スマートセンサ、AI、点群計測でコンクリート品質を見える化
鳥取西道路 重山トンネルで施工管理を革新(日本国土開発コンソーシアム)

2019年2月21日

鳥取市内で日本国土開発が施工中の鳥取西道路 重山トンネルでは、表面を覆う「覆工コンクリート」の打設・締め固めから強度、脱型後の評価までを、ICT(情報通信技術)によって見える化した。これまでベテラン技術者の「経験とカン」が頼りだった覆工コンクリートの品質管理を、スマートセンサやAI(人工知能)、3Dレーザースキャナなどによって定量的な管理へと革新したのだ。現場の生産性向上だけでなく、省人化や技術伝承にも効果を発揮しそうだ。

スマートセンサやAI、3Dレーザースキャナなどを活用し、覆工コンクリートの品質管理を高度化した鳥取西道路 重山トンネルの現場

スマートセンサやAI、3Dレーザースキャナなどを活用し、覆工コンクリートの品質管理を高度化した鳥取西道路 重山トンネルの現場

   締固め不足はその場で解決

「78番センサ付近のコンクリートが、まだ十分締め固められていないようだ。バイブレータをもう一度頼む」―――鳥取市内で施工中の鳥取西道路 重山トンネル(全長116m)では、覆工コンクリートの打設や締固めなどの作業中、「スマートセンサ」から送られてくる情報が施工品質を確保するのに大きな力となった。

アジテータートラックで運ばれてきた生コンクリートをコンクリートポンプ車がスライドセントルに圧送

アジテータートラックで運ばれてきた生コンクリートをコンクリートポンプ車がスライドセントルに圧送

スライドセントルの窓からバイブレータを差し込み、締め固める作業員たち

スライドセントルの窓からバイブレータを差し込み、締め固める作業員たち

覆工コンクリートとは、トンネルを掘削し、地山を「支保工」と呼ばれる鋼製材や吹き付けコンクリートで補強した後、その内側に打設される壁状のコンクリート構造物である。

この現場では、トンネルの内空側を「スライドセントル」という長さ10.5mの移動式型枠で覆いながら、その裏側に生コンクリートを充填していった。

「このスライドセントルには105カ所にスマートセンサが付いています。感知部は生コンクリートと直接接触し、静電容量値の変化や、バイブレータによる振動締固め時の加速度、そしてコンクリートの温度をリアルタイムで計測できるようになっています」と、施工を担当する日本国土開発重山トンネル作業所の高橋亨所長は説明する。

このスマートセンサは、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻の野口貴文教授と児玉株式会社が共同開発し製品化したものだ。

スライドセントルの内側には、1.5m程度の間隔で105台もの「スマートセンサ」が取付けられている

スライドセントルの内側には、1.5m程度の間隔で105台もの「スマートセンサ」が取付けられている

センサの感知部は穴を通じて直接、生コンクリートに接触し、静電容量や加速度、温度を計測する

センサの感知部は穴を通じて直接、生コンクリートに接触し、静電容量や加速度、温度を計測する

センサ本体でも、コンクリートが検知されると赤いランプが点灯するのでわかりやすい

センサ本体でも、コンクリートが検知されると赤いランプが点灯するのでわかりやすい

施工管理者は、手元の現場用パソコンに生コンクリートの充填状況や締固め状況が色分け表示される。締固めなどが不十分な場合は、その場でリアルタイムに指示を出し、品質を確保できるのだ。

これまではスライドセントルのところどころに空いた窓からベテラン技術者が打設中のコンクリート面をのぞき込み、長年の「経験とカン」によって品質の善し悪しを判断していたが、スマートセンサによってコンクリートの状態が見える化されたおかげで、誰もが品質管理を行えるようになった。

生コンクリート打設中、現場用パソコンでスマートセンサのデータを見守る施工管理技術者

生コンクリート打設中、現場用パソコンでスマートセンサのデータを見守る施工管理技術者

パソコンの画面にはスライドセントル内の生コンクリート充填状況や締固め状況などがリアルタイムで色分け表示される

パソコンの画面にはスライドセントル内の生コンクリート充填状況や締固め状況などがリアルタイムで色分け表示される

スマートセンサのデータは、コンクリートの打ち重ね時間の管理やコンクリート打設後の強度推定などにも使われ、コールドジョイントと呼ばれる不連続面の発生を防いだり、適切な脱型時期の判定を行ったりするのにも役立てられた。

   AIでコンクリート表面の仕上がりを自動評価

覆工コンクリート工事で重要なのは、脱型後の表面を観察・評価して施工方法の改善に生かしていくことだ。

従来、この評価は表面の気泡の数や大きさを技術者が目視評価して、グレイド分けを行う「個々の技術者の経験と技量」の世界だった。

しかし、重山トンネルの現場では覆工コンクリートの表面を写真撮影し、その画像データをAI(人工知能)によって判定する「コンクリート表面評価システム」を導入した。

コンクリートの表面をスマートフォンで撮影する

コンクリートの表面をスマートフォンで撮影する

スマホで撮影した写真は現場用タブレットに送られ、AIによって4段階評価が行われる

スマホで撮影した写真は現場用タブレットに送られ、AIによって4段階評価が行われる

このシステムは、AIの「ディープラーニング」技術を使い、日本国土開発と科学情報システムズが共同開発したものだ。

現場のコンクリート表面を撮影した写真と、専門家による4段階評価結果をひと組にした大量の「教師データ」をAIに学習させる。その結果、AIが画像データから「特徴量」を自動的に抽出し、評価結果と結びつけることで、専門家と同様な基準で評価が行えるようになるのだ。

スライドセントルによる生コンクリート打設時に、スマートセンサで入念な締め固め管理を行った重山トンネルの覆工コンクリートをこのシステムで評価した結果、ほとんどが3または4という高品質な仕上がりであることが確認できた。

   車載3Dスキャナーによる出来形計測も実施

施工が終わった後も、重山トンネルの覆工コンクリートの品質管理は続く。MMS(モービル・マッピング・システム)で覆工コンクリートの内面形状を3D計測したのだ。計測作業はアジア航測が担当した。

3D計測に使う3Dレーザースキャナとは、毎秒数十万~百万回のレーザ光線を少しずつ角度を変えながら発射し、構造物の表面座標を高精度に計測、無数の「点群データ」として記録する測量機器だ。

MMSはこの3Dレーザースキャナをクルマに搭載し、通常の速度で走行しながら点群計測を行えるようにしたものだ。そのため、トンネルが供用された後も、一般の車両に混じって走行しながらトンネル内面を計測できる。

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MMSによるトンネル内面計測の状況(上)と、計測された点群データ(下)

MMSによるトンネル内面計測の状況(上)と、計測された点群データ(下)

「トンネル完成直後に3D計測する意味は初期データを残しておくためです。将来、トンネル内部を点群計測したとき、この初期データと比較することで覆工コンクリートが変形している場所がわかるからです」と日本国土開発 土木事業本部技術部生産技術グループ担当部長の佐野健彦氏は説明する。

従来は一定間隔ごとにトンネルの幅や高さをメジャーテープなどで計測するだけだったので、こうした精密な面的管理は難しかった。

覆工コンクリートの初期形状と経年後の形状を比較したヒートマップのイメージ。せり出している部分と引っ込んでいる部分が色分けによってひと目でわかる

覆工コンクリートの初期形状と経年後の形状を比較したヒートマップのイメージ。せり出している部分と引っ込んでいる部分が色分けによってひと目でわかる

   他の工事や維持管理に引き継がれるクラウド

覆工コンクリートの打設時にスマートセンサで記録したデータやAIによる表面品質評価のデータ、そしてMMSによる3D点群データは、クラウドシステムに蓄積され、施工でのリアルタイムな活用のほか、IDとパスワードが発行された関係者間での情報共有に活用している。

このようなクラウドシステムによるデータ蓄積・共有は、将来的には、現場条件が似た工事を行う際の適切な施工計画などに有効活用されるのだ。

ベテラン技術者の経験とカンに頼っていた山岳トンネル工事のノウハウを、客観的なデータで残すことにより、技術伝承にも大いに役立ちそうだ。さらにAIやロボットによる施工や、工事現場のIoT(モノのインターネット)化にも、貴重なデータとなりそうだ。

重山トンネルの施工に携わった技術者たち

重山トンネルの施工に携わった技術者たち

この工事は、内閣府の「官民研究開発投資拡大プログラム」(略称:PRISM)を活用し、国土交通省が実施する「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」の試行対象として採択された。

施工を担当する日本国土開発は、東京大学、科学情報システムズ、児玉、アジア航測とコンソーシアム(企業連合)を組織し、「品質管理の高度化」という課題に挑戦した。

 【コンソーシアム構成員】
日本国土開発株式会社(東京都港区赤坂4丁目9番9号)

国立大学法人東京大学(東京都文京区本郷7丁目3番1号)

株式会社科学情報システムズ(横浜市神奈川区金港町2番地6)

児玉株式会社(大阪市中央区谷町7丁目5番8号)

アジア航測株式会社(東京都新宿区西新宿6丁目14番1号)

 
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