画像提供:スタジオエッグマン株式会社
3Dプリンターという言葉をよく聞くようになってから数年が経過し、今はどんな3Dプリンタを導入するかよりも、どう使いこなしていくか、という段階に入っている。
そこで、注目を集めているソフトウエアがRhinoceros(ライノセラス:通称ライノ)。Rhinocerosの国内代理店である株式会社アプリクラ フトを訪ね、代表取締役 女井誠司氏とテクニカルサポート部 部長 Rhinocerosトレーニングディレクター 斉藤兼彦氏に最新のRhinocerosの活用実態と、NVIDIA Quadroグラフィックス搭載ThinkStation P300、P500でのベンチマーク結果をもとにワークステーションに求められる性能、選び方をお聞きした。
Rhinocerosの国内代理店である株式会社アプリクラフト 代表取締役 女井誠司氏(右)とテクニカルサポート部 部長 Rhinocerosトレーニングディレクター 斉藤兼彦氏(左)
3Dプリンタの普及で使われ方が大きく変化
Rhinocerosについては、前回の記事を 参考にしてほしいが、2013年にインタビューを行ったときに登場したバージョン5.0が現在も現役。PCをあまり選ばず、決して高いスペックではない PCでも軽快に動作するソフトウェアだが、レンダリングや3Dプリンターの点群データを多用するような場合には必要に応じてハイスペックで構成したワーク ステーションが必要ということだった。
ところが、ソフトウェア自体は変わっていないものの、現在のRhinocerosを検討しているユーザーは、3Dプリンタの活用を目的としたケースが多 く、使われ方が大きく変化している。女井氏によれば、アプリクラフトへ寄せられる問い合わせの内容も変化し、3Dプリンターの活用のための導入方法につい て多く問い合わせを受ける、以前とは大きく異なっているという。
そして、高くないスペックでも軽快に動くことが特徴のRhinocerosでも、主な用途が3Dプリンターの活用となると話は違ってくる。3Dプリンター の活用にRhinocerosを使う場合は高いスペックを要求することがよくあるからだ。
特に、3Dスキャンを行って生成された点群データをメッシュやポリゴンへ変換する場合は、作業に見合ったハイスペックの高性能ワークステーションが必要になってくるという。
iPhone 5/5s向けのホルダーを3Dプリンターで作ったところ。DMM.makeの「3Dプリント」のコーナーにはRhinocerosの動画講座がある
3Dプリンターで作ったアイテムとその使用例
3Dプリンターの普及に足りなかったデータ作成術
さて、今なぜ、多くの3D CADの中でもRhinocerosが注目を集めているかというと、3Dプリンターの活用に適した機能が多く、3Dプリンターを導入してはみたものの、実 際の活用はこれから、という人がRhinocerosの導入を検討しているケースが多いからだ。
3Dプリンターで物体を出力するためには、当然のことながら出力するためのデータが必要になってくる。データの入手方法はいくつかあるが、おもにデータを用意する方法は3パターンある。
- データをどこからかもらう(買う)
- 3Dスキャンで作成
- 自ら3D CADで作成する
1. の場合はそのまま出力することもあるが、2. は必要のない部分まで取り込んでしまったものを編集する作業が不可欠。3. は3D CADソフトがなければ、データを作成できない。
また、1. の完成したデータの出力を主に行っていたとしても、何らかの修正が必要になれば3D CADソフトは必要。つまり、いずれのケースでも3Dプリンターを使う以上、3Dプリンターに適した3D CADソフトはなくてはならないという。
数年前からの3Dプリンター導入の高まりで、ハードウェアとしての3Dプリンターは導入してしまったものの出力するモノがなく活用が進まない、3Dプリン ターの出力サービスを実施している会社に3Dデータとかけ離れたものが持ち込まれるなどの事例は少なくない。
また、新たな3Dプリンターを活用して何かをはじめようという動きはたいへん多く、そういった企業やアーティストも多数おり、ソフトウェアの習得はもちろんのこと、必要なコンピュータ選びまでも対応する人材が不足しているという。
Rhinocerosでスマートフォンホルダーを作成する
Rhinocerosの3D活用
では、Rhinocerosを3Dプリンター活用にどのような利用法があるのだろうか。ゼロからカタチを創りあげてい くという方法はもちろんある。Grasshopperというグラフィカル・アルゴリズム・エディターで複雑な曲面を組み合わせた形状を生成できることも Rhinocerosの特徴で、複雑な形状も3Dプリンターによってはじめて現実のカタチとすることができる。まさに3D CADと3Dプリンターの新しい使い方と言えるものだ。
また、3Dスキャナーで取り込んだ点群データをメッシュやポリゴンに変換していくこともRhinocerosでできる。取り込んだデータには、なんらかの 不要なものも含まれていることがもある。たとえば、3Dスキャンした際に、対象物に余計な凹凸が付いていれば、それを修正する必要がある。また、向きを修 正したり、台座部分を新たに付け足すこともあるかもしれない。
そして、出来上がったものを3Dプリンターに出力可能なデータ形式として生成することもRhinocerosによって可能になる。