200年前に建てられたイタリアの劇場が、最新IT技術で甦る
2014年5月12日

200年前に建てられたイタリアの劇場が、最新IT技術で甦る

イタリア・ミラノ市はこのほど、18世紀に建てられて現在は閉鎖されている「リリコ劇場(Teatro Lirico)」の改修プロジェクトを発表しました。米オートデスク社はこのプロジェクトに参画、現状の建物を3Dスキャンして点群データを作成し、BIM技術を利用して再設計する作業に協力しました。
リリコ劇場は新古典主義の建築家ジュゼッペ・ピエルマリーニにより設計され、1779 年 8 月 21 日、カノビアーナ劇場(Teatro alla Canobbiana)としてオープン、こけら落しはイタリアの音楽家、アントニオ・サリエリの喜歌劇とバレエでした。1890 年代に所有者が変わり、名称をリリコ国際劇場(Teatro Lirico Internazionale)と改め、以後20 世紀までオペラ、バレエ、演劇を開催してきました。1926 年に所有権がミラノ市に移り、1944 年にはムッソリーニの最後の演説とラジオ放送の舞台となりました。建物は 1938 年の火災で大きく損傷しましたが第二次世界大戦後に修復され、活動を再開しました。その後、数十年間にわたって使用されてきましたが、市の財政難により劇場運営の継続が困難となり、1998 年に閉鎖されました。その後何度か再開の計画が浮上しましたが、2007年にようやく改修プロジェクトが立ち上がり、オリジナルの正面入り口と内部の馬蹄形デザインを残して近代化されることになりました。
ミラノ市は改修プロジェクトを始める前に、劇場の現況を正確に把握したいと考えました。時代が異なる劇場の構造は複雑ではありましたが、技術チームは現存する全てをデータ化する「リアリティ キャプチャ」という方法を採用、レーザー スキャナを使用して劇場の隅々まで4 日間かけてスキャンし、点群データを作成しました。スキャンは550か所で行われ、それぞれ100 億以上の点群で構成されるデータとなりました。
これらの点群データはまずAutodesk(R) Recap(TM) に取り込まれて一つの建物として結合されました。その後データを Autodesk Revit(R) に移行して詳細な3Dモデルが作成されました。この3Dモデルには正確な寸法と写真画質の外観情報も付加されました。
技術チームは、劇場の 3D モデルとAutodesk Building Design Suite(建築業向けアプリケーションのパッケージ)を利用して、設計プロジェクトの範囲、性能シミュレーション、ビジュアル化、作成を行いました。このデータは、最終的に公共事業契約を入札した請負業者に渡されます。
劇場の再開時には、1960 年代初頭から 1998 年の閉鎖までリリコ劇場に頻繁に出演したミラノ出身の歌手、作曲家、俳優、劇作家であるジョルジョ・ガーベルにちなみ、リリコ・ジョルジョ・ガーベル劇場(Teatro Lirico Giorgio Gaber)に名改を変更する予定です。
米オートデスク社 リアリティ キャプチャ担当 タティアナ・ザンバゾワのコメント
「Autodesk ReCapは、物理的なオブジェクトと周辺の 3Dデータをレーザー スキャンから作成します。これにより、図面化の手間が大幅に縮小します。リリコ劇場のスキャンはリアリティ キャプチャ テクノロジーの新たな利用方法であり、取得したデータは同劇場の改修プロジェクトに使用されます。このモデルは、将来の維持管理や改築のためにミラノ市の資産として残されます。建物の状態は高い精度で確認できましたので、改修作業の検討を効率的に行えました。ミラノ市にとっても、コスト検討や入札のための基礎データとして役立つと思います。」
<ご参考>
このビデオは、レーザー スキャンからBIMまでのワークフロー プロセスを紹介しています。(ミラノ市の技術チーム提供)
https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=2hSZbkB00q8

詳しくは、オートデスクのウェブサイトで。

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