傾きを考慮した作業の安全率を求めるといった定量的な検討も行った。

クレーン作業の安全率をBIMモデルで求めた例

クレーン作業の安全率をBIMモデルで求めた例

また、橋上駅舎工事において施工計画検討から実施工までBIMモデルを活用した。この現場では、狭い作業ヤードで長スパンの梁をより安全にかつスムーズに近隣施設や既設の駅設備と干渉しないよう施工できるかを検討する必要があった。

「そこで、橋上駅舎における線路上空の電車線設備との離隔距離確認や吊り荷の軌跡検討、梁の荷振れ対策などをBIMによる作業シミュレーションを行い、安全に計画通り施工ができました」と松本氏は語る。

特に既設の電車線設備と干渉しないか事前に把握する事で、事前検討した手順で段取りを行い、スムーズにこなせるようになったのだ。これまでなら、試行錯誤が必要だった施工検討も、現場全体を可視化する事でより安全で詳細な施工計画を立案する事ができた。

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BIMによる既設電車線設備との干渉確認を行った

BIMによる既設電車線設備との干渉確認を行った

ホーム上から見た鉄骨建方の状況をBIMにより事前確認した

ホーム上から見た鉄骨建方の状況をBIMにより事前確認した

このほか、駅などのリニューアル工事では、既存建物や土木構造物を3Dレーザースキャナーで計測し、現場での測量作業の削減や、既存設備との干渉を避けた施工計画を行うことで、生産性を高めるなどの取り組みも行っていく方針だ。

「駅改良工事などでは、電車の終電から始発までの2~3時間しか作業ができないこともあります。特に線路上空の工事においては安全に施工するための諸手続きが必要なために、作業時間がさらに短くなります。その為今後もBIMによる施工シミュレーションは大きな力を発揮します」と松本氏は言う。

鉄建建設は、建築技術部BIM推進グループ発足からわずか1年で、目的を明確にしたBIM活用によって成果を上げ、今後も急ピッチでBIM活用の範囲を拡大していきそうだ。

以前は考えられなかったようなスピードだが、その背景には、BIM先行企業が試行錯誤しながら気づいてきたノウハウや、長年の改良によって安価で使いやすくなったRevitやNavisworksなどのBIMソフトやハードウエアなどを、選んで使える後発企業ならではのメリットもありそうだ。

鉄建建設 建築技術部 BIM推進グループのメンバー。左から本田瑛久氏、リーダーの松本賢二郎氏、建築技術部課長の甚野祐司氏、宇野満子氏、野畑茂雄氏

鉄建建設 建築技術部 BIM推進グループのメンバー。左から本田瑛久氏、リーダーの松本賢二郎氏、建築技術部課長の甚野祐司氏、宇野満子氏、野畑茂雄氏

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