高画質のCG作成、意匠・構造・設備の統合、点群データの活用など、最近のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)活用は進化する一方だ。パソコンに限界を感じ始めたBIMユーザーにお勧めなのが、レノボのワークステーション「ThinkStation C20x」だ。2台のマルチコアプロセッサーを搭載したコンパクトなマシンは、これからのBIM活用にどう対応できるのか。最先端の建築ビジュアライゼーションの分野で活躍するworkscubeの川口聡代表に解説してもらった。
レノボのワークステーション「ThinkStation C20x」をBIMの建築ビジュアライゼーションで活用するworkcubeの川口聡代表 |
信頼のブランド、レノボが開発した「ThinkStation」
「これまでのパソコンでBIMソフトを使っている人が、マシンの限界を感じたとき、次のステップで使うマシンとしてお勧めなのが、ThinkStation C20xなどのワークステーションです」と語るのは、BIMモデルを使って高品質なCGやビジュアライゼーションなどの画像処理を専門に手がけるworkscube代表の川口聡氏だ。
ビジネスマンに愛用されているパソコン「ThinkPad」のメーカーとして、信頼のブランドを築いてきたレノボ・ジャパンは、BIMソフトによる設計などパワフルな処理能力が必要な業務用に「ThinkStation」シリーズというワークステーションを開発。2007年から販売している。
「最近のRevit ArchitectureやArchiCAD、3ds MaxなどのBIMソフトは数年前と違って、コンピューターに搭載されているCPUのコア数やグラフィックボードをフルに活用するものが増えてきました。デュアルコア、クアッドコアクラスのCPUを積んだパソコンだと、仕事にならないことがあります」(川口氏)。
パソコンに限界を感じたBIMユーザーにお勧めのワークステーション「レノボ ThinkStation C20x」 |
BIMの活用範囲も高度化している。以前は意匠設計用のBIMソフトで建物の3Dモデリングを行うだけでも先進的だったが、最近はさらに高品質のCGパースやアニメーションを内製化し、スピーディーに施主にプレゼンテーションしないと他社に後れをとってしまうこともある。
「以前はCGのレンダリングに一晩かけるようなことが当たり前に言われていましたが、そんな長いスパンでは設計作業の効率が落ちます。その点、ThinkStation C20xは最新のインテルのXeonプロセッサー5600番台を2基搭載しています。つまり6コアのCPUが2基あり、各コアを2分割して24スレッド分の処理パワーが発揮できるのです。クアッドコアのパソコンなら6台を1台にまとめたくらいパワーがありますので、レンダリングも6分の1程度の時間で完了します」と川口氏は言う。
3ds Max 2012で搭載されたNitrous ビューポートエンジンによる リアリスティック表示(上)とスケッチ描画(下)の例。表示パフォーマンスを得るためには、Quadro4000は必須だ |
Xeon 6コアのDualCPU+ハイパースレッディングにより24スレッドを100%使用してレンダリングしている |
ThinkStation C20xのパフォーマンスについて語る川口氏 |
大容量のBIMモデルにも対応するThinkStation
BIMの活用は意匠設計から、構造設計や設備設計まで広がってきた。これらのモデルを統合したり、構造部材をボルト1本までBIMでモデル化したりして、干渉チェックや施工シミュレーションなどを行うことも珍しくなくなっている。設備や複雑な構造部材のBIMモデルは容量が大きいだけでなく、隠線処理やシェーディングなどにも多くの処理を必要とする。
また、既設物件のリノベーションなどの設計では、「3Dレーザースキャナー」という測量機器で室内などを計測した数千万点もの「点群」データをBIMソフトに読み込み、BIMモデルへの変換や点群を背景にして設計を行うこともある。
測定機による3Dレーザースキャンの様子(左)と点群データの全体イメージ(右) |
Revit Architecture で点群データを読み込む |
Revit Architecture で点群データからBIMモデルを作成 (以上4点の撮影協力、データ協力:大浦工測株式会社、株式会社インテグラ) |
「最近のBIMソフトはグラフィックボードに3D画面表示の処理を受け持たせる『GPUコンピューティング』を採用するものが増えてきました。グラフィックボードを高性能のものに変えるだけで、BIMソフトの動作が驚くほど軽くなることがあります」(川口氏)。
グラフィックボードにも一般ユーザー向けのゲームソフト用や、プロ向けのCAD、CG用などいろいろな製品がある。また単に容量が大きければいいというものではない。BIMソフトの動作を速めるためには、コンピューターとうまく連携できる製品が必要だ。
「ThinkStationシリーズは、BIMユーザーの間で定評のあるNVIDIAのグラフィックボード『Quadro』シリーズが素直に動くように作られています。Quadroのドライバーがそのまま動くので、グラフィックボードの性能が100%発揮できます」(川口氏)。
ThinkStation C20xの場合、本体の24スレッドCPUとQuadro4000などの高性能グラフィックボードの組み合わせで、意匠、構造、設備の統合BIMモデルも難なく扱えるほか、点群を生かした次世代のBIM活用にも無理なく対応できる。さらに最大8台のモニターまで使えるので、いろいろな角度からBIMモデルを検証しながら作業できるのも魅力だ。
最近のBIMソフトはCPUだけでなくグラフィックボードによっても動作速度が大きくことなる |
コンパクトなThinkStationの実力とは
ThinkStation C20xのコンパクトな筐体(きょうたい)には、上級機種のThinkStation D20と同じマザーボードが納められ、24スレッドものパワーを発揮するデュアルCPUを内蔵している。しかし、ワークステーションとしての本格的な設計があらゆるところに採用されている。
「まず、ハードディスクの仕様からワークステーションは違います。電気店などで安く売られているパソコン用のものとは信頼性が違います。高温の原因となるハードディスクやグラフィックボード、CPUを冷却する気流は、それぞれ独立して筐体の内部を流れるようになっています。1日24時間、CPUを100%稼働させることを前提とした設計になっているのです」と川口氏は言う。
このほか、ThinkStationはファンの形状にもこだわっている。フクロウの羽根をモチーフにした「オウルブレード」という二重構造のファンにより、小型でも大きな風量でハードディスクなどを冷却できる。待機時は人のささやきより静かな約24dBと、静音性にも優れている。
ThinkStation C20xのコンパクトな筐体(左)。ハードディスクやグラフィックボード、CPUを効率よく冷却するトリプル・チャネル・エアフローを採用(右) |
レノボでは、ワークステーション設計を担当する専任チームがある。長年、プロ向きのヘビーデューティーなマシンについてのノウハウを蓄積した実力を持っている。
また、ワークステーションはサポート体制も手厚い。故障を連絡すると、翌営業日にはユーザーのもとに技術者が駆けつけ、修理を行ってくれる「翌営業日オンサイト対応」のサービスが購入後、3年間標準で付いているのだ。
「パソコンとワークステーションの違いは、ズバリ安心感にあります。いつ故障しても翌日には直してもらえるワークステーションがあってこそ、BIMユーザーは作業に集中できるのです」(川口氏)。
ビジュアライゼーションにも強い“川口モデル”
川口氏はThinkStationシリーズのワークステーションと、Quadroシリーズのグラフィックボードを数機種ずつ使い、Revit Architectureや3ds Maxによるウォークスルーアニメーションの作成や高画質レンダリングなどの処理時間を比較した。
その結果、Revitによるモデリングはもちろん、3ds Maxによる高画質のビジュアライゼーションにも十分対応できる構成として「Xeonプロセッサー 5600番台 6コア/3GHz程度×デュアル、メモリ12G~16GB、NVIDIA Quadro 4000」を川口氏は推奨している。
コストパフォーマンスを追求した“川口モデル”とも言える製品構成のモデルは「ThinkStation C20x:3ds Max快適構成、6コアCPUデュアル搭載」として、レノボの通販サイト「レノボ・ショッピング」でも期間限定で発売中だ。
Revit Architectureや3ds Maxなどを使うBIMユーザーに最適なコストパフォーマンスを発揮する川口氏推奨の構成 |
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