実証実験レポート● 足羽川ダム 工事用道路整備工事
2016年2月21日

福井コンピュータでは、様々な現場におけるCIM導入の実証実験をサポートしています。ここでは、その中のひとつである「足羽川ダム」工事用道路整備工事での事例についてご紹介します。

国土交通省 近畿地方整備局 足羽川ダム 工事用道路整備工事

福井県今立郡の九頭竜川水系で建設が進む足羽川ダムは、完成すれば国内最大規模となる洪水調節専用のダムです。2014年4月、建設プロジェクトは3つの工事用道路の整備工事から始まりました。その1つを受注した株式会社道端組は同現場にCIMを導入し大きな成果を上げました。工事の発注者である国土交通省 近畿地方整備局の建設専門官 山本一浩氏と、現場代理人である道端組の森田氏ほか3氏に、現場でのCIM活用状況について伺いました。

携帯も繋がらない山奥で、GPSなしの情報化施工を実施

ダム工事を行なう上で、最初に必要となるのが工事用道路の整備工事です。足羽川ダムの建設プロジェクトも、まず3本の工事用道路の整備工事から始まりました。そして、そのうち1つを受注したのが、福井市に本社を置く株式会社道端組です。同社は創業100年余の歴史を持ち、土木工事や舗装工事、建築工事、プラント事業にも豊富な実績を持っています。しかし、そんな同社にとっても、この3号工事用道路は難度の高い現場でした。発注者である国土交通省 近畿地方整備局の山本一浩氏はこう語ります。

3本の工事用道路のうち、特に道端組さんが受注した3号工事用道路の現場は非常に急峻で、掘削や切土などの作業が大変な地形でした。

元々は川の対岸に渡る架橋を付けてから山を切り、道路を入れていく入口部分の工事で、実際にはこの架橋段階から様々な問題が生じていたと言います。幸いそ れらは照査の時から対策を進め解決できましたが、この対岸の地形は大きな問題でした。非常な急峻地であるのに加えて大きくカーブし、勾配がきつすぎて通常 の丁張り作業などできそうになかったのです。現場代理人の森田泰広氏は語ります。

切土部分の勾配が途中で1割から6分、3分と変わるような地形だったんです。補強土壁は垂直の壁を建てるので勾配がきつく、階段状に基礎を作らなければなりません。そのため狭い所で機械が作業することになり、危険すぎて近くに人がいられなくなってしまったんです。

その結果、やはり通常のやり方では難しいという結論が出ました。そこで、上の切土部分だけの予定 だった情報化施工の範囲を大きく広げ、下まで3Dデータを活かしたマシンガイダンスを使おうということになったのです。しかし、情報化施工は実績豊富な道 端組も、CIMは研究を開始したばかりで導入現場はまだ他になく、多くの社員にとってCIMという用語自体が聞きなれないものでした。監理技術者を務め る、道端組の渡邉博文氏もそんな1人でした。

はい、CIMという言葉もこの現場で聞いたのが初めてです。MGを使ったのは2現場目でしたが、前回は河川工事で盛土をして法を切る単純な工事だったので、それほど苦労しなかったんですよ。

ところが、今回は道端組として初めてのCIM導入現場。しかも、その現場自体がきわめて複雑なものだったこともあって、渡邉氏たちも大いに勉強することになったのです。

3Dデータさえ作ってしまえば、
MGによる作業はスムーズ&スピーディ

特に大変だったのは3Dデータ作成です。座標の拾い出しで、もちろん平面図はあるのですが、クロソイドがかかった中で座標を拾うのが手間で……。段々になる一方で斜めに横断が入ってくる所まであり、とにかくややこしい地形でした。(渡邉氏)

そこで渡邉氏が使ったのが、EX-TREND武蔵で した。X、Y、Zの座標を拾い、これを3Dのモデリングデータに加工。その上でlandXMLデータを作成していったのです。こうしたデータ作りは初めて だったため専門業者の協力も得ましたが、データさえ作ってしまえばMGによる掘削作業自体は全く問題ありません。事実、同現場もきわめて順調に進み無事に 完了しました。そこでGPSも活用できれば理想的でしたが、今回は現場が山奥だったのでGPSが使えず、トータルステーションの自動追尾で行ないました。 しかし、裏返せばそれこそが1つの大きな成果だった、と山本氏は指摘します。

つまり、自動追尾のTSさえあれば、携帯電話も繋がらないような山中でも、CIMを使った情報化施工が十分可能だと証明できたわけです。これはCIMの可能性を広げる事例と言えるのではないでしょうか。

無論、CIM導入の成果はこれだけではありません。たとえば現場において最も重要な課題である「効率化」を強く実感したのは、現場代理人を務めた森田氏です。

間違いなく施工の手間が省けましたし、工期短縮できた実感があります。特に丁張りで作業員さんを待 たせずに、最後までスムーズに進められたのは良かったですね。当初の工期は2月までの予定でしたが、年内に終えられました。まあ、この現場は雪が多い所な ので、本格的に降り出す前に終えたいと皆で頑張りましたから(笑)。

一方、渡邉氏は技術者としてCIMの威力を実感し、素直に驚かされた様子です。特に重機がデータ通り正確にコントロールされ掘削できたのは、当たり前のことながら「素晴らしかった」と語ります。

今回の現場ではオペレータもMGを使うのは初めてだったのですが、事前に3Dモデルを見て完成形をイメージさせたので、とても分かりやすかったそ うです。まさにCIMの効果です。おかげで掘削も予想以上に早く終わったし、危険な急斜面での丁張りも避けられ、最後まで無事故だったのはすごく良かった と思います。(渡邉氏)

CIM導入現場の要望に応える1つの回答――「TREND-CORE

このように大きな成果をもたらした今回の3号工事用道路の整備工事は、あらためて現場におけるCIMと情報化施工の意義を明らかにしたといえるでしょう。 建設専門官として幾つもの情報化施工現場を監督してきた山本氏も「CIMはこういう現場にこそ必要なのだ」と語ります。

単純断面がどんどん繋がっているような所はデータ造りも簡単で、極論すれば誰だってできるわけです。本当はデータも簡単に作れず工事も難しいような、複雑な形状の現場の方がCIMの必要性はずっと高いでしょう。(山本氏)

一方、道端組の山口氏は、CIMの持つもう1つの可能性として、コミュニケーションツールとしての活用に着目しました。

CIMの3Dモデルは、コミュニケーションツールとしても有効です。実際、今回のような難しい現場でも、3Dモデルを見せれば現場や工事内容に関して理解が早まるし間違いも減る。現場のコミュニケーションに最適だと感じますね。(山口氏)

さらに、現場からはこうしたCIMのコミニュケーションツールとしての活用を進めれば、新人技術者 の教育等にも応用できる、という声も上がっています。土木の現場では、多くの新人が「どんなものを作るのか」イメージできないまま飛び込んできますが、そ の現場が3Dモデル化されていればイメージしやすいし、理解も早い。そうすれば新人もより早く現場に馴染めるわけです。

このようにCIMとその3Dモデルは、土木・建設業のあらゆる面を変えていく可能性を秘めていま す。しかしその一方で、まだどこの現場も今すぐCIMを導入できる状況にはなっていません。特に問題なのは「3Dモデルを作るツール」で、多くの現場が、 より易しく簡単に3Dモデルを作れるツール開発を求めています。

「その問題に対する1つの回答となるのが、福井コンピュータのTREND-COREではないでしょうか」と語ってくれたのは山口氏でした。

TREND-COREは出たばかりの新製品ですが、われわれ現場の技術者にとって、他社の3Dモデリングツールよりはるかに取っ付きやすく、感覚的にも機能的にも日本の現場に馴染みやすい製品だと感じます。

そんな山口氏の言葉に、建設専門官である山本氏も頷きました。

私も見ましたが、簡単に3次元化できると感じさせてくれるツールですね。部品も豊富なので、3Dモデルをカスタマイズしやすく、創りやすい感じです。大いに期待したいですね。
とにかく現場の技術者にとって大切なのは、このTREND-COREな どの3次元ツールを自分の手で触れることです。そうやって自分で3次元モデルを作り、動かしてみれば、日本の現場にも3次元の時代が来るということがはっ きり分かるでしょう。その時になって“もっと早く始めていればよかった”ということにならないように、各社とも早め早めに取組んでほしいですね。

詳しくは、福井コンピュータのウェブサイトで。

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