ArchiCAD BIM事例レポート「栗本建設工業株式会社」編
2013年9月23日

ArchiCAD BIM事例レポート 栗本建設工業株式会社

栗本建設工業株式会社

ArchiCADでパースを内製化し外注費を削減
次は図面の内製化からさらに「その先」へ

大阪市の栗本建設工業は、関西エリア中心に展開する総合建設会社。賃貸マンションを中心に幅広い建築を取り扱っているが、中でも特に注力しているのが自社設計マンション「ecollness(エコルネス)」である。これは地主に直接提案する自社ブランド商品だけに、ビジュアライズなプレゼンが重要となる。そこで同社は従来外注していたパース等の内製化を決め、ArchiCADによる3D制作チームを稼働させた。その背景と成果について、設計部長の西本雅昭氏以下、設計部の3氏に伺った。

西本雅昭 氏 岡本卓哉 氏 川崎康名 氏 宮崎亜希子 氏
栗本建設工業株式会社
営業企画室
設計部長
西本雅昭 氏
設計部
岡本卓哉 氏
設計部
川崎康名 氏
設計部
宮崎亜希子 氏

初めてのArchiCADでパース制作チームを

「質の高いパースが欲しいという要望は、営業マンたちから貰いました。エコルネスは会社としても注力している自社ブランド商品ですが、地主に直接提案していく商品だけに、目で見て分かるパースでのプレゼンが重要でした」(西本氏)。

同社では従来パースを外注していたが、件数が増えるにつれコストが上がり負担となっていた。そこで構想されたのが3次元CADによるパース内製化である。実は10数年前に導入したArchiCADが1本残っており、西本氏はこれをバージョンアップして活用しようと考えたのだ。

「昨年9月、女性2人をCADオペレータとして育成しArchiCADを任せました。といっても、実は2人ともArchiCADは初めてでパース制作も未経験でした」。まさにゼロからのスタートだったが、2人のうち川崎康名氏は設備CADや建築CADの操作経験があった。川崎氏は語る。

「ArchiCADは、部材を組み立てて実際に作るようで、私が使っていたCADとは全く違っていました。3次元で立ち上がるのを見て、凄いと感じましたね。本当に建築している感じでした」。一方、宮崎亜希子氏は事務職の出身。Photoshop等の画像ソフトは多少操作経験があったが、CADソフトには触れたこともなかったと言う。

「CADも建築も全くベースが無く、“通り芯って何?”という処からのスタートで、周囲に聞き回り教わりながら、何とかやってきた感じですね。ArchiCADも3〜4回研修を受けただけで後は手探り。まさに実務を通じて学びました。グラフィソフトのサポートにも電話をかけまくりました」。

2人のパース制作は、敷地などの設計条件や要望が記された設計依頼書に従い設計者が描いた図面を基に、開始される。その2次元CAD図面をArchiCADのワークシートに貼りつけ、ArchiCADでトレースして立ち上げるのである。幸い宮崎氏の隣席にはエコルネス担当の設計者がおり、2人はこの設計担当と盛んにやり取りしながら、パースを作っていったのだ。

「エコルネスは、高さも含め基本的なデザインは決まっています。しかも当初、パースで作るのは見せる側の2面に限定し、構図も決め込んで作っていきました。つまり、後側を入力しないことで時間短縮を図っていました」(西本氏)。

そうして営業担当者たちにダメ出しされながら4カ月が過ぎた頃、徐々に称賛とさらなる要望が届くようになっていた。

エコルネス 京都Fマンション計画
エコルネス 京都Fマンション計画
エコルネス (標準ワンルーム)
エコルネス (標準ワンルーム)

3次元設計で図面の完全内製化へ

「現地の写真を背景として合成するよう、営業から頼まれました。Photoshopでパースとアングルを合わせてはめ込んで仕上げたら好評で……営業部長から“いけるやん!”と言われたのは嬉しかったですね。実は以前の上司なんです」(宮崎氏)。その言葉どおり、パース制作チームはArchiCADに加え3DペイントのPiranesiやレンダラーのAtlantis、Photoshop等を駆使して、フォトリアルな表現を追求するようになっていた。無論パースの外注は、まったく行わなくなっていたのである。

「単純計算で年間50〜60万円以上の外注費を丸々抑えた計算です。無論やりとりの手間や行き違いもなくなり、作業効率は大きく向上。以前は週に1本作るのががやっとでしたが、今では2日に1本ペース。これは非常に大きいですよ」(西本氏)。さらに現在では、パースだけでなく図面類の制作への挑戦も始まった。実務レベルで現場指揮を取る岡本卓哉氏は語る。

「前回担当した物件では、パースだけでなく一般図までArchiCADで入力できる、としっかり実感できました。となれば次は当然、ArchiCADによる実施図制作なども視野に入ってきます」。岡本氏の言葉どおり、西本氏はすでに新しい設計部イノベーションの構想を打ち出している。それはArchiCADを核とした、3次元設計による作図の完全内製化への挑戦である。現状、同社は図面の多くを外注しており、細かな修正が入った場合など各図面の整合性を取るのが難しく、大きな問題となっていた。

「その意味でも、1カ所直せば全て連携して直るArchiCADは非常に魅力的でした。ところが作図外注先がJW_CADユーザのため、当部がArchiCADへ移行すれば、私たちは外注できなくなってしまうという事情もあったのです」(西本氏)。つまり3次元設計に移行するなら作図も内製化する必要があったのだ。外注を多用する同部にとって重い選択なのは間違いない。だが、西本氏はその道を選んだのである。 

続きは、グラフィソフトジャパンのウェブサイトで。

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