大成建設がビルのリニューアル工事をBIMで大幅効率化
Revitですべての施工図を作成し、FMへとつなぐ(オートデスク)

2018年11月26日

大成建設は同社横浜支店ビルのリニューアル工事で、オートデスクのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト「Revit」をフル活用。すべての施工図をRevitで作成したことで既存・新設の整合性が効率的に調整できたほか、支店各部署の合意形成がスムーズに進んだ。手戻り作業も削減したため、設計から工事終了までをわずか7カ月で完了できた。その竣工BIMモデルは、その後のFM(ファシリティー・マネジメント)にも引き継がれている。

リニューアル後の大成建設横浜支店ビルエントランス

リニューアル後の大成建設横浜支店ビルエントランス

 

   すべての施工図をBIMモデルから切り出す

「すべての施工図をBIMモデルから切り出しました。図面上の図形はもちろん、文字や数字なども、BIMモデルの属性情報が表示されたものです」と、大成建設横浜支店建築部プロジェクト推進センターの川上克二課長は説明する。

大成建設は2017年2月から8月までの間に、同社横浜支店が入居するビル(1973年竣工 旧称:第二有楽ビル)のオフィスフロアやエレベーターホール、トイレなどを大幅にリニューアルした。川上氏はこの工事でBIMマネージャーを務めたのだ。

大成建設横浜支店建築部プロジェクト推進センター 川上 克二課長

大成建設横浜支店建築部プロジェクト推進センター
川上 克二課長

「改修面積は約4700m2にも上りました。オートデスクのBIMソフト『Revit』をフルに活用した結果、土木部や営業部、管理部、安全・環境部など支店内の各部署の合意形成がスムーズに行われ、設計から施工までをわずか7カ月で終えることができました」(川上氏)。

まず行ったのは既存ビルをCAD化することだった。幸い、1973年竣工時の手がき図面は残っていたものの、築44年のオフィスビルともなると、さまざまな改修工事などが行われ、図面と現状が違っていることも予想された。

そこで既存の内装を解体後、現場を実測したデータでCADデータ修正した。「図面では梁幅が500mmとなっていたのに、実際は800mmの部分もありました」と川上氏は語る。

この図面をもとにリニューアル用の平面詳細図を作成し、さらに施工順序に合わせてRevitで詳細なBIMモデルを作成していった。間仕切り壁や建具、設備などのリアルな形状や属性情報を入力し、LOD(モデルの詳細度)が300~350の施工用の建築BIMモデルができあがった。

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BIMモデル化した大成建設横浜支店ビル

BIMモデル化した大成建設横浜支店ビル

   設備との総合BIMモデルで設計検証

建築のBIMモデル作成と同時並行で、空調・衛生設備は大成設備が、電気設備は篠原電機工業がそれぞれ設備設計用BIMソフトを使って施工図レベルのBIMモデルを作成した。

これらの設備モデルは、BIMモデル用のデータ交換標準「IFC」形式のファイルによって建築モデルと合体させて「総合BIMモデル」を作成した。従来は2D図面で作っていた総合図を、BIMモデル化したものだ。

大成建設横浜支店建築部プロジェクト推進センター 菅野 友理氏

大成建設横浜支店建築部プロジェクト推進センター
菅野 友理氏

今回のリニューアル工事に伴い、執務室は天井板を撤去して、ダクトや配管などが見通せるようにした。そこでBIMならではの思わぬ発見があった。

「既存の梁下にダクトを通したとき、ダクト下のレベルが2mクラスになると、オフィスとしてはかなりの圧迫感があることがわかりました」と、BIMオペレーターを務めた大成建設横浜支店建築部プロジェクト推進センターの菅野友理氏は語る。

「そこでダクトルートを見直すとともに、梁下の円形ダクトは偏平の角ダクトに変更することによって、圧迫感のないすっきりしたスケルトン天井にすることができました」(菅野氏)。

この問題は縮尺された平面図や断面図だけではわかりにくかったに違いない。机や人を配置した3Dパースをいろいろな方向から見ることによって、設計段階で修正でき、施工の手戻りを防げたものだ。

このほか、トイレ個室の狭小感の確認にもBIMが威力を発揮した。原設計では個室の扉と、既存のRC壁との距離が短く、大便器スペースがかなり狭かった。そこでRC壁を撤去して薄い遮音壁を設けることでスペースを広げたのだ。

従来の壁厚分くらいが広がるという微妙な変化だったが、BIMモデルから切り出した断面図に人のモデルを配置して、便器に座ったり立ち上がったりするときの動きやすさを検証したほか、BIMモデルでデジタルモックアップを作り、関係者全員で検証した結果、改善案はRC壁の撤去というコストに見合った効果が得られることが確認でき、その場で採用することが決まった。

トイレ個室の改善案をBIMモデルによるデジタルモックアップで検証したプロセス

トイレ個室の改善案をBIMモデルによるデジタルモックアップで検証したプロセス

建築や設備の施工用BIMモデルを作っていく過程で、大成建設の社内では総合定例会議、サブコンや専門工事会社を交えた分科会が開かれ、それぞれBIMモデルを使った施工図の調整が行われた。その最後に「BIMモデル合意」が行われ、施工段階へと移っていった。

大成建設社内で行われた総合定例会議(左)とサブコンなどを交えた分科会(右)では、それぞれBIMを活用して合意形成を円滑に行った

大成建設社内で行われた総合定例会議(左)とサブコンなどを交えた分科会(右)では、それぞれBIMを活用して合意形成を円滑に行った

   独自開発のツールで施工図作成を省力化

現場での施工に使う平面詳細図や天井伏せ図、展開図、タイル割り付け図など合計54枚の図面を、このBIMモデルから切り出して作成した。縮尺は20分の1から50分の1だ。

BIMモデルから図面を作成すると、平面、立面、断面の整合性が自動的にとれるというメリットがある半面、従来の2次元CADで作った図面に比べると、やや見劣りするのは否めなかった。

しかし、このリニューアル工事で大成建設がBIMモデルから切り出した図面は、全く遜色がなかった。その秘密は、同社がRevit用に独自開発した「T-REXアドインツール」のおかげだ。

「T-REXアドインツールを使うと、Revitの画面上で平面図を描いていくだけで、断面図や展開図が自動的に作成されていきます。それがリアルタイムで図面にも反映される仕組みです。図面の品質を上げるためにテンプレートやファミリも開発しました」と、大成建設設計本部テクニカルデザイングループプロジェクトリーダーの高取昭浩氏は説明する。

建築部の川上課長も「施工時にも、設計変更は必ず起こる。それを確実にしかも容易に各図面に反映できるようになったのも、T-REXアドインツールの成果だ」と振り返る。

T-REXアドインツールを使って、RevitのBIMモデルから様々な施工図を自動作成するイメージ

T-REXアドインツールを使って、RevitのBIMモデルから様々な施工図を自動作成するイメージ

Revitから自動出力された各図面は2DCADの図面と同等以上のクオリティー

Revitから自動出力された各図面は2DCADの図面と同等以上のクオリティー

すべての施工図をBIMモデルから作成するということは、図面上に表記される数値や文字情報はBIMモデルを作成する段階で入力しておく必要がある。そこで、大成建設はT-REXアドインツールの開発と併せて、BIMモデルの作成方法についての社内規格を定め、それに従ってモデリング作業を行うようにした。

   部署ごとの細かい要望もBIMで最適化

横浜支店ビルには、建築部や土木部、営業部、管理部、安全・環境部などの部署があり、今回のリニューアルでは、それぞれの細かい要望もBIMで検討しながら最適化していった。

例えば、新設された2~3階を貫く内部階段は、周囲がガラスで覆われているため、階段側からと執務室側からガラス越しにどんな見え方をするのかをBIMモデルで確認した。

2階と3階をつなぐ内部階段は、ガラス越しの見え方をBIMモデルで確認した

2階と3階をつなぐ内部階段は、ガラス越しの見え方をBIMモデルで確認した

また、部署内の会議などで使う天井吊りモニターの設置要望があった部署では、設置場所や高さ、モニターの大きさ、そして見える範囲の検証をBIMモデルで行った結果、スムーズに合意形成が図れた。

天井吊りモニターの設置場所や見え方などもBIMで確認した

天井吊りモニターの設置場所や見え方などもBIMで確認した

建設業ではどんなときでも、安全を最も重視する。そこで安全・環境部長席から神棚が常に見通せるかどうか確認したいという要望にも、BIMで応えたのだ。

このほか、完成時の建物を机やイスなどの家具付きで再現したBIMモデルのデータを、バーチャルリアルティー用ソフトに取り込んで動画を作成し、オフィス内をストレスなく歩き回れるかも、支店長や支店幹部出席の会議で説明し、イメージを共有した。

安全・環境部長席から神棚が常に見えるかについても確認した

安全・環境部長席から神棚が常に見えるかについても確認した

オフィス内をスムーズに歩き回れるかどうかを確認した動画

オフィス内をスムーズに歩き回れるかどうかを確認した動画

   竣工BIMモデルをFM業務に引き継ぐ

大成建設横浜支店ビルのリニューアル工事は予定通り、2017年8月末に無事、竣工し、各部署は新しいオフィスで仕事を始めた。同時に、BIMモデルも竣工時にはすでに変更・修正を完了することができた。

BIMによるデジタルモックアップ(上)と完成した建物の写真(下)。設計時のイメージ通りに仕上がった

BIMによるデジタルモックアップ(上)と完成した建物の写真(下)。設計時のイメージ通りに仕上がった

しかし、BIMモデルの役割はこれで終わったわけではない。今度は建物の運用・維持管理の業務に必要な情報を入力し、建物管理を行う本社営業推進本部のライフケア推進部FM推進室が引き続き、BIMによるFM業務に使い始めたのだ。

リニューアル工事でのBIM活用は、まず既存の建物ありきのBIMモデル作成が必要になるという点で新設とは違った難しさがある。そして、業務を行いながらのリニューアル工事は短工期であるほどよく、合意形成の時間や作業の手戻りに時間をかけるわけにはいかない。

今回の工事は、BIMによる合意形成や施工時の問題点を事前に発見するなど、BIMのフロントローディング効果が最大限に生かされた。そしてこれまで紙図面しか残っていなかったビルで、BIMによるFMまで行えるようになった。

BIMの活用により、築44年のオフィスビルは、建物自体だけでなく情報面でも最新の仕様に生まれ変わり、IoT(モノのインターネット)化へと進む建物管理にいつでも対応できるようになったのだ。

リニューアルから約1年後、現場で再会した工事関係者たち。左から横浜支店建築部工事長の田中和夫氏、建築本部技術部BIM推進室次長の松永文彦氏、横浜支店建築部PSC課長の川上克二氏、横浜支店建築部PSCの菅野友理氏、横浜支店建築部工事部長兼管理室長の植谷忠興氏、設計本部テクニカルデザイン部BIMソリューション室長の高取昭浩氏(役職は2018年10月31日現在)

リニューアルから約1年後、現場で再会した工事関係者たち。左から横浜支店建築部工事長の田中和夫氏、建築本部技術部BIM推進室次長の松永文彦氏、横浜支店建築部PSC課長の川上克二氏、横浜支店建築部PSCの菅野友理氏、横浜支店建築部工事部長兼管理室長の植谷忠興氏、設計本部テクニカルデザイン部BIMソリューション室長の高取昭浩氏(役職は2018年10月31日現在)

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